CDドライブ内部でPCMデータは
変更されていることがありうるという話




デジタルデータにも拘わらず、CDドライブだけの変更で(DACは同じでも)音が結構変わるのは、以前も報告しました。

当たり前だろ、とお思いでしょうか? 実は、私はそうは思っていませんでした。
現代のCDドライブでは、データ読み落としはないはずなので(パーフェクトリッピングの項をご覧ください)、デジタルデータは変わるはずはなく、したがって音が大きく変わるはずはない。ジッタなどのために、多少は変わると思いますが、周波数特性が変わるような大きな変化はないはず。

でも、実際は音はドライブでかなり変わる。なぜでしょうかね。

私は、CDドライブ内でデジタル的に音が変更されている可能性をずっと考えていましたが、ついに、そうとしか思えない現象を発見しました。


まず、これまでの音の違いを復習
以下、すべて、それぞれの機材をCDドライブとして使い、エソテリックD-02xをDACとして使った場合です。

 ORACLE CDドライブを使った時と、パーフェクトリッピングしたデータをuDSDを通して再生した音は、きわめて似ています。おそらく、一番真っ正直な音はこれです。

 アキュフェーズDP720のデジタル出力を使って聞く音も、ORACLEに似ていますから、あまりデジタル部でいじってはいないと思っていますが、両者は明らかに違います。DP720の方が、どう考えても、少し「いい音」です。若干、音がクリアというか、如何にも高級感あり。

 一番音が変わるのは、マランツSA-11S3です。はっきり言って全然違う。いわゆるスピード感のある音に変わります。まさに現代マランツのイメージ通り。これは、きっとDSPで演出されていると思っていました。

しかし
別に証拠はないので、あくまで私がそう思っている、ということにしておきたい。

しかし、今回の以下の発見は、明らかに、デジタル領域で音が変えてあるという事実です。


エンファシスありのCDでわかったこと
ワルターのベートーベン交響曲全集のCD初代版は、音が良いと某オーディオ誌でも大絶賛です。わたしも賛成します。これが1950年台の録音なんで信じられません。
しかし、この初版のCDはちょっと曲者。クラシックのCDではめったに見かけない「
プリエンファシス」がかかったCDなのです。たぶん、初版だけでしょう。

だから音がいいんじゃないの、と私は思ってますが。

プリエンファシスとは、CD化時に、高音を上げておいて、再生時にはプレーヤー側で下げるというもの。

え、そんなもんあったの?っていう若い方もいらっしゃるかもしれませんが、私のような20世紀からのオーディオマニアには常識です。CDレッドブックに載った規格なので、原則としてすべてのCDプレーヤーは対応していなければならないはずです。

一時、対応していないDACが出て、ネットで問題になっていたことがありました。エンファシス付きCDが稀にしかない(1990年代以後はないと思います)とは言え、黙って省略はいかん、と私も思いました。

CDのデータには
エンファシスの有無を示すビットがあって、それがONになっていると、プレーヤーは「デエンファシス」して高域を下げます。

昔のCDプレーヤーは、
エンファシス・インジケータが点灯していましたが、今では、そんなランプはまず見かけませんので、ユーザーはまったく気が付かないうちに、エンファシスの調整が行われているのです。


SRC2496
ところで、私の以前のシステムは、ドライブをベリンガーSRC2496に入れて、いろいろな入力を切り替えていました。アップサンプリングはせず、単なる切替機としてです。

SRC2496には、
エンファシスインジケータがあります。
しかも、プロ用機ですから、SRC2496からのデジタル出力のエンファシス・ビットを、OFFにもONにも、勝手に変えられるんです。

 だから、うっかりしていると、エンファシスがあるCDを無しとして聞いてしまって、やけに高域がキンキンしてるなー、ってことになったり、曲によっては、
おおおお、なんて鮮明なんだ、SRC2496ってスゲーっといった誤解も生みかねないのです。

DP720のデジタル出力を
SRC2496に繋いでみました
ある日、ふと思いついて、DP720のデジタル出力をSRC2496に入れ、ワルターのCDを再生して、エンファシスインジケータが点灯するか、試してみました。

下図の、上段の
が入力のエンファシスを示すインジケータ。うおお、消えとるじゃん。なんでだ。



下段の
は、出力のエンファシス・ビットの選択を示していて、その下のボタンを押すと、付けることも消すこともできます。これを消したまま、DEQ2496経由でD-02xに入れると、デエンファシス無しで再生されます。

古い録音なので、テープヒスが目立つので、エンファシス処理を間違った再生をしていて高域が変わるとすぐに気が付くはず。

しかし、DP720のデジタル出力の場合、エンファシスをOFFにしたまま聞いても、テープヒスがシーシーいいません。エンファシスOFFのままで、正しい音で再生されます。

この意味するところは、DP720 のデジタル出力は、すでにデジタル的にデエンファシスされていて、それゆえに、エンファシス・ビットもOFFでデジタル出力している、ということです。つまりはデータのF特をいじっているということになります。


試みに、このCDをWindows Media PlayerでWAVにリッピングして、SRC2496に入れてみました。

すると同様にエンファシスインジケータは消えます。これは有名な話で、WAVではエンファシスは無視されるんです。

知らずにリッピングして聞いている人、多いんじゃないかなー。ワルターの初期のCD、テープヒスが多いよなーって思っている人が。
ネット情報によれば、iTuneは、自動でデエンファシスするらしいです。マックの人は正しい音で聴いているかも。


WAVの場合、先ほどの写真下段のインジケータを消したまま再生しますと、DP720の時とは明らかに違う盛大なテープヒスが聞こえ、間違った再生をしていることがわかりました。WMPでのリッピングでは、エンファシス・ビットが無視されただけで、デエンファシスは、なされていないのです。
DP720: デエンファシスのPCMを出力
      エンファシス・ビット
OFF(正しい)
      ➡ 正しい音がでる

WAV:  デエンファシスしないままのPCM
      でもエンファシス・ビットは
OFF(間違い)
      ➡ キンキン音になる
ってことです。


DP720が、エンファシスがないCDについては、まったくいじらずに出しているでしょうか。普通に考えれば、そんな気はしませんね。
通常はアナログでやるデエンファシスをわざわざデジタルデータのままでやっているのですから、普通のCDでも多少は調整している、と思えてきます。

別にそれでいいんです。驚異的にいい音ですから。高級CDプレーヤはここが違うのね、ってことでいいと思います。

以下に今のシステム配線を記載します。いまはDP720 はDEQ2496に直接入っています。

DEQ2496のデジタル処理部だけ使っている場合、デジタルデータがデエンファシスされることはなく、またエンファシス・ビットは変更せずにそのまま送り出されます。

DEQ2496の前にSRC2496を入れている方へ
SRC2496でエンファシスインジケータがついても、出力のエンファシス・ビットは自動的にはONになりません。OFFのままです。手でEMPHボタンを押してONに変える必要があります。次にエンファシスがないCDに変えた時も、もう一度ボタンを押してOFFにしないと、高域が下がります。ちょっと使いにくいですが、まあ、プロ用ですから。
                         2017年4月22日



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