季刊かすてら・2005年春の号
◆目次◆
軽挙妄動手帳
奇妙倶楽部
編集後記
●不定形俳句鑑賞会●
出席者 さらさら:女子小学生
かすてら:男子落伍者
シンデレラ酸性雨
「酸性雨がシンデレラを作り出すのかしらね」
シンデレラって玉の輿を表すのに使われる言葉だな。
「幸運な女の子とかね」
酸性雨で幸運になるのか。
「酸性雨に象徴される大気汚染でみんな肌が荒れたり出来物ができたりしている未来世界で、綺麗な肌を維持している小数の特異体質者」
酸性雨の美女。健康的な感じはしねえな。
「毒の多い世界に適応している訳だから」
鼻摘み者かも知れねえな。本人はどう思ってんのかな。誇りに思っているのか恥じているのか。
「男の人にはもてるんじゃないの」
キスは美味しくなさそうだけど。
「体の中に毒が溜っている。セックスするとペニスの先から溶ける」
ポルノなんかで性的絶頂の時『溶ける』と言う言い方があるけど。
「ほんとに溶けちゃう。美人だけど関り合うと怖い」
今とあんまり変わらねえな。
「怖い目に遭った事あるの」
訊くな。
脳化粧
体内化粧。
「下着に凝るみたいな見えないお洒落」
骨に化粧して置くと死んだ後で焼き場で受けるな。大腿骨をペニスの形にしておいて、骨を拾う時親戚の女の子を困らせる。
「いや〜ん。死後セクハラ。病気した時レントゲンが見づらくてお医者様が困るわよ」
心を美しくしておくのも見えないお洒落だよな。
「何を偽善的な」
守護霊とか。
「わはは。水子の霊とか」
俺の水子は臍の緒で亀甲縛りにしてあるんだ。
「狐にも憑かれていて、それに水子が跨がってる」
それで守護霊が森脇健次。
「未だ死んでない。脳のお化粧ってどういうのかしらね」
ドーラン塗ったり。
「外側に絵を描いたり」
刺青みたいに倶利伽羅紋紋。
「豹柄」
種蒔いて緑の芝を生やす。
「栄養取られちゃう。シャネルとかルイ・ヴィトンとか」
訴えられるぞ。ファッションショーあるかな。
「頭蓋骨を切り取って脳を剥き出しにしたモデルが次々に歩いて来る」
剥き出しは危ないから透明な覆いを被せて。
「人造人間ハカイダー。ショー形式じゃなくて展示会なんじゃないかしら。こう、頭をすぱっと切ったマネキンの頭部が沢山並んでいる」
晒し首だ。
「晒し脳よ」
●不定形俳句●
- 保存版『ベスト・オブ・数え歌』
- 年寄り編み機(年寄りを編むのではなく年寄りで編む)
- ペットとしての焼き鳥
- ペットとしての直線
- ペットとしての人魂
- ペットとしての西風
- ペットとしての水
- ストリートスチュワーデス
- カーテン付きの爆弾
- 完備されたスラム
- 政治家のように見えるが実は鋏
- 抽象的なコンサートとしてのジャム
- 味噌塗装
- 魔法の人喰い錬り歯磨き
- 水母の洗濯(諺(ことわざ)だが意味や教訓はない)
- 水母のブルジョアジー
- お下げ髪の水母
- 花嫁のお色直しが女体盛(定型俳句)
- なぐる接続設定
- 刷毛と結婚した男
- 雑巾測定器
- 温泉地の核不拡散条約
- プロペラ悪寒
- 芸者を読む大学
- 軟膏おしぼり
- ヘブライ人武芸十八般
- 人格砲丸投げ
- トートロジー島唄
- 万年筆ライス
- サラリーマン直方体
- 鞭毛ビール
- 家庭内暴力ガム
- 家庭内暴力コンサート
- 家庭内暴力クラブ
- 家庭内暴力の補助ロケット
- 山姥ミスタッチ
- 茶道ボクシング
- お前の葛根湯の中
- 獣道が濁る感じ
- 自殺合わせ
- 魚拓インテリジェントビル
- ブラジャー花暦
- コロッケをこわがるカーディガン
- 一週間必要な立体視
- 無防備民謡
- 前菜軍事援助
- 膣オーブン
- 名物ベトナム毒矢
- 陣痛カフェ
- 蜘蛛の巣丁稚(でっち)
- 神風郵便局
- 「東京パルチザン娘」
- 露出家とその弟子
- 『ベスト・オブ・轢死』
- 助産婦スイッチバック
- 赤字体操
- リストラ新影流
- 赤字コギト
- 力士介入権
- 跳びはねる赤血球
- 天使収容所
- 無所属昇天
- 近親結婚将棋
- 猿の腰掛け練習機
- 礼装漁業
- 同情を雇う元気な日和見
- プリクラ蝉
- 水芸ダム
- フリーター列車
- 文化庁主任桶屋調査官
- 学歴社会木魚往来
- 超音速花見
- 跳びはねる蛇口
- スピロヘータキャバレー
- いすサラダ
- 犬津波
- 工業用土下座
- 携帯台風
- 眠れる森の美女不用説
- 東儀秀樹による雅楽の解説と演奏とまじない
- ペニシリン民謡
- 人権入出力装置
- 火災放置器
- 自転車ドロボー打ち上げ計画
- 動物学者キャバレー
- 鼻輪投げ
- 吊り橋としての押し入れ
- 私立学校としての押し入れ
- 市役所としての押し入れ
●世界虚事大百科事典●
カザエ族
オーストラリア北西部の水深二〇〜四〇センチの海に住むオーストラリア先住民の一部族。大人でも身長四〇センチと小柄で、橙色の甲羅を持つ。俯せで歩行する時の体型がシャコを思わせ先住民のアボリジニはシャコの人とも呼ぶ。身長ほどもある太くて長い触角を持ち、後頭部にに2対、口の脇に1対の刺があり、顎は上下ではなく左右に開く。甲羅の後ろの背面にやや複雑な浮彫模様がある。胸から生える脚の内、前三対の脚は鋏を持つが、とくに第一胸脚が強大で、長さは身長に等しい。底引網で漁獲されるが、漁業者が浅海での漁をせず、暇な秋から春が漁期である。身はやや軟らかく、甘みがある。アボリジニたちは彼らを人間であると主張しているが、カザエ族は人間ではなく蝦であるというのがオーストラリア政府の見解である。
『恋の巨人』
2005年二月に放映を開始した民放テレビドラマ。内容は少女漫画を原作にした通俗的な恋愛劇だが、男性出演者が全て現役相撲取りである事が特徴。力士メロドラマと銘打たれた。現代劇であるにもかかわらず男性が全て髷を結った巨漢である事に何の説明もなかった。脚本演出美術共に非常に真面目な物であったが、真面目であればあるほど視聴者は笑い転げた。天才ピアニスト役の千早海(ちはやうみ)が人気を博し、また、登場するロックバンド「マウンテンズ」の毎回異なる奇抜な衣装も話題となった。半年間の放映を予定していたが相撲協会の厳重抗議に依って四週間で打ち切られた。
ここに掲載した文章は、パソコン通信ASAHIネットにおいて私が書き散らした文章、主に会議室(電子フォーラム)「滑稽堂本舗」と「創作空間・天樹の森」の2005年1月〜3月までを編集したものです。
◆次号予告◆
2005年7月上旬発行予定。
別に楽しみにせんでもよい。
季刊カステラ・2005年冬の号
季刊カステラ・2005年夏の号
『カブレ者』目次