樅ノ木は残った
山本 周五郎 新潮文庫 p303-
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2001年6月3日(日曜日) −−−−けれどもそれで終わるのではない、世の中に生きていけば、もっと大きな苦しみや、 もっと辛い、深い悲しみや、絶望を味わわなければならない。 生きることには、よろこびもある。 好ましい住居、好ましく着るよろこび、喰べたり飲んだりするよろこび、 人に愛されたり、尊敬されたりするよろこび。 −−−−また、自分に才能を認め、自分の為したことについてのよろこび、 と甲斐はなおつづけた。生きることには、たしかに多くのよろこびがある。 けれども、あらゆる「よろこび」は短い。それはすぐに消え去ってしまう。 それはつかのま、われわれを満足させるが、驚くほど早く消え去り、 そして、必ず後に苦しみと、悔恨を残す。 人は「つかのま」そして頼みがたいよろこびの代わりに、 絶えまのない努力や、苦しみや悲しみを背負い、それらに耐えながら、 やがて、すべてが「空しい」ということに気がつくのだ。 樅ノ木は残った まなびの杜 東北大学 樅ノ木は残った |
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