ふゆこ ふたとせ ふゆこの母   おおだんよしこ
雪の下だより NO.7(1961.1.1 発行) より

 冬子が生まれてからの我が家は、元旦よりも一週間後の八日、冬子の誕生日の方が、お正月気分がする。お正月がくると、冬子が生まれた時の事、満一才のお誕生日のことを思い出す。
 来る日も来る日も吹雪という雪深い丹後の国で、雪降りの最中に生まれ、生まれてからも雪、雪で、冬子という名も、この吹雪の見事さから、生まれた。始めてみた冬子は、バラ色の

頬、大きな鼻、小さい真紅の口元で、スヤスヤと丸一日半というものは、お茶もお乳も飲まず、吹雪を外に眠り続けていた。一月八日午前八時という、末広がりのメデタイ日に生まれたと、年寄りたちは祝って下さった。
 満一年。スプーンでこぼしながらも一人で御飯をたべる。家の中を歩き廻り、十数段もある階段を上がることができた。外は恐いらしく、クツをはくと、五六歩しか歩けない。何でも細かに調べることが好きで、ゴミ箱をひっくり返して、丸めてある紙を拡げて裏表を点検する。お釜の蓋をとって、中について

いる御飯粒を拾ってたべるかと思うと、鍋の蓋をとって、ガチャン、ガチャガチャと打ち合わせたり。お父さんが帰ってくると、弁当箱を開いてみて、ついているものを拾ってたべ、お箸で弁当箱をカチャカチャ鳴らして、御飯をかきこむ様子をしたり。そのいそがしいこと。一人遊びをよくするが、私の姿がみえないと、すぐ泣き出した。午後、西部デパートへ買い物に行った。

−1−


オスシの材料や晩のスキ焼の材料、最後に一番小さいデコレーションケーキを二百円で、それに青い小さいローソクを一本買った。冬子のお祝いというわけ。吉村さんの小父さん、フラッシュをたいて写真を沢山撮って頂く。小母ちゃんには、抱人形のメリーちゃんとブリキの電車を頂く。随分出費をかけて、申し訳ないと思う。だから、余計に嬉しかった。冬子も嬉しそう。ケーキの上のローソクに火をともすと、冬子は不思議そうにじーっとみつめていた。そして、ナイフを掴んで、ケーキをこわした。これが去年の誕生日。

 今度の誕生日は、どうしてやろうか。赤飯にして、お魚は、お汁は、と計画する。やっぱり、ケーキはいる。そして、何かプレゼントを、と予算をたてる。冬子は傍で木製の貨物列車に、さっき散歩の時拾ってきた椿の花を積み込んで、余念ない。そして、ミルクを要求、ストローでおいしそうに飲んでいる。


(雪の下だより No.7
1961年1月1日発行より)

−2−


【表紙へもどる】