ゲームのイベント探訪記


ゴニンカン(五人関係)


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 『ゴニンカン』というトランプゲームがある。正式な名称は五人関係。青森県で流行しており、地元ではかなりポピュラーなゲームであるらしい。

 このゲームがなぜか青森県五所川原市では古くから遊ばれている。いつの頃からかは定かでないが、伝統ゲームといって良いぐらい地元には浸透している。9年前から五所川原市商工会議所の主催でゴニンカン世界大会と称する大会が開催され、青森県中から約千人近い人間が集まる。伝統ゲームの大会としては最大級、いや、テーブルゲームの大会としても最大級であろう。任天堂がバックに付いているのも強みである。その第9回大会が1月19日(日)、五所川原市に行われたので見学してきた。

 大会は朝9時開始だが、交通の便が悪いため出発は前日の18日。行きは八戸まで開通したばかりの東北新幹線「はやて」。約3時間で終点の八戸に着く。接続がうまく出来ており、すぐに特急が出る。これが青森行きでなく、弘前までというのが嬉しい。五所川原へはここから五能線というローカル線に乗らなければならない。 五所川原着は夕方5時半。すでに夕闇となっているの中をホテルに向かうが、この時期街は一面雪である。 やっとの思いで1km程離れた温泉ホテルに着き体を休める。

 明けて19日、ホテルから会場の市民体育館までは約1.5kmだが、雪の中を歩いていかなければならないので少々早めに宿を出る。市民体育館はすでに一杯の人だ。ビニールシートの上に黄色い座布団が丸く置かれ、席が作られている。この座布団、よく見るとゴニンカン大会という文字と企業名・商店名が書かれている。さすがに千人参加ともなると大規模だ。年齢層はトランプの大会と言うには高め。年輩者が多いのは良い傾向だと思う。体育館の周囲の壁からは、各チームの決意を書いた紙が下がっている。「飛べ! 居酒屋翼」「助けて! 五所川原互助会」「味で勝負○○そば店」など、ウィットの効いたものがあって読んでいて楽しい。が、良く見ると筆跡が同じだ。提出されたものを係の人が書いたのだろうか。まさか全部係が考えたのではあるまい。体育館の隅には『集計管理』という紙が張られた区画が作られており、机の上にパソコンが置かれている。ここで点数の計算を行うようだ。後方部には即席の売店ができており名産品やトランプ、Tシャツ、パソコンゲームなどのゴニンカングッズを売っている。

 開会式が始まる。来賓が凄い。任天堂会長、市長、県知事、議員。もっとも一部は代理だったが。次はルール説明。といっても、皆ルールを知っているので、諸注意といったところである。「怒って途中で帰らないように」というのが笑わせる。続いて選手宣誓。ロシア等から来た若い女性5人によるたった一言。でも何て言ったか不明だ。留学生なのだろうか。まさか夜の蝶ではあるまいな。

 ゴングが鳴って1回戦開始。皆慣れているようで、ゲームは手際良く進む。ゲーム中は終始無言。これはルールとして徹底しているのだろう。終わるとさっさと次のゲームに入るのだが、中には札を配られるまで感想戦をやっているテーブルもある。が、津軽弁がもの凄く何を言っているかほとんどわからない。ときおり何やら怒っているのはパートナーを責めているのだろう。パートナーゲームの常である。  1回戦は1時間で終了。10分程度の休憩がある。特別席では議員さんたち来賓とロシア娘との指導ゴニンカン。当然だが緊張感はなく和やかである。2回戦が終わったところで昼食。周囲の観覧席がチームごとの食事場所になっており、入り口近くにはそばやおにぎりを売る臨時店舗も出ていた。

 4回戦が終わったところでゲーム終了。点数計算が大変なため、ここから大抽選会が始まる。いわゆる福引である。入場時に全員が数字が書かれたカードを渡されているのである。壇上の係員が箱から次々と数字が書かれた札を引いては読み上げ、会が協賛団体から集めた賞品を渡していく。これが延々1時間以上にわたって続く。良くも集めたり、と言ったところで、地元企業や商店の協力意識の高さが伺える。  続いて段位認定式。だいたい前回上位に入った人間のようだ。上位に入れば高いポイントが付くのだからこれは当然である。

 いよいよ結果発表。任天堂の協賛とあって副賞はゲームキューブ、ゲームボーイがどっさりだ。うらやましい限りだがおじさんたちにはちょっと不似合い。個人男子、個人女子、団体と賞状が渡されていく。その傍ら、賞に関係の無い人たちがぞろぞろと帰っていく。それをとどめるためか、細かく飛び賞が設けられていて、長々と続くのだが、にも関わらずぞろぞろと帰っていく。これからご苦労さん会で一杯、となるのだろうか。どこのゲームの大会もこのようで、オリンピックの閉会式のように、最後まで全員で、というのは難しそうだ。午後4時近く。閑散とした中、閉幕が告げられる。来年は第10回。十周年とあって、もっと豪華になるに違いない。外に出るとすでに夕暮れである。前日同様、雪をかき分けながら宿に戻る。

 翌朝。起きてみて驚いた。脱いだ浴衣の柄がトランプなのだ。ゴニンカンが名物なので、デザインとして取り入れたのだろうか。どうして昨晩気づかなかったのか不思議だ。売って欲しいと女将に頼み込むと、「新しいものは無いので、クリーニングから帰ってきたので良ければ」と、糊の利いた綺麗なものを頂いた。一番の土産物である。もったいないので、まだ、袖を通せないでいる。

(2003. 1.19)


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