Scribbles.?雑文集》 2000年5月22日

ボディー広告バスが市営一般乗合バスであることの目印はもっとハッキリさせた方がいいんじゃないかなぁ

内田明 <uchida@happy.email.ne.jp>

2000年4月19日夕刊「河北抄」全文

仙台の街をカラフルなバスが行く。市営バスなのに、車体全体に企業広告をまとったバス。「ボディー広告バス」という。昨年九月、広告料増収の切り札として仙台市交通局が導入した。現在、三十九台が走っている。将来は百台に増やすそうだ。

導入後間もなく、仙台の景観と色彩について考えるボランティアサークル、SIECS(シェース)が、広告バスに関する市民の意識調査を行った。結果を見ると、変化に富んだ多様な外観のバスを支持する声と、デザインや色に制限が必要とする声に分かれた。記述式の自由回答に市民の声を拾ってみる。

「すてきなバスが増えて楽しい」「もっと多彩なデザインがあってもいい」「カラフルで面白い」は支持派。「派手な色はやめてほしい」「広告面積を少なくして」「杜の都らしいデザインに」は批判派。

市営バスを唯一の足にする人もいる。自由回答にはこんな声もあった。「私の母は広告バスが市営と分からず、長い時間バスを待っていたそうです」。せっかくの増収作戦が、バス離れにつながらないように。

仙台では、車体の全面を民間企業の広告で塗り尽くしたボディー広告バスが、1999年9月1日に走り始めてから毎月倍増の勢いで増え続けている。2000年4月19日付河北新報夕刊の「河北抄」によると、それが一般乗合路線バスであると識別できない乗客を生んでいたようである。

この“市バス同定問題”については、全面広告化の開始時点で一応検討されたようで、ボディー広告バスの車体には、前面、側面、後面に、「仙台市営 一般乗合」のステッカーが貼られている。

実は自分は、ボディー広告バスの全車両にステッカーが貼られているということに気づいていなかった。ゴールデンウイーク明けになってから、白っぽい車両にもステッカーが貼られていることに気づき、ひょっとして4月19日の河北抄がきっかけで連休中に手配したのかな? と思ったほどである。

念の為にと自分が過去にたまたま撮影した写真を眺めてみたり、「仙台市完全非公認仙台市交通局のページ」にある車両図鑑を閲覧することを通じて、最初期から全車両にステッカーが貼られていたと認識できた。

さて、では、どうして今まで気づかなかったのだろうか。もちろん自分の不注意でもあるのだが、潜在顧客一般の不注意を誘うようなカラクリがあるのではないか。

次の2点は、実際に用いられている広告バスの正面写真と、ステッカー部分を目立たせるために加工した写真である。現在のステッカーは“読まないと判らない”内容であり、場合によってはステッカーの存在自体が“探さないと判らない”状態である――と感じる方は少なくないだろう。

“このバスは他でもない仙台市営の一般乗合バスですよ”という目印が、“探し出して読む”状態ではなく“特別に意識しなくとも目に入ってきて理解できる”状態であった方が嬉しいように思うのは、ワタクシだけの特殊な感じ方であろうか。

誤認問題が報じられるほどであるから、ワタクシだけの特殊な感じ方ではあるまい。


この、目印が目立たないという点が解決されれば自動的に解消する問題かもしれないけれども、“市バス同定問題”に関して、もう1つ解決すべき課題があると思われる。誤認される危険性が非常に高くなる特定スポンサーをどう扱うかという課題である。

例えば、服屋や食品関係などは、一般的に“市営バスに広告が載ったもの”と判断しやすいものであろう。しかし、J2のサッカーチームや、私立学校、旅館・ホテルとなるとどうか。“チームの移動バス”、“スクールバス”、“送迎バス”という類の“一般乗合ではないバス”と誤解される危険が非常に大きいスポンサーではないか。

5月21日に、ある私立学校の全面広告バスが、別の私立短大を行き先として表示しながら走っている様に出くわしたのだけれど、どう見ても“走る悪い冗談”であった。

特殊なスポンサーの全面広告によって“一般乗合”であることの同定が難しくなっており、しかも行き先表示によって更に不可思議なバスと化している――という実例が現に走り出している以上、今後“混乱例”が増えない保証はない。全面広告バスを100台に増やすより先に、“市バス”としてのキャラクターを立たせる方法を真剣に考え直すべきであろう。


2000年5月22日 内田明
email: uchida@happy.email.ne.jp