ほどよい暖かさのお湯も、ほんのりとした湿り気を帯びた湯気も、どちらも心地よかった。 視線を横に向ければ、アイーシャも気持ちよさそうに、お湯に浸かっている。 紀里子の視線に気がついたアイーシャは、微かに微笑んだように見えた。今までのアイーシャにはなかった表情。 「お風呂に入りたい…」 半年間の眠りから目覚めたアイーシャの希望を、紀里子は最初、止めた。いくら身体的機能には何ら問題もなく、ただ、意識だけが目覚めなかったからといって、いきなり入浴というのは、危険が大きすぎる。 「だめよ、アイーシャ。それは認められないわ」 「大丈夫。心配ない。紀里子、お願いだ…」 アイーシャの黒目がちな瞳に、じーっと直視されると、どうしても紀里子は断ることができなかった。それに、やはり女の子だ。躰をきれいにしておきたいと思う気持ちは、わからなくもない。 「いいわ。その代わり、私も一緒に入るわ。いいわね?」 「ああ」 いつもの素っ気ない返事。音羽やエリーゼなら、歓声を上げ、歓喜の表情を見せるのだろうけれど。 「さあ、躰を洗いましょうか。アイーシャ、背中を流してあげるわ」 アイーシャといっしょに湯船からあがると、足を滑らせないようにとアイーシャの躰を支えながら、紀里子は気を配った。入浴は意外と体力を消耗するものだ。アイーシャは少しふらつくと、紀里子の方に、その身を寄せた。 「大丈夫?」 「うん…」 見たところ、大事なさそうだ。紀里子は安心すると、洗い場のイスにアイーシャを座らせた。 髪を洗い、躰をくまなく、丹念にシャボンで磨いていく。アイーシャは黙って、紀里子にされるがままになっていた。 ただ、紀里子の指が、女の子の大事な部分に触れた時、『あっ…』と小さな声が聞こえたが、紀里子は聞こえないふりをして、極めて事務的に振る舞った。 全身のシャボンを洗い流すと、そこには見慣れているはずの、アイーシャの躰が現れた。 華奢で、どこから見ても、パイロットには向いていなさそうな痩身。 それなのに、これまでアイーシャに無理をさせ続けてきたという事実が、紀里子の胸を苦しくさせる。 二人の間を、しばらく沈黙が支配した後、 「紀里子」 ぽつりとアイーシャがつぶやく。 「何?」 「紀里子、ありがとう。あの時、紀里子の『逃げて!』という声が聞こえた。紀里子は私の身を案じてくれた。あの時は言えなかったけど…この気持ちは、『嬉しい』、と表現すればいいのか?」 |
そう、対ワーム用のウィルスプログラムが無効化され、ワーム側のソニック・ダイバーに、いいように嬲られるシューニア・カスタムを眼にしたあの時、紀里子は心の底から叫んでいた。『アイーシャ!逃げて!』 ワームを殲滅できなくてもいい、作戦が失敗してもいい。アイーシャが無事に戻ってきてさえくれれば…。 ぱたたっ…。 天井から落ちてきた水滴だろうか?肩に感じたわずかな感覚に、ふと後ろを見上げて理解した。それは水滴ではなくて、紀里子の涙だった。 「紀里子?」 「アイーシャ!」 紀里子はアイーシャを背中から、強く強く抱きしめた。 「よかった。アイーシャが戻ってきてくれて、本当によかった…アイーシャ…」 アイーシャは、こんなに感情を露わにする紀里子を初めてみた。そして、こんな時、どうすればいいのか、まったくわからなかった。紀里子の嗚咽を、ただ、黙って聞いていた。 ふと、紀里子の腕から力が抜けると、耳元で囁かれた。 「こっちを向いて…」 言われるままに躰の向きを反転させ、紀里子と向き合う。紀里子はしばらくアイーシャをじっと見つめていた。アイーシャの瞳に紀里子の思い詰めた表情が映る。瞳の中の紀里子がどんどん大きくなっていく…。 紀里子の両手が、すっと頬に添えられると、そのまま唇が静かに重ねられた。 その刹那、アイーシャの唇から、紀里子の感情が滝のように流れ込んできた。 それは、言語に置換すれば、『アイーシャ』『アイーシャ』『好き』『大好き』。イメージに置換すれば、抱きしめられ、口づけされ、そして…。 自然とアイーシャの鼓動は高まり、体温も上昇していく。 唇を離した後も、アイーシャの瞳をじっと凝視したまま、何かを話そうとしている紀里子へ、アイーシャが口を開いた。 「紀里子、私も紀里子が好きだ。だから、紀里子がしたいようにして構わない」 「アイーシャ…いいの?本当に?」 紀里子は、こくりと頷くアイーシャを、もう一度抱きしめた。 「いい?アイーシャ、私がすることを真似してみて」 「うん」 「じゃあ、最初はここから」 言うなり紀里子は、アイーシャの薄い胸の小さな頂を、すっと唇で含んだ。 「くんっ」 アイーシャの躰が素早く反応する。紀里子は乳首の先端を、舌先でトントンと軽くノックする。かと思えば、円を描く様に、乳輪に舌を這わせる。自分で、したことが全く無いアイーシャには、これだけでかなりの刺激だ。 「ふぁぁっ」 もう一方の胸も、同じように愛撫すると、 「さあ、今度はアイーシャの番よ」 と、優しく微笑む。 それまで意識して見たことはなかったが、紀里子は着痩せするタイプのようだった。豊かで張りがあり、ピンクの頂は、上を向いてツンっと尖っている。『夕子先生と同じくらいだろうか…?』そんなことを想いながら、アイーシャは紀里子の胸に吸い付いた。 「ん…いいわ、アイーシャ」 子犬がミルクを舐めるように、一所懸命舌を使う。アイーシャのつたない愛撫も、気持ちが込められているからこそ、紀里子には愛おしい。 「ああっ」 アイーシャが、空いている方の胸を揉みしだき始めた。両方の胸に与えられる快感に、そのまま身を任せてしまいたくなる。でも、それはまだ、後に取っておきたい。 「アイーシャ、上手だったわ。次は私の番」 紀里子は、物足りなさそうなアイーシャを押し倒すと、胸からお臍へ舌を這わせ始めた。少し、くすぐったい感覚。 紀里子の舌は、さらにどんどん下へ降りていく。モーション・スリットを着用するアイーシャの恥丘には、飾り毛など一切無い。紀里子の舌は、邪魔されることなく、慎ましく隠れているアイーシャの肉芽を見つけた。 「ひゃぁ」 それは、アイーシャにとって、初めての体験だった。それまでの乳房への愛撫とは全く異なる感覚。電気が走るような、そう、敢えて言えば、ナノスキンジェルが最適化されるときに感じるピリっとした感じ。 「ここは、指では痛いかもしれないから、舐めてあげるのが一番良いのよ」 そんな紀里子の説明も、ほとんど頭に入らない。何となく、「いけない」こと、のようにも思える。でも、気持ち良い感覚に、すぐにそんな想いは打ち消される。 隠れているアイーシャの肉芽を、舌先で剥くように舐めあげる。自然と、アイーシャは紀里子の頭を両手で押さえつけるような形になってしまう。 「だめだっ…紀里子、ダメ…」 何が駄目なのか、わからない、でも、そんな台詞が事前と口をつくアイーシャ。そうするうちにも、紀里子はアイーシャの秘孔にも舌を差し入れる。 「や…、嫌…、あ…、あぁ…」 気持ち良いのに、なぜだか、怖い、そんな複雑な感情が入り乱れる。そして、何かが爆発しそうな感覚。 「紀里子!…紀里子!」 愛しい人の名前を叫びながら、アイーシャは背筋をピンっと反り返らせ、全身を震わせた。 …どのくらい、ぼーっとしていたのか、ふと気がつけば、紀里子が微笑んでいた。 「紀里子…私…」 くすっと笑いながら紀里子は、 「ふふっ。アイーシャ、とっても可愛かったわよ」 と、楽しそうに語りかける。その満足そうな笑顔を見ていると、自分も不思議と嬉しくなる。でも…。 「紀里子、今度は私が紀里子にする番だ」 そう言って、躰を入れ替え、紀里子の上になる。 なんだか、訳もなく、悔しい気持ちになる。なぜだろう? でも、なぜだか少し悔しくて、このままではいられない。 「いいわ、アイーシャ。私にも、お願い…」 紀里子は言いつつ、少し脚を開いて、アイーシャを招く。紀里子の恥丘も、アイーシャ同様、余計なものは無かった。実際に空を飛ぶことは無くても、ソニックダイバーの開発者として、モーション・スリットを着用していたから?それとも…? そのせいで、アイーシャが攻略すべき、紀里子の肉芽は、すぐに分かった。アイーシャのそれとは異なり、隠れていることなく、むしろアイーシャに見つけて欲しいかのように、ピンク色の突起を震わせている。 そして、そのすぐ真下の秘孔からは、明らかにお風呂のお湯とは異なる、サラサラした液体が溢れていた。 はむっと、唇で肉芽を挟む。 「あんっ」 紀里子の素直な反応。さらに、秘部全体を、優しく舌で舐め廻す。 「ああ…、アイーシャ…」 アイーシャを挟み込む、紀里子の両の太腿の力が増した。 大きな円を描いていたアイーシャの舌が、今度は、縦の動きに変わる。肉芽を優しく叩き、その下の尿道口を軽くつつく。そして、その下の秘孔に、舌を差し入れる。 「いい…、んくっ…、いいわ…」 これが初めてのアイーシャと異なり、紀里子はそう簡単には達しない。アイーシャも、先ほどの自分の体験や、紀里子の反応から、なんとなく、それは分かった。 その身で、紀里子に教わったテクニックを早速再現する。 「アイーシャ…上手よ…」 アイーシャは、少しずつ、攻める処を変えていく。秘孔から今度は、震える左右の秘唇を、めくるように舐める。 『ああ、だめ、溶けちゃいそう…』 紀里子は、意識が遠くなりそうになっていた。 秘所を丹念に舐めていたアイーシャの舌が、ふとした弾みで、後ろの小さな窄まりに触れたとき、 「ひゃん!」 小さな悲鳴とともに、紀里子の躰が、びくっと跳ねた。 「紀里子?」 自分がいけないことをしてしまったのかと不安になったアイーシャは、紀里子の表情を伺う。 紀里子は、恥ずかしそうに両手で顔を覆いながら、小声で、 「アイーシャ…そこは…駄目だから…」 と訴えた。今までアイーシャは、こんなに愛らしい紀里子を見たことが無かった。いつもの凜とした隙のない紀里子からは想像もつかない少女のような姿。つい、言われるがままに、従ってしまいそうになる。 でも… 顔を覆っている両手の指の間から垣間見える、紀里子の潤んだ瞳には、拒絶の陰は無かった。そして、何より、アイーシャの舌を通して伝わってきた紀里子の感覚には、明確な快感が含まれていた。 「紀里子…すまない」 そう言うと、アイーシャは、紀里子の腰を少し持ち上げ、俗に言う「まんぐり返し」の形にすると、薄ピンク色の小さな窄まりに舌を這わせ始めた。 「あっ…やっ…」 同心円状に広がる襞に沿って、丁寧に舌を這わせるアイーシャ。それに合わせて、紀里子の躰は自然にヒクヒクと震えてしまう。 「駄目…駄目…」 それまでと違う、お尻から上がってくるモヤモヤっとした不思議な感覚に、子供がイヤイヤをするような仕草で身悶える紀里子。 『こんなこと…アイーシャに教えてないのに…』 押し寄せる快楽の波に飲み込まれそうになりながら、ぼんやりとそんなことを思う。しかし、アイーシャのテクニックは紀里子の想像を簡単に超えてしまう。 「ひぁぁ」 アイーシャの舌が、ぬぷっと窄まりに差し込まれてきた。電気が背筋を貫くような刺激に、自然に声が漏れてしまう。 「はぁ…い…いい…駄目…」 ゆっくりと出し入れされる舌の感覚に痺れてしまう。さらにアイーシャは舐め廻すように舌を回転させてきた。 「や…やぁ…くっ…いい…いいの…アイー…シャ…」 堪えられなくなった紀里子の声に、アイーシャは無意識に、すっかり大きくなっていた紀里子の肉芽を擦りあげた。 「駄目…わたし…もう…あ…あぁっ…」 紀里子の躰が硬直するのと同時に、アイーシャの舌も強く窄まりに締め付けられた。 「い…いく……」 「はぁ…はぁ…はぁ…」 荒く呼吸を繰り返す紀里子が、少し心配になったアイーシャは、 「紀里子?」 と顔を覗き込んだ。 そのアイーシャの首筋に、紀里子の両腕が絡みつき、あっという間に抱き寄せられる。 「アイーシャ…とっても良かった…ありがとう」 紀里子の微笑む姿に、アイーシャも笑顔で返した。 「それにしても、アイーシャがこんなにエッチな子だとは思わなかったわ」 言うなり、紀里子はアイーシャの唇をさっと奪った。 ――――翌日―――― トントンっと、ドアをノックする音。 「どうぞ」 アイーシャの応接に合わせてドアが開き、看護士が部屋に入ってきた。 「博士の具合はどう?」 言いながら、看護士の視線は、紀里子の方に向いている。 「今は眠っている」 アイーシャは、いつもの抑揚の無い口調で応えた。 「そう。特に問題は無さそうね。」 ふっと、軽いため息をつきながら、続けて、 「それにしても、珍しいわね。あの博士が風邪をひくなんてね。何かあったのかしら…?」 看護士の率直な疑問に、アイーシャは、少し恥ずかしそうに俯いてしまった。 さすがに世間知らずのアイーシャといえど、昨日の紀里子とのことは、他人に話してはいけないことだということはわかっていた。 そして、何より、昨日のことを想い出してしまったせいで、気恥ずかしくなってしまったのだ。 「?」 そんなアイーシャに対して、少し怪訝な表情をしつつも、 「あとは、博士のこと、よろしくね」 そう言うと、看護士は部屋から出て行ってしまった。 なぜかホッとしたアイーシャに、 「ふふ。風邪を引いた理由なんて、言えないわよね」 少し楽しそうに紀里子が囁いた。 「紀里子…起きていたのか?」 「ええ、少し前からね」 熱のせいで頬が赤らんでいる紀里子の表情は、少女のように幼く見えた。 わずかな沈黙の後、アイーシャは意を決したように、 「紀里子…その…えっと…」 「なに?アイーシャ」 普段、端的に物事を口にするアイーシャにしては珍しい、おずおずとした口調だ。 「その…紀里子の風邪が治ったら…あの…また、昨日みたいに…してほしい…」 最後の方は、消え入りそうな小さな声になってしまった。 紀里子の風邪が移ったわけでもないのに、アイーシャの頬は真っ赤になっている。 そんなアイーシャが、とても愛おしい。 「いいわ。でも、昨日の最後の方は、私の方がアイーシャにされちゃったんだけどね」 からかうような口調に、アイーシャはどぎまぎしてしまった。 「…紀里子の…莫迦…」 |