「風使い」考

麦茶(YSG92227@pcvan.or.jp)


 「風使い」の英訳は?と聞かれて、すぐに答が出せるでしょうか。

 この夏ごろ、インターネット上でこのことについて熱い議論が繰り広げられていました。実は当サークルのことが英文で紹介されたのが発端で、世界各地のナウシカファンからいろいろな案が寄せられていました。
 代表的な意見は、まず"Windmaster"。しかしこれは風を従属させるような感じがすると反論もありました。つぎにアメリカ版コミックスでも使われた"Windrider"がありますが、これも何となく違うものをイメージしています。このほか"Winduser"なんてほとんど直訳もありました。

 そもそも「風使い」は誰が考えたか知りませんが、これまでに意外と多くの作品で使われています。そして、その概念は大きく分けて以下の3つに分類できます。

1) 呪術や魔術としての風使い

この場合の「風」とは比喩的に「気」の流れであったり、見えない力を表したりします。流行の風水などもこの範疇に入るでしょう。作品では鷹氏隆之のコミックスに、そのものずばり「風使い」がありますし、少年ジャンプで人気のあった「幽遊白書」にの登場人物にも風使いがいました。最近ではなるしまゆりの「少年魔法士」の主人公が風使いですが、「エアロマンサー」とルビが振ってあり、これはこれでいい訳だと思います。

2) 気象的な風を起こし操る風使い

ここでの「風」は、文字通り空気の動きとしての風です。人間の及ばないところから天気を司る存在のなかで、風を吹かせる役目を演じていることが多く、雨使いや雲使いとペアで登場することもあります。登場作品は少女マンガや童話が多く、我孫子三和の「風使いのしゃしゃ」、わかつきめぐみ「雨の宮風の宮」などがあります。また、1)との中間的な存在もみられます。

3) 気象的な風を利用する風使い

2)とは対照的に、吹いている風をうまく利用したり、これから吹く風を予測したり、あるいは風から情報を読み取る風使いです。前の2つとの大きな違いは、こちらから風には手を出さず、そこに吹く自然の風を在るがままに「使う」ということです。「風の谷のナウシカ」での風使いはここに分類されるでしょう。他には、ヨットやウィンドサーフィン、グライダーなどを題材にした作品でも登場しており、克・亜樹の「風使いのSAIL」などがあります。

 さて、先ほどの英訳の例を考えてみると、"Windmaster"は1)か2)のイメージがあります。対して、3)のナウシカを含む「風使い」は"Windrider"か"Winduser"ということになりますが、前者は「風に乗る」ニュアンスが強く、後者はちょっと安直な気がします。

 どなたか我が「風使い」に名訳を与えてくれないものでしょうか。


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