高橋会長ヨーロッパゲーム探訪記


第3部:ゲーム会に参加の巻

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 外国からゲーマーが来たらボードウォークに来てもらおう。だから向こうへ行った らゲームの会に出たいな。そう考えた私はその機会を探した。手がかりはゲームの本 に載っていた短信。ホテルの部屋で片っ端から電話をかけまくる。結果はいろいろだ。
*その1:誰も出ない。
*その2:「ああ、その人はもうここにはいませんよ。」
*その3:「○×△◇*@(ドイツ語でなんとかかんとか)。」
     「あの、英語できる方います?」
     「いや。」ガチャン
*その4:「ああ、今はやってないんですよ。人が集まらなくってね。」
*その5:「年末年始はやらないんだ。次はいつだかわからないよ。」
*その6:「もしもし(若い女性の声)。」
     「もしもし。ミスター・ドルレ・ブルクドルフさんいらっしゃいます?」
     「あたしがミス・ドルレ・ブルクドルフですけど。」
     しまった。ドルレは女の名前だった。
     「すみません。ゲームの会やってらっしゃると聞いたんですが。」
     「ええっ、・・・・う〜ん。友達の***がやってるからそっちに電話してください。」
     30分ほどしてそちらに電話。
     「ああ、話は聞いてるよ。でも来てどうするんだい。ドイツ語できない
     んだろう?それに次いつやるか決まっていないんだ。」
     困惑している様子がありありなので退散。
*その7:「ああ、うちの店でやっているんだ。マジックがメインだね。」
     ううん、マジックか・・・。まあほとんどマジックかRPGなんだろうけど。

 それでもなんとかなるのもので喜んで参加を認めてくれたのがオーストリアのリ ンツとトラウン。これは続けて行なわれる。乗り気でなさそうだったが時間と場所 を教えてくれたのがドイツのミュンヘンだった。

○リンツの章

 電話をしたときトーマス・ヒュットナーは喜んでいた様子だった。ずっと反応が 良くなかっので私はちょっと戸惑い、また近づいたら電話をするといって切ってし まった。でも電話を切った後はしばし感慨にふけることができた。とても喜んでく れる人がいた。電話してよかった・・・
 1月5日。私はミュンヘンから電話を入れてみた。
「はい、トーマス・ヒュットナーです。」
「タカハシです。この前電話した。」
「やあ、覚えてるよ。」
よかった。本当に喜んでくれている様子だ。会場が駅前のホテル「ツア・ロコモテ ィフ」であることを聞き出した私は電話を切ろうとしたが、トーマスが切らせてく れなかった。
「ところで18××のシリーズを知ってるかい。」
「鉄道のゲームでしょう。」
「そう、それで今1872という日本を舞台にしたのを作ろうと思っているんだ。 会ったときに見てくれるかなぁ。」

 リンツはザルツブルクとウイーンの間にある都市である。1月7日、昼過ぎに着 いた私は、まずホテルを取りに行った。観光案内所にあった地図を見る。会場のホ テル「ツア・ロコモティフ」は駅から近い。ここにしてしまおう。部屋を取り、街 を歩いて開始時刻の午後6時にホテルに戻る。会場と思われる1階のレストランに 入ってみるがゲームをやっていそうな気配も無い。さてどうしたものかと考えてい ると、玄関から髭面の大男が入ってきた。スタスタと奥の階段から地下に消えてい ったが、その手に持っていたいくつかの箱の中にマジックが混じっていたのを私は 見逃さなかった。地下だ!ドキドキしながら階段を降りる。一人の男と目が合う。
「あの。ゲームの会場って言うのはここでしょうか。」
「そうだよ。おい、トーマス。」
出てきたのはTシャツを来た背の高い若い男だった。
「トーマス・ヒュットナーです。」
「ヒロノリ・タカハシです。始めまして。」
がっちり握手。早速トーマスは制作中の日本を舞台にした鉄道ゲームを見せて くれた。
「これを作っているんだけど資料がなくてね。」
トーマスの日本の鉄道の歴史に関する知識は私より詳しい。後から出してくれたが 彼は英語で書かれた日本の鉄道情報誌を持っていて、それに例えば18xx年の日 本の鉄道路線図が載っているのだった。トーマスの話は止まらないが、それでは他 のメンバーに悪い。日本に帰ったら資料を送ることにしてゲームに入ることにした。
「じゃあこれをやってくれるかな。」
トーマスが取り出したのは「トレインスポーツ」という鉄道敷設ゲームのスイス版。 市販されているのはオーストリア版で、そのスイス版を自作したのでテストプレイ をしてみたいとのことだった。これは一人が独走し、私は2位。
 続いて「エントデッカー」。これも私は初めて。それを英語で説明を聞いてプレ イするのは辛い。トンチンカンなプレイをしないよう気をつけるのが精一杯だ。あ とは自分のゲームセンスに期待。だが2,3巡で展開を把握、一時はトップの目も あったがあと一歩で逃した。
 零時近くなりメンバーは5人に減った。もう長いゲームは出来ない。誰かが持ち 出したのは「ブラフ」。これなら問題ない。1回目は3位だったが2回目は完勝。

○トラウンの章

 電話をしたとき、フランキー・バイアーはトーマス・ヒュットナー以上に明るか った。
「もし良かったらそちらの会に出たいんですが・・・」
「WHY NOT?」
この一言が私を勇気づけてくれた。
 トラウンはリンツから鉄道で10分ほどの小さな町。当然トマス達のグループも参 加していた。

 話は前日のトマスの会に溯る。
「明日はトラウンに行くんだろう?」
「うん。フランキーには前に電話してあるんだ。ところで、ここのホテルにもう1 泊したほうがいいかな。それとも明日はトラウンに泊まった方がいいかな。」
「トラウンのゲームの会の場所、ホテル・トラウナーホーフはフランキーの家なん だ。きっと安く泊めてくれるよ。明日は僕が車で送っていくよ。日中僕の会社に電 話してくれないかな。そこで打ち合わせよう。」
翌日電話するとトマスがフランキーに電話をしてくれていて話はまとまっていた。 夜の6時45分にリンツ駅でトマスの車を待ち、一路トラウンへ向かった。
 ホテルに入るとまずチェックイン。荷物を部屋に置いて奥のパブへ。すでに10 人ほどがゲームをしていた。昨日のメンバーも何人かいる。トマスと私は余ってし まったのでテーブルに積まれたゲームを見ながらあれこれ批評。と、別なテーブル の上に会報らしきものと投票用紙があるのを発見。聞いてみるとその通りで会報は フランキーが毎月作り、投票用紙は毎月プレイしたものに点数をつけて集計を取っ ているらしい。また、プレイされた成績を集計し男性はキングから、女性はクイー ンからランクがつけられるとのことである。
 1テーブルのゲームが終わった。トマスがこれをやろうと持ち出したのは「ロボ ラリー」。聞いたことはあるがやるのは初めてだ。かなり頭の痛いゲーム。ついて いくのがやっとだったが、別なプレイヤーが戦意喪失して中断。
 次はテーブルを変えて「エクスペディション」。これも初めて。それほど難しい ゲームではないが、序盤で作戦ミスを犯し大敗。
トマスが倉庫に連れていってくれた。
「これは知っているかい。」
「うん。日本でも流行ってるよ。」
「じゃ、これは。」
「大好きだね。」
 トマスは次にやるゲームを選んでいるが、どうも私のやったことのないものをや ろうとしているようだ。こっちは知っているものの方がありがたいのだが、ゲーマ ーはみんな新しいものをやりたがっている、と思っているのだろうか。それともせ っかく来たのだから知らないゲームをやらせたいと思っているのだろうか。
 次も新しいゲームだった。それが終わるとすでに零時過ぎ。みんな次々に帰って いく。残ったのはトーマスとフランキーと私。ゲームの会の話や年齢の話をした。
「明日はなにか予定があるかい。」
「いや、何もないよ。」
「ちょうど良かった。明日ウイーンで一番大きいゲーム会の集まりがあるんだ。」
「そりゃいいや。」
「明日フランキーが地図を書いてくれるよ。じゃ、おやすみ。」
もっと話をしたいがみんなは明日仕事だ。握手をして別れる。

 翌朝。朝食を済ませ、ちょっと散歩をした後、フランキーにウイーンのゲームの 会の場所を聞く。
「ううん、君の地図じゃわからないな、ちょっと待って。僕の地図で探すから。… あ、ここだ。」私の地図に印をつける。
「こっちのメンバーは行かないの?」
「うん。2時間以上かかるからね。」
確かにそうだ。特急で2時間だから東京と名古屋ぐらい離れているわけだ。そう簡 単に行ける距離ではない。さらにフランキーは名刺の裏にウイーンの会の会長への 紹介状を書いてくれた。
「日本に行くときは連絡するからね。」
「ありがとう。待ってるよ。」

○ウイーンの章

 ウイーンのゲームの会の会場もパブだった。6時にその店に入った私は夕食を取 り、開始時間の7時に地下の会場に入った。すでに20人くらいがゲームをしてい た。目があった初老の男性に話をする。
「あの、こちらの会長さんはいらっしゃいますか。」
「ああ、そこの女性だよ。
ここの会長は年輩の女性だった。フランキーの名刺を見せる。
「あらそう、楽しんでいってね。」
結構素っ気無いが、大きいところはこういうものかもしれない。
 会報を見せてもらう。20ページの豪華版だ。この会は3週間に一週、その週の火 曜と木曜に例会を行っていると言うことだ。ちょっと変なシステム。会報の内容は レビューとベスト100と郵便ゲームの報告。郵便ゲームはかなり盛んらしい。実 にいろいろなものをやっている。
 4人目を待っていてゲームをしていないグループがあったのでいろいろ話を聞く。 「この会はいつ頃できたんですか?」
「14、5年前かなあ。俺は12、3年いるけどその前からあるよ。」
「会員はどれくらいいるんですか?」
「400人ぐらいかな。」
 別なテーブルの上にはゲームの山。ボードウォークでやるようなゲームばかりだ。 マジックやRPGでなくて助かった。

○ミュンヘンの章
 残念ながらミュンヘンでは会に出られなかった。電話での印象も良くなかったが 入れてもらえなかったのである。知らない人間とゲームをしたくない者もいるだろ う。それはしかたのない事である。

 結局オーストリアの3つの会に出ることができた。言語の壁はあるもののルール さえわかっていればゲームはできる。友達もできる。なんと素晴らしいことか。 


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