Prep. 8 ユースティスについて
ユースティス・クラレンス・スクラブはペヴェンシー家の子供たちと従兄弟の関係であったので、彼の父親か母親がペヴェンシーの両親のどちらかと兄弟であったはずです。ハラルドかアルバータのどちらかがペヴェンシー家とつながっているのですが、その辺の事情は謎のままです。ただ、アルバータが゛ことわりきれない人からいただいた、捨てることのできない絵"つまり「朝びらき丸の絵」を持っていることから、この一家もナルニアと関係した何かがあるようです。結婚式のお祝いに、船の絵というのは何かの縁起があるのでしょうか?
さて、この両親は菜食主義者を気取っているようです。さらにタバコや酒を口にせず、下着も特別、家具もほとんど置かない、窓は開けっ放し・・・などとナチュラリストな感じもしないでもないのですが、本物の菜食主義やナチュラリズムはどんなものだか分からないので「親もかわりものだった」としか分かりません。が、想像してみると特別な下着、家具のない部屋、窓は開けて寝る・・・って日本人みたいな家ですね、これは。
ユースティスは動物の標本や、やたら難しい本を気取って読んでいるような子供でした。でしたと過去形にするのは、彼がこの冒険を終える頃にはすっかり変ってしまうからです。
では現実主義のユースティスとペヴェンシーの子供たちがなぜ今回ナルニアへたどり着いたのでしょうか?実はこのお話には他の物語のようなゲートキーパーも鍵もありません。(馬と少年を除く)強いて言えばルーシィの「これはナルニアの船にぴったり。この船がほんとうに走っているようなところが好き。波がうねってるようじゃないの」という言葉しかありません。よって今回の物語の入口は、朝びらき丸の絵と、ルーシィであるように思えます。
ペヴェンシーの子供たちのとっては3度目の冒険(4作目の登場)ですが、はじめてのナルニアにユースティスはなかなか現実を捨てられず、持ち前の性格もあって、ひとり蚊帳の外の雰囲気になります。その辺の可愛くなさは彼の日記にもにじみ出ています。が、この日記こそが物語に現実感や親近感を持たせる要素であるとわたくしは思っています。ひどく子供じみていて、わたくしはすきですが・・・。 ユースティスがアスランを信じ、アスランに従い、ナルニアの友になっていくのはとても読み応えのある部分でもありますね。
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挿し絵については岩波書店ナルニア国ものがたりより選び、引用しました。
ナルニア国ものがたり 全7巻 C・S ルイス作 ポーリン・ベインズ絵 瀬田貞二訳岩波書店