ゲームのイベント探訪記


「蜘蛛合戦」


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 6月第3日曜。鹿児島県姶良郡加治木町福祉センター。年に一度の蜘蛛合戦の日である。

開会は9時だったが、準備の様子なども見たいので8時に行って見た。会場は福祉センター。すでに一杯の人で、次々に蜘蛛を持った人間が現れ受付を行っていた。体長10cmぐらいある蜘蛛を持って、次から次へと入ってくる。広い体育館は人で一杯になり、至る所に蜘蛛がいる訳である。カゴに入れて持ち込む者もいれば、 蜘蛛のついた枝をそのまま持ち込む者もいる。若い女性もいるわけで、皆慣れているのか、怖がるような人間は誰もいないのであった。もっとも怖がるような者はこんなところには来ないだろうが。何しろ、道路の掲示板、バス停の標識、至る所に蜘蛛なのである。

 9時。開会式。会長挨拶、競技方法説明。 会場は2〜300人はいるだろうか。広い体育館、人と蜘蛛で一杯である。女の子も気味悪がらずに蜘蛛と戯れている。  最初に行われるのは、優良蜘蛛の品評会。蜘蛛の美人コンテストである。ステージ中ほどに5人の審査員が輪になって立ち、その中央に袋に入った木の棒に止まっていつ蜘蛛を見、いろいろと意見を言っては劣った蜘蛛を下げ、新たな蜘蛛を出して優良蜘蛛を選んでいくのである。基準は手足の長さ、島模様、色艶などということである。

 2組に分かれて蜘蛛合戦開始。競技場は体育館内に3箇所設けられ、一般は2箇所、子供は一カ所で行われる。トーナメント表に従って、対戦者の名前がアナウンスされ、蜘蛛をもって登場する。土俵は床に垂直に立てた縦棒と、それに垂直に結び付けた横棒からなる。まず1匹の蜘蛛を横棒に乗せ、棒などつついて一番端に追いやる。こちらの蜘蛛を と呼ぶ。続いて、二番目の蜘蛛をその横棒の中ほどに止まらせる。うまく止まったら端の方に追いやる。こうして2匹の蜘蛛はぶつかり、喧嘩を始めるのである。絡み付きながら格闘しているかと思えば、糸を枝に付けて垂れ下がったり、展開はなかなか複雑で面白い。

勝敗の決まり手は4種類。相手の尻に糸を掛ける、相手の尻に噛み付く、相手を下に落とす、相手が下がっている糸を木って下に落とす、の4種類である。相手が下がっている糸を切って落とすなどという、頭脳プレイを本当にするのか、と思われるかもしれないが、実際にやるのである。

 これを行事は真剣に見つめて判定を下す。 一方が逃げ出したり、落ちたりすれば分かりやすいが、一瞬尻にかみついたのを見逃さず「勝負あったッ!」と声をかけるのは、流石熟練の技である。 しかも相手は裸の蜘蛛。ゼッケンも付けていなければ、背番号も付けていない。しかも今初めて見た顔(?)である。素人目にはほとんど同じ蜘蛛で、これがくんずほぐれつの格闘するので始終位置が入れ替わるのである。それを「カマエの勝ち!」と威厳をもって宣告する。後で聞いて見たところ、背中の模様の特徴で覚えるのだそうである。

 合間を見て外に出る。建物の1階には、蜘蛛の生態調査報告展示というのが行われていた。学生の自由研究のように女郎蜘蛛の生態を調べている。蜘蛛の一生や酢の張り方等々。これはためになった。  会場の近くにはしゃれた作りの物産センター。お茶を飲み、軽食が取れるのが良い。

 これを繰り返し、夕方近くに優勝が決まる。聞けば上位は毎回同じような顔触れとか。蜘蛛合戦に気合を入れている人がいて、強い蜘蛛がとれるところを知っていて、強い蜘蛛を育てるコツを心得ているらしい。どこの世界にもマニアというものはいるのである。

 闘い終わった蜘蛛は各自持ち帰り、後日山に放すらしい。闘う蜘蛛は雌であり、寿命は約一年。山に返さなければ、来年強い蜘蛛は生まれて来ないのである。ただ道具として闘わせているのではなく、蜘蛛と一緒に生きている。そんな気がした加治木町の一日であった。

(2006.6.18)

   

 

 

 

 

 

 


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