Prep. 11 いまナルニア人
テルマール人と小人族の混血児であるコルネリウス博士によると、ナルニアを征服したテルマール人(この世から来た海賊たち)は海と森を恐れて、そこにはおばけがいるのだといって近寄らなくなりました。森を恐れたのは木々の精たちとの戦いのためだというし、海を恐れたのはアスランはいつも海からやってくるからなのだと言います。
この「海からの救世主伝説」は実際に聖書にもあるとのことです。ここにおいてもアスラン=救世主(救済者)=キリストの暗示がなされており、これらを考えてみても、やはりテルマールにやってきた海賊は宗教的にも西洋のものであったと思われますね。
海を恐れたテルマールの王族は、海辺に森を作り、ナルニア人はもとより、自国の人々さえ海へ近寄れなくしました。よって、ケア・パラベル4つの王座のナルニア全盛期の頃は自由に行き来できるような航海術や船があったにも関わらず、この時代以降は衰退の一途をたどることになります。カスピアンがおじのミラースからナルニアを取り戻し、もとナルニア人との世界を再建するころはまたちっぽけな船からのスタートとなり、のちにユースティスが「こんな船では沈んでしまう!」と嘆くことになるのですが、もしもテルマールにやってきた海賊たちがその本質を失わずにいつまでも海の男でいたならば、世界地図はもっと大きくなっていたのかも知れません。
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挿し絵については岩波書店ナルニア国ものがたりより選び、引用しました。
ナルニア国ものがたり 全7巻 C・S ルイス作 ポーリン・ベインズ絵 瀬田貞二訳岩波書店