クラシック・マスタング購入について

 クラシック・マスタングを買いたいので教えて,という方からのメールがたくさんきます。私としては極力良心的なご回答をしているつもりですが,良心的にあろうとすると,安い車をお探しの方には,その方の夢を壊すようなシビアな見解を述べざるを得ないこともあり,いくら言葉に気をつけても不快を与えてしまうかもしれません。そういう場合はその後ご返事をいただけなくなってしまうこともあり、とても悲しいです。
 私としては,壊れて苦労するとわかっているのに無責任なことは言いたくないのです。以下の私の考えをご理解いただいた上で,ご質問などありましたらご遠慮なくメールください。

2002/4/18 以下に車両保険の項を追加

 

価格選択へのご参考
 基本的な私のスタンスとしては,安くていい車はない,と考えています。専門業者はよい車を格安で売ってくれることなどありえないと思うのです。安い車はそれなりのもののはずで、個人取引でない限り、例外はたぶんないです。むしろ,だめな車を高く売っているケースに引っかからないことの方が重要でしょう。以下には価格帯別に私が持っている標準的イメージを書いておきました。常に正しいかどうかはしりませんが、大抵はそれほど外れていないのではないかと思います。価格はクーペの場合です。コンバーチブルだと50万円くらい足してください。

100万円前後: 走るとしても、やはりレストアのベース車と見るべきかと思います。そのままでは安心して乗れないのではないでしょうか。

200万円前後: エンジンは,基本的には絶好調のはずはないと思うべきでしょう。雑誌広告の写真ではきれいに見えても,実物を見ると錆びなどもあって内外装はそれなりに痛んでいるはずです。オイル漏れとか,パワステから変な音がするとか、時計は壊れているとか、雨漏りがするとか、走行に当面支障ない範囲とはいえ最初から問題があるところもいくつか存在する可能性は高いでしょう。それでも,購入後しばらくは実害あるトラブルなしという幸運なケースを聞かなくもないですが,逆に一年以内に100万円レベルの修理代がかかる可能性も覚悟する必要があると思います。いずれにしても、早々にレストアしないと長くは乗れないかもしれません。

300万円前後: 日常の足としてある程度安心して使えるのはこのクラスからでしょう。エンジンもある程度のオーバーホールが行われているはず。外装・室内よりも,機関重視で選ぶべきです。キャブとマフラー,オルタネーターなど重要な機器はもちろん新品であるべき。購入前に,オイル、水漏れはもちろんですが、エンジンのコンプレッションを計り,8気筒とも抜けがないのを確認したいです。これがだめだと修理は50万−100万円コースかも。

400万円以上: このクラスは新車のマスタングを超えるわけで,高くてもクラシックマスタングが欲しいという人が対象となりますので,一気に価格帯が上に広がります。めったに売れないレンジなので雑誌などにもあまり広告はありません。特注仕様に近いわけですから価格にあわせてレストアが進むと考えるべきでしょう。内外装,メッキ部品,エンジン、ミッション、足回りまで本当にフルレストアとなれば4−500万円以上になるのは絶対確実と思います。

 

いくらのものを購入するにしても、「故障しませんか?」と聞かれれば、「故障します」が回答です。故障が絶対に困る方は、日本車の新車に乗るのが一番確実なのは言うまでもありません。「修理で部品がなくて困りませんか?」というご質問ならば、「まず困らないと思います」だと思います。部品はあります。価格も個人輸入できれば高くないです。

 

[NEW] 車輌保険について
 クラシックマスタングのような特殊な旧型車は原則として通常の車輌保険に入れないと思ったほうがいいです。購入時,ディーラーからもそういわれました。骨董品などと同様の扱いで保険をかけることは可能と思いますが,恐ろしく高いものになる可能性があります。
 ただ,私の場合は,以前からお付き合いのある老舗の外資系保険会社との話し合いで,1999年登録の新車として一般車輌保険をつけることに成功しています。初期車輌価値は購入価格としてもらいました。2002年2月の3年目・第一回車検時にも無事更新しました。全損時担保額の償却は年20%程度でした(3年で約半額)。
 しかし,これは極めて例外的で,普通はこういう扱いはできないはずです。それを物語るエピソードもご紹介しましょう。
 マスタング納車前に,2社の国内系保険会社から車輌保険の勧誘がありました。大喜びで「ちょうどいいところです。入れるならすぐ入ります。入れてください!」と返事してあげても,車種を言うと困った声で「お調べしてお電話します」と言ったきり,二度と電話は来ませんでした。せっかく入ってあげようと思ったのにねー。もし無理をお願いしてみるならやっぱり外資系でしょう。

 

エンジンの選択へのご参考:
 個人的には不当に高い価格が付きがちなコブラジェットとかを選ばないことをお勧めしますが,それは個人の趣味の問題です。ただし,ビッグブロック(390以上)は,どんなに冷却系を強化しても,エアコンをつけて都会の真夏の渋滞を気軽に走行,というのはかなり難しいと思います。302以下なら比較的楽でしょう。私の351も,一応オーバーヒートで走れなくなった経験はありませんが,最悪パターン,例えば「気温35℃の首都高速トンネル内での大渋滞」などでは,エアコンは止め、停止するたびにニュートラルにしてエンジンの回転を上げるなどの気を使わないとちょっと危ないです。(ご参考:他車の排気ガスを吸い込むので,オーバーヒートには直射日光下よりトンネル渋滞の方がシビアです)。

 

年式の選択へのご参考:
 68−69年式からは安全基準の変更の関係で,いろいろセーフティー関連が充実してきます(ヘッドレスト,クラッシャブル・ステアリング,3点式シートベルト,ブレーキのタンデムマスターシリンダーなど)。オプションでパワーウインドウが存在するのも69年からです(ただし,64−68にはPWコンバージョンキットが市販されています)。最近知ったのですが,67年以前のAT車は,2速ホールドで坂を下れないようです(2速のポジションでは,2速で発進,3速までシフト)。この仕様が変更になるのは67−68年式からと思われます。67年からはバッテリーが縦置きとなり,その分,ラディエター幅が大きくすることも可能となって冷却系は有利でしょう。フロントディスクブレーキが正規オプションとなったのは69年からですが,現在では全年式コンバージョンが可能です(前輪ドラムは今の時代にはさすがにちょっとヤバイです)。レストア用リプロ部品が多い点では64−66までが有利です(この年式はほとんど何でもあります)。一方、特に69−70年式は,走行に重要なものはすべてありますが,内外装で入手できない部品が存在します。

 

コンバーチブルは雨が漏るのが普通か?
 業者に「米車は少々の雨漏りはやむを得ないんですよ」とか言われた方。それはうそです。少なくとも、NEWTOPと書いてあって、漏れるのは手抜きです。ウエザーストリップ(ゴムシール)を新品にしてドアの建付けも調整してあれば(これがなかなか大変)漏れないはず。私の車は、大雨で高速を走っても、山で暴風雨下に一晩駐車しても、わずかでも水が漏れた経験はありません。洗車で不注意に洗うと、窓の内側にわずかに水が筋を引く程度です。

 

どんな雑誌を見れば情報があるのか?
毎月1日(頃)発売のA-CARS(エーカーズ)という雑誌を買いましょう。マスタングの記事も時々ありますし,毎月,業者の広告は載っています。価格の相場はわかると思います。ただし,写真でみるとボロい車も綺麗に見えるものなので,その点はご注意。かならず機会を見つけて実物を見に行ってください。「結局は価格相応」という私の考えがきっとわかっていただけます。

 できれば試乗もしましょう。不調なクラシックマスタングについてよくある業者の言い訳は、この頃の米車はこんなものですよ・・・・しかし、始動性不良,加速の息つき,オーバーヒート,変速タイミング異常,などなど,本来はあるべきでないもの。ちゃんと整備すれば現代の車とほとんど変わらない状態になるはずです。ただし,始動についてはキャブ式特有の技術がありますので勉強してください(特に真冬)。現代の車に比べてどうしても大きく劣るのは,走行時の室内騒音と断熱性,そして燃費です。燃費は,良くても都内リッター3キロは覚悟してください。高速は調子と運転次第ですが,リッター5−7キロは行くでしょう。

 

以上、参考になれば幸いでした。

 

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