さて、同時上映の「On Your Mark」の方はどうでしょう?
私は、これも、極悪^^;な挑発として受け取りました。
「On Your Mark」の世界観は、宮崎駿の(それまでの)趣味ではあり得ません。だいたい、警官なんてものは、宮崎アニメの世界の中では、悪役^^;が相場です。ああいう、機械と人間が融合したような都市も、きわめて宮崎アニメらしくない舞台です。また、CGの使い方も、きわめて陳腐で、よくあるパターンでしかありません。
緻密な描写をされたカットも多いのですが、全体的に言えば、イマイチ完成度が高くないと感じます。
しかし、ここが重要なところです。自分の世界を完璧に映画の中で構築し、商業的にも大成功を収めている、あの巨匠宮崎駿が、自分の趣味や使い慣れた道具立てから離れ、あえて完成度の低い作品にチャレンジしたのです。おそらく、これを繰り返していけば、宮崎駿が新しい境地に達することも、不可能ではないでしょう。
巨匠宮崎駿ですら、これほど大胆なチャレンジをしている訳ですから、もっと大胆であるべき若者達は、いったい、どうやって、この作品に応えたらよいのでしょうか。
「On Your Mark」に続いて上映される「耳をすませば」が、たとえ挫折しようと物語を書くことのすばらしさを表現している以上、やるべきことは決まったようなものです。
私は、「On Your Mark」を長編劇場版映画とするなら、という仮定を置いて、そのためのシナリオを書き始めました。(このシナリオは、宮崎駿には書けないと確信したから、という理由もあります。CGの映像に見るセンスから想像するに、少なくとも、情報機器が豊富に氾濫している時代の日常生活のリアリティを描き込むことは、今の宮崎駿にはできないことだと思います)。
このシナリオが完成したら、ジブリに送ろうと思っています。
これが、「On Your Mark」と「耳をすませば」というストレートな挑発に対する、ストレートなリアクションなのです。
まあ、送ったからと言って、何かが起こるというわけではないでしょうが^^;。これだけの煽りを受けた以上、それぐらいやらねば、こちらの気分が収まらないのです。
Illustrated by じょばんに
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