Prep. 13 冬について
1930年代のイギリスは世界大恐慌のさなかにあって、街は失業者であふれていました。それまで栄華を極めていた鉄鋼業や造船業、綿紡績業が急落し、かわって電機や化学などの新興産業が急速な成長をみせました。産業構造に大きな変化がうまれたために基幹産業の中心であったクライド川の造船、機械工場、南ウェールズの石炭業、金属工業は深刻な不況を経験することとなり、いずれの地帯にも大量の失業者を抱えるようになりました。かつて、大英帝国の経済を支えていた地域こそが、戦間期において過去の栄華の代償を支払うことになったわけです。
ジルが黄泉の国で魔女の魔法にかかり、忘れさせられそうになった事実の中には配給帳や行列、飛行機などもありました。
こちら側の世界でも、やはり冬の時代であったのです。
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挿し絵については岩波書店ナルニア国ものがたりより選び、引用しました。
ナルニア国ものがたり 全7巻 C・S ルイス作 ポーリン・ベインズ絵 瀬田貞二訳岩波書店