Prep. 9 ナルニアへ行く方法について

 
ユースティスとジルはどうやってナルニアへ向ったのか。実はアスランそのひとが、彼らを魔法で呼び寄せたのですが、それよりも前にユースティスはジルに対して「普通ではないもの」を感じたのか、ナルニアの体験のことを話してしまい、自分はそれによって変ったのだと教えました。
 ペヴェンシーの子供たちは4つの王座を背負うものであり、いつの時代においても王であり女王であることにはかわりません。しかしユースティスやジルはふつうの子供でしかない。冒険にはさんざんの苦労がつきまどいます。
 冒険の最後、ユースティスは親友の死という悲しみを経験することになるのですが、彼はそれも乗り越えて自分の世界へ戻ります。
 一方ジルは変ったのでしょうか?わたくし自身は、ジルが変ったというよりも環境が変ったために彼女によいようになっただけのことのような気もするのです。実は全編とおしてみても、わたくしはこの女の子だけが少し好きになれないでいます。ルーシィの従順さ、エドマンドやユースティスの変貌、それを考えるとどうしてもジルが普通すぎて、それがなんだか口惜しい感じがしているのかもしれません。自分を心配して、何度も助けてくれている仲間に対して「うるさいわね」と言ってしまったり、物事がうまく行かないと「あんたがわたしの話を聞かなかったから」と自分を省みないような場面を思うと、孤独な地底での淋しさを癒す為のごとく美しい王子をさらってしまった緑色の魔女の方に数倍も好感を持ってしまう今日このごろです。

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挿し絵については岩波書店ナルニア国ものがたりより選び、引用しました。
ナルニア国ものがたり 全7巻 C・S ルイス作 ポーリン・ベインズ絵 瀬田貞二訳岩波書店