MONOmaniaLOGUE

注意:


モノクロ、充電? じゃ、要らない

 これは勿論、cnetの記事「モノクロ、割高、売れない」へのアテコスリです。該当記事の趣旨は「もはやカラーの時代」と言うことらしいのですが、これには意図的にやってるんじゃないかと思われる程の視点の欠落が有ります。

 大体、価格の他にトレードオフが一切なければ、情報量が多く美しく見易いカラーを差置いてモノクロを選ぶ動機はビンボーしかあり得ません。しかし、別にカネがないわけではないのに(証拠により高価なCE機も取混ぜてカラーデバイスをも複数持ってたりする)モノクロを好む人がいます。以下の利点を高く評価してのことです。

  1.  表示情報が軽いので、同じCPUパワーなら確実に速い
  2.  想定されうるあらゆる照度条件で視認性が良好
  3.  表示デバイスの消費電力が低いので一次電池仕様の機体設計が可能

 見た目のハデさよりこういった地味な条件を重視する、いわば質実剛健・謹厳実直なユーザーはビジネスシーンを中心に多く生息しています。特に、いざという時に唯の重りに成下がってしまうバッテリ切れを警戒するユーザーは「一次電池」にこだわります。電源を携行していない際に急に出張を命じられても、長時間のノリモノの中でも、交換電池が2セットもあれば残電圧とストレスとの戦い(このタイプのユーザーはNotePCでそれを思い知っています)などヨソに使いつづけられ、しかもそれはおよそ何処でも手に入る規格品だからです。

 ところが、先の記事で引き合いに出されている不人気の二機種、m500にVisorEdgeはいずれも二次電池専用機なんですね。つまり、電源に対する安心感を持合わせていない、なんの為にモノクロ表示を搭載しているのか判らないような半端な機体なんです。実際、私だったらたとえEdgeがPlatinumより安価でも、選ぶならPlatinumの方です(コンシューマ向けのvisorをこんな視点で捉えるのが正しいかはさておき)。そんな企画段階で掛違えた商品は売れないのが当然で、なにもモノクロがみすぼらしく割高に感じられているせいばかりではないと思うんですが?

(2001/9/9)

Psionとスカイライン

 後者はもちろん先だってのモデルチェンジで「攻めの走り」から「円熟指向」に路線をスイッチして物議を醸した日産プリンスの乗用車で、この二つが似ている、というお話です。一体どこが? 買いもしないくせにいざ消えかけたり変質したりするとしたり顔で嘆く奴が現れるところが。企業は慈善事業じゃありませんから、買ってくれず利益に結びつかない「顧客以外」の勝手な世界観(声ですらない)なんか構っちゃいられません。売れなかったんだから、収束し、路線変更します。当然です。

 しかし、この現象の類似は熱い視線を浴びつつ購入に結びつかないという商品性格の類似による結果です。つまり、両方とも突出した魅力はあれども総合的には普遍性に欠ける商品だったんですね。実際、200LXが生産停止した際に移行先候補に上がらなかった訳がないのに、海千山千のパワー軍団(現在基準では。LXがもっとも輝いていた頃、PCユーザーの平均水準は「用意されたドライバを組み込むぐらい出来て当然」でした)といってもよかったLXerですら多くはPSIONに二の足を踏んだのですから。

 具体的には、サイズと液晶とキーボードと一次電池駆動時間に魅了されつつも、不完全な日本語化・入力環境(WXやATOKと比べられてしまったUniFEPも大変ですが)、貧困な拡張性、不自由極まりない通信環境などで敬遠されてしまったわけです。メーラやブラウザを装備しておいて日本語通りませんの(V2になってメーラはようやく日本語化、ブラウザはまだプロキシ越し…てことはローカルファイルは読めない)モデムは別売外付巨大ですのってのはどういう了見なんだか。欧州の携帯電話はもれなく赤外モデム内蔵なんだか知りませんが、せめてPCカードモデム・アダプターくらい続売(ダウンサイジングした新製品出せば尚良し)して主要アナログモデムやp-inやH"に残らず対応させでもしないと、日本国内正規代理店として仕事してるとはいえませんね。ケータイの尻にとろいIrGearつけたってタカがしれてますし、今時ポケットモデム(乾電池駆動の外付けモデムのことです)なんてこれこの通り解説が必要な絶滅種ですもの。

 次の日本語版5mxとそのサポート体制はこの辺どの程度改善されるでしょうか。結構食指は動いているのですが、実機をみていない今現在の自己分析では、実用機として導入する「本気」よりむしろ「これを最後になくなるならここらあたりで一つ保護」的な「コレクター根性」が勝っているんですよね。内蔵全アプリの日本語化があるレベル以上で達成されているなど、良い意味で期待を裏切ってくれることを強く希望しています。

(2001/9/6)

SBのないVisor

 Visorのコミュニティの一部でSpringBoardの存続を危ぶむ声が出ています。曰く、PalmOSはARMアーキテクチャへのプラットホーム移行を宣言しているのに対し、SpringBoardは68系のアーキテクチャに深く依存した構造だからだそうで、CPU移行の暁にはVisorもSDを採用していくしかないだろうと。で、ちょっと想像してみました。SBのないVisor、それはおそらくNu-BUSのないMacintoshのようなものでしょう。…何のことか判らない方のほうが多い筈ですので申し添えますと「SBだけに依っていたのではなかったVisorらしさがじきに示され」「程なく何の問題もなくなる」ということです。それに陳腐化するのは本体だけじゃありません。たとえばフラッシュモジュールなど、数年の内に現在の1MB30pinSIMM程度の価値のモノになっているでしょう。

 ただ、あの大きさでしかもあちこちはみ出してもOKの融通が利く拡張ボード規格がなくなってしまうのは、「どんな機器でも始めは大きい」という観点からは惜しいですね。HandSpringにパイオニア魂が残っているなら(Treoを見る限り喪失を疑う理由はありませんが)、68エミュレーションと新設計ネイティブ回路の二本立から徐々にネイティブARM対応onlyへ、などといった方法で移行し、外形規格自体は残してほしい、とは私も思います。サイズ確保だけならCFでもいいんですけど、やはりSBの発想と使勝手にはそれを超えるものがあります(そのためにCFアダプタが単機能の「〜専用変換器」以外は容易に作れないという副作用も背負ってるので、それもこの際何とかならんかとも思いますが)。

 それにしても、SB捨てるなら捨てるでSDスロットを二基あるいはSDとCF、残すんでもそれとは別個にSDを載まないと当初VisorがPalmVに対して持っていたアドバンテージは維持できません。SDアダプタなSBを用意するだけでは、機能性カードが出てきたとたんにCFアダプタの二の舞です(二本差しでも両方ストレージじゃしょうがないし)。SDは今すぐでも追加搭載するべきだ、と私は思います。価格と色だけじゃコアユーザーは掴めませんからね。

(2001/9/3)

パイはまだあるか? シグマリオンII

 どうせCPUとOSを換装しただけで同じ筐体だろうとおもっていたら、それよりはだいぶ芸がありましたが…この機体は売れるのかなあ? これを待望してた人はいるんでしょうが、その希望はかなえられているのでしょうか?

  1. この仕様は、CPUと次世代携帯電話端子以外、まんま昨年秋のMobleGearIIのそれです。つまり、先代が初めからこの仕様でもよかった程、ほぼ1年遅れた設計思想といっても過言ではありません。
  2. 初代シグ最大の弱点であった拡張性不足も変則キーボードも解決されず、今後「シグマリオンシリーズの弱点」と呼ばれることになってしまいました。内蔵16MBなんかあっという間に埋まります(現実に自分のj720のCFはダメ系抜きでも60MB埋まってます)。次項でふれる通信性に関してはむしろ悪化した感さえあります。
  3. 戦略的価格を打ち出しているビジネスモデル上「タダノリ防止の自衛措置」としてわからなくもないですが、H"系カードを意図的に認識しないなどという小細工はやはりオトナのトップ企業のするべきことではないでしょう。ま、この二社とも、今に始まったことではないですが。
  4. 前モデルは誰が買って、どのくらいの満足度で迎えられていたのか、ちゃんと調査したのでしょうか? マニア層がテキスト入力して満足してたりLINUXつっこむなどのおバカ行為(←最大賛辞)やってた分だけで後継機種を企画するだけ売り上げてたなら、客質や用途はともかく商道徳的な問題はないのですが、H/PCというものをよく知らず新聞広告やCFなどの過大イメージ戦略や「PocketOffice搭載」などという詐欺的呼称(「PocketWorks」なら許す)を鵜呑みにして「騙された」実務層の顧客がいなかったはずもなく、また同じ手口をくりかえすのでしょうか。同一人物ははさすがに二回は引っかからないでしょうけど…。
  5. それでも、この機体がブレイクする可能性があるとすれば、やはり価格です。でも、その条件だけなら初代の時と同じです。確かに初代の時には程なくOSが型落ちになる、米国では発表済みのjornada720もおそらく投入される、と、より多くの買い控え要因があったのですが、今度はそれがない代わり、数少ないターゲット顧客の手元には大抵すでにjornadaか初号機があるわけです。jornada700系からの乗り換えはまず全く考えられません(数年後、機体の耐用年数を迎えるか、jornadaが生産中止になるかしないかぎり)。で、この機体はjoranada600系ユーザーはともかく、シグ買い換えユーザーにどのくらい訴えるでしょう。また、価格重視のユーザーはむしろ、さらに安くなるはずの初号機に群がってしまったりしないでしょうか。

 だいたいですね、デフレの元凶みたいなこの携帯電話系発想の価格破壊ビジネスモデルが嫌なんですよ。市場の健全な伸張を確実に阻害します。「機能の価格付け」の話の時といってることが違うかもしれませんが、体力にモノをいわせたズルは感心しません。こういう性癖の手合いが、競合がいなくなった暁にどのように振る舞い始めるか、身近な例を引くまでもなく分かり切ってるじゃありませんか。

(2001/9/1)

Visorの価格改変に想う、PDAの適正価格

 有り体にいって、製造原価ではなくpalmを機能で正しく評価するにしても、2001/08価格改定はインパクトがありましたね。DXはあれで切込エントリー機種として適正価格だとおもいますが、本来無印visor(solo)があれば任せて良かった筈の、役不足な位置付けだと思います。

 で、ついでにそのままその線で他の機体も値踏みしてみます。こんなもんかな。某所でのご意見に従い、基準も示してみました。

PDAオレ的適正価格(2001/8)
機体市場価格俺的値踏算出法差額=
割高感指数
Visor Deluxe98009800「VisorPlatinum」 -CPU -価格戦略(5000)0
Visor Platinum1480019800「VisorPrism」 -ハイカラー-5000
Visor Prism2480029800「Palm m505」 -OS4 -バルキー補正-5000
Visor Edge3780024800「VisorPlatinum」+バルキー補正 +新型補正(2500)13000
Palm m5054980034800「N-600C」 -ハイレゾ -ジョグ +スロット汎用性補正15000
Palm m5004480024800「Palm m505」 -フルカラー20000
HAND ERA 3304980034800「Palm m500」 +CFスロット +ハイレゾ +ジョグ -OS415000
CLIE PEG-N600C3980039800palmの基準。実は全体の基準0
CLIE PEG-N700C4980044800「N-600C」 +音声機能-ハイカラー5000
Zaurus MI-L14280042300Zaurus基準、「N600C」 +CFスロット +拡張性 +接続性 +ミニキーボード
  −ライト(2500) -独自OS(5000) -クレードル・シンクロ機能(10000)
500
ZAURUS MI-E1 4480044800「MI-L1」 +AV機能 -旧型補正0
iPAQ H36305980059800P/PC基準、「N600C」 +拡張性 +AV機能 +接続性 0
iPAQ H3660 8980069800「iPAQ H3630」 +メモリ20000
GENIO e5506980069800「iPAQ H3630」 +ハイカラー +SDスロット0
Cassiopeia E7504980049800「iPAQ H3630」 +ハイカラー
 -CPU(5000) -拡張性 -価格戦略(5000)
0
hp jornada548 4980044800「iPAQ H3630」 -拡張性 -CPU(10000)5000
hp jornada525 3980039800「jornada548」 -メモリ0
hp jornada7208480084800H/PC基準、「iPAQ H3630」 +ノーマルキーボード
 +HVGA +ハイカラー +PC Card +モデム 
0
hp jornada710 7480074800「jornada720」 -モデム -クレードル0
sigmarion II 4980064800「jornada710」 -PC Card -H"プロテクト(5000)-15000
sigmarion2980049800「sigmarion II 」-OS(10000) -CPU(10000) +接続性(5000)-20000

判りやすい(杜撰な)評価基準
要素俺的値踏
カラー+5000モノクロ比
ハイカラー+5000低ビットカラー比
ハイレゾ+5000色数問わず
OS4.0+2500
ジョグダイアル+2500
バルキー補正2500
接続性+5000=インターネット対応度
ミニキーボード+5000
拡張スロット+5000メモリスティックは半額
拡張性+5000デュアルスロット機、スロット増設可能機に設定、
AV(音声)機能+10000
増設メモリ+500016MBあたり(かなり甘い…)
HVGA+5000QVGA比
ノーマルキーボード+5000バルキー補正込
モデム+5000
クレードル+5000

 OSのバージョンとか表示デバイスのグレードとか拡張スロットの数、メモリ容量などを順番に並べて一律\5000づつ間隔あけてみただけなんですけど…Palm系でコストパフォーマンス悪さが際だつというあからさまな結果が(笑)。また、HPCは8万円まででしょう。だって、型落サブノートより高い(2000夏のlibrettoとか、2001年夏のGXのFIVAとか)なんて、説得力皆無だとおもいませんか?

 ところで、ハンドスプリングはダンピング提訴されるリスクをどう考えているのでしょうか? 言い訳の立ちようがないと思うんですけど。

(2001/8)

私がiPAQを買わないわけ(自分の説得に必死)

  1.  jornada720とVisorPlatinumが既にあって、運用に付け入る余地がすくない。
  2.  jornada720と同じCPUではアップグレード感がない。
  3.  VGAザウルスを置き換えるだけの美麗さ(4096色じゃねえ)、ダメさに欠ける…とかいってたらダメ方面は最近どんどん加速がついてきたものの、jornada720にもダメが波及してしまい、しかもこっちはハイカラーなのだった。
  4.  画面が狭い。これからは高精細VGA、せめてVHVGA(320*480)は欲しいところ。
  5.  冷静に考えて、でかい。CFスロットなんかジャケットに頼らず本体側になきゃウソだろう。
  6.  同時押しができないっていうじゃんか。

 てことはだよ、これらを解決した機体が出てきたら、買わない理由がなくなってしまう(←こらこら)。カシオペアE-750に東芝GENIO eにNECか…東芝のソレが後出し無敵仕様ではあるんだが、息が続くかなあ…CPUと画面の件は2001冬まではまず大丈夫だろう。

(2001/7)

H/PCの振るわない本当の理由

 「性能・位置付けが中途半端」とはつまり…

 世間の定説ってのはマスコミが造るもんで、この分野のマスコミっちゃあPC専門誌なわけですから、つまり定説はライターさんが造るわけですな。それは大抵こういう感じになってます。

「一寸したテキストの入力やメールチェックなどが主でPIMもほしい、というユーザーにはお勧めできる」

 それ自体はその通り。で、極一部の好事家や「それで用が済んでいる人」は、palmやzaurusにもNotePCにも遠く及ばないH/PCの出荷台数をこんな風に嘆くわけです(行間を誇張)。

「使いもしない機能に目が眩んで無駄に大きく電池のもたないNotePCに走る奴が多すぎる」

 でもね。そんな風に言う人って、どうもビジネスの一線に立った事がなさそうです。学生とか、IT化が立ち遅れた職場にお勤めか、バイト崩れがそのまま業界に居付いてしまったなりゆきライターとか、そんな感じの。

 なぜって、ビジネスの前線では*.doc・*.xls・*.ppt・*.pdfなんてのが添付ファイルで飛び交かい、出先でプロジェクタに出力されています。この時点で「清貧テキスト文化」なんか説いても誰も聞きやしません。実力が拮抗している競合企業との差別化ポイントは結局資料やプレゼンの見た目勝負になってしまうんですから。となると、それら常用アプリがフルスペックで使えないだけならまだしも、情報が欠落する独自ファイルに破壊的不可逆変換されてビュアとしてすら役に立たない、しかもVIDEO-OUTのない機体など、一線のビジネスマンやエンジニアにとって「玩具(侮蔑用法)」としか見なされないのも当然です。

 つまり、今H/PCに何が足りないって、なによりまともなofficeなんです。フルスペックは望むべくもありませんけど、せめて

  1. 同じファイルが取り扱え、
  2. ビュアとしては完全で、
  3. 作成・修正には制限があっても修正保存した際に実装されていない機能の既存情報も破壊しない、
そんなものが搭載されたら完全に流れが変わります…wintelはそれを恐れてて、判っていてもわざとやらないのかもしれませんが。  

 それでもタブレット型PDAよりもH/PCを選ぶ人とは…

 てわけで、仕事には役に立たないH/PCでも出来ることって、「テキストの読書き」「PIM管理」「WEBアクセス」に「メール送受」に…って、つまりタブレット型PDAと何もかわりませんねえ。利点といや、キーボードの入力効率はやはり他の手段とはレベルが違う、という点です。でも、どの道テキストファイルぐらいしか作れないとなると、そんなんで役に立つ人って…純粋にモノカキですね。つまりあらゆるレベルのライターと、BBS・ML・NEWSの論客にWEB作者とメール魔にチャット怪人、即ち趣味のネットワーカー(死語もいいところ)ですな。でも、…そんな人が一体どれだけ生息しているんでしょうか。

 「パソコン通信」の昔から、発言者のざっと10〜50倍のROM(Read Only Member)が居ると云われていました。花形が無手順掲示板からWWWやWEB-BBSに移ったからといってこの傾向が変化する理由など何もないので、所謂「ネットワーク人口」ってのと個人サイトの数比も、ま、そんなもんでしょう。つまり。もともと90〜98%の人が「書くことなく読むだけ」であり、そう言う人には「移動閲覧環境」だけで十分完璧な「モバイルコンピューティング」なんです。キーボードなんか邪魔なだけ。それ以外のほんの一握りの、「趣味で移動入力環境を必要としている人」にしか、今のH/PCは訴えかけないわけです。…それじゃ売れんわ。「見るだけならOK」の小型軽量のpalmやP/PCにまるで及ばないのも、要は単にこの「人口比」が反映している結果なんですよ。

 ですから(ここで話が戻ってきます)。もしこの先H/PCの出荷数を伸ばす策があるとすれば。まともに仕事に使えるようにして「趣味人」以外に「ビジネスマン」もつかまえるしかありませんやね。

(2001/6〜8)

Palmの行く末

 200LXに供給不安がなかった頃、私はPilotに全く食指が動きませんでした。それは200LXと同じく発想の古いデバイスで、つまり、プアなパワーとメモリと表示デバイスをいかに有効にエレガントにソフトウェアでカバーして使うか、というまるで往年のメインフレームとか8bitマイコンとか80486以前の同人オンラインウエアようなポリシーの産物なわけで、しかも、LXより後発のくせにもっと何もできない機体だったんです。利点はシンクロとサイズぐらいでしたでしょうか(当然、いまでもそうです)。

 そういう、はじめから行詰りを開き直っているような機体はもはや一般客には通用しないだろうということは火を見るより明らかなわけで、非効率的なダサいコードもCPUパワーで押通す、といういつか来た道をPDAだって辿っています。使いもしない無駄機能だって、まちがいなく付いてるほうが売れるんですから。

 というわけで、palmベンダー各社もいろんなことをはじめました。つまり

  1.  メモリを補うために各社思い思いにストレージや拡張スロットを加え
  2.  CPUパワー不足を解消するため(いや、客離れ対策か?)ARMへの移行を宣言し
  3.  SONYとHandEraはそれぞれ画面解像度に手をつけ、
  4.  マルチメディア機能を搭載したものまで現れた
と。

 もう2年も前から云われていることですが、palmが示している方向性とやらの殆どはPsPCやP/PCがトロくてセコいなりに実現していたものばかりだし、SONYとSHARPの目指している方向性も、誰が見ても同一です。多分このまま、CEもZAURUSも総てのプラットホームのPDAは同じようなものになってしまっていくのでしょう。

 とはいえ、そこまでいくよりは近い将来の方向性としても、今現在結構やきもきさせられている部分ってありますよね。一つにはストレージの互換性、も1つは画面解像度です。私はこんなふうに考えています。  

  1.  標準ストレージは、本家が採用したSDでほぼ決りでしょうね(SONYは当然意地を張るでしょうが)。Visorは程なくSDとSBのデュアルスロットになるでしょう。
  2.  解像度UPの手法としてSONYもHandEraも発想としてそれぞれ正しい。てことは、かつてNewtonにはあった320*480のLCDを用いれば良いとこ取りができます。どうせCLIEの320*320だって特注部品なんですから、作って出来ないことなんかありはしません。これを勝手にVHVGAと命名します。多分ZaurusやP/PCも含め、ハンディタブレット型の表示デバイスはこのサイズになっていくのではないでしょうか。シャープとエプソンが標準化化してしまえばあっという間だと思うのですが。

 予想というより、願望ですけどね。

(2001/5)

ツインスロット?

 いえね、Zaurusの新型やら多くのH/PCやらのように、拡張スロットを二つ持つ機体をこのように表現する方がいて「あれ?」と思った、それだけなんですけど。

 ツインって、双子でしょう? つまり、そう形容された場合は「二つ」は「二つ」でも「同じ物が二つ」っていう意味で、差異が許されてせいぜい「(左右)対称」までです(これは日本語で「双」の字を使うときも同じですが、こちらもかなり乱れています。)つまり、SDとCF、PC CardとCFなど、異型の物が二つ実装されててもそれは「ツイン」ではありえません。せいぜい「ダブル(二重・倍)」か「デュアル(両)」でしょう。

 でも、「デュアル」というと、「SDスロットではMMCもそのまま使えます」みたいな 「両用」の感が強く出てしまうんですよね。やっぱり妙な色気を出さないでおとなしく「2スロット」と言っておくのがよいのかもしれません。

公開書簡:「PDAとは、何を指すのか?」

info@pdajapan.comさん、こんにちは。

 さて、いまごろ表題のコラムを拝見しました。既に他に同様のご意見をよせられた 方がいらっしゃるとは思いますが、過去にも将来にもその要件をみたさないものが PDAと呼ばれる事はないであろう「PDAの定義」は、全ユーザーが共有している イメージとして既に確立しているとおもいます。単に庄司さんを含む多くの ユーザーはその「成文化」に難渋されているだけではないでしょうか。

 その定義とは

「PIMの閲覧に主眼乃至少なからぬ配慮を置いて設計された可搬電子機器」

です。さらにPIMの定義が必要なら、必須機能は「スケジューラとアドレス帳」です。 ToDo、メモ、辞書、通信端末機能、データ連携機能、データ入力機構、時計、電卓、 などは必須ではありません(後二者は大抵イヤでもついてきますが)。

 さて、これでコラムで庄司さんが例示されたガジェット類は全て過不足例外なく 包含できるとおもいます。PIMの走らないものがPDAと呼ばれる事は決してなく、PIMを 装備しつつPDAと呼ばれない機器ではハードやOSがPIMを重視した設計になっていません。

 庄司さんもこの実像にかなり迫りながら、「端末」という語から「通信機能」に 目を奪われて、あるいは時代を先取しすぎて現況との乖離を発生させてしまい、結語 にさしかかったあたりで混乱されてしまったと思われます。そういう意味では、 昨年のコラム「■PDAは、何処へ向かうのか」でおっしゃている「オーガナイザー」 という語が現時点で共有されている「PDA」のビジョンにかなり近いものと感じられます。

 そして、各種の技術が進んでハードの機能面ではストレージを全くもたない 完全な「コミュニュケータ」になってしまっても、瞬時にPIMデータにアクセスできる インタフェイスを備えた機器が「PDA」とよばれて、他のキャラクタ付けをされた 携帯端末やウェアブルデバイスとは区別され続けると思います。

以上、如何でしょうか。


上木 正暁さん、こんにちは。

ご意見、拝見させていただきました。 ごもっともだと、思います。

私は、PDAという言葉、及び定義には、大きな意味は無いと考え ています。
本来が、別の意味で定義された言葉を流用しているに過ぎず、 定義自体も、移り変わるものでだと思っています。
また、そうで無くては、こうした機器の将来も無いと思っています。 単に、PIMを中心とした機器としては、既に仕上がっているとも言 える現在のPDAですが、更に多くも可能性をもつデバイスへと進化 するでしょう。こうしたオールインワン型の多機能端末化は、必要 な進化であると考えています。何故なら、こうした端末開発、及び 普及には、インフラなど社会環境の整備をも促進することができる からです。そうした環境も含めた変革が進まなければ、その後に現 れるであろう細分化した単機能デバイス(ウエアラブルも含めた) も、真に活用出来ないように思います。現時点までのorganizer的P DAの活用にも、必要な環境と考えています。

私自身は、PDA自体の用法進化が止まったときに、 そうした機器の定義をすれば良いかとも思っています。

また、現状のPIMを中心とした機器は、存在し続けると思います。 それ以外の多くの機器も生まれることも願っていますけど。

---- 庄司 恒雄

(2001/3)

「携帯」という語

 これは類似の意味を持つ「携える」と「帯びる」をひっくるめて、その和を定義範囲とした熟語です。「機器」とは成立ちが似ていますが、「端末」とは一寸違います。二つの字の意味が殆ど重なっていないからです。「携える」は「手に持つ」、「帯びる」は「帯に下げる=身に付ける」事を意味します。

 「携える」レベルなら、ごく初期の「キャリアブル」機、東芝ダイナブック以前の「ラップトップ」で充分用件を充たします。そこまで大きくなくても、バッグに入れたり手に持ってたりしたら、それは「携えて」います。対して「帯びる」の必須条件は「手ぶら」です。つまりカタカナでいえば「携える」は「ハンドヘルド」、「帯びる」は「ウェアブル」ですね。最低でも装着できないとダメです。おそらく、400gぐらいのところに境界線があります。

いえ、だからなんだといわれるとそれだけなんですけど。

(2001/2)

Jornadaのあるライフスタイル(200LX比)

 かつてHP100LXを「電脳パンツ」と呼んだ人がいます。品位の問題はともかく、あの機体に特徴的な「携帯性・依存感・肌身はなせず感」がよく出ている優れた表現です。勿論HP200LXは「二代目」と見なされることすらなくそのまま自然に「パンツ」呼ばわりを引き継ぎました。その後PalmPilotが「二代目電脳パンツ」を襲名したとは伝え聞きますが、どれほどの合意が得られているかは存じません。私が思うに、palmは携帯性を著しく向上させている反面、表示・入力・汎用性を思い切りよく切り捨てた閲覧重視機なので、「パンツ」に匹敵する使途的一般性を持ちえているか少々疑問です。

 翻って、Jornada680以降ですが、これもまた、「電脳パンツ」の系譜に名を連ねることは出来ないでしょう。大きすぎ、重すぎですし、これもまた携帯入力性が悪いんです。

 サイズの事はモデム搭載や2スロット化、液晶の高密度化(カラー化はモノクロ比3倍の画素数を要求します)のために仕方がないのでしょう。でも個人的感傷としては、そのサイズ増によって現行のキーボードを搭載する余地が出来てしまったことが逆に残念でもあります。

 現行のキーボードは恐らく「キャラメルキーボード食わず嫌い層」へ斬りこむために開発採用されたのでしょうが、一見玩具的な外観の払拭には成功したものの、机上に置いた場合と空中で保持した場合の入力性が圧倒的に前者に偏る、という操作性の変化を招きました。620LXまでのキャラメルキーボードは、ヘビーユーザーが立ち姿勢で親指打ちする事も想定していたのであって、決して安価部品でごまかしていた訳ではなかったと思うのですが、多くのライトユーザーはそういう使途には気づきもしなかったのでしょうね。企業の選択としては売れるもの作らなきゃならんのは判りますけど、結果的に「いつでもどこでも性」が大きく失われたのは残念です。

 この質量と図体の変化は、携行スタイルにも大きな変化を迫ります。200LX時代、私はカメラケース改造ショルダーホルスタをつかってました。でももうこの方法はとても取れません。結果、jornada720は携える機械になってしまったようです。

 …余談ですが、私はLXを3台乗り継ぎましたが、首折れに逢った事がありません。これはこの携行スタイルによることが大きいのではないかと考えています。つまり首折れの主因は開閉ストレスではなく携行時の握力や面圧によるのではないかと考えられるんです。

(2001/1)


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