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近藤純正業績と自己紹介

近藤 純正(こんどう じゅんせい)
 理学博士 東北大学名誉教授


研究の概要(自己紹介)
専門分野=気象学>大気境界層物理学>熱収支・水収支論
私は、気象学で対象とする対流圏のうち地表面に近い層「大気境界層」に おける風の吹き方やエネルギー輸送の仕組み、陸面・水面など地表面への熱 や水分の出入りについて研究してきました。熱や水分の出入りのことは 「熱収支、水収支」と呼ばれています。地球上のさまざまな現象は、地球に 注がれる太陽エネルギーが源となっています。太陽エネルギーの大部分は 地表面に到達し、地球の表面を加熱し、海面や土壌中の水分を蒸発させたり、 直接大気を加熱したりしています。蒸発や加熱の度合いに地域的な違いが あると気圧の分布が生じ、風が吹き雨や雪が降ります。私は、こうした 現象を引き起こす源に近いところの、地表面付近における物理的過程を 中心として研究してきました。

現役引退後の2000年代に入り、日本の地球温暖化の実態について研究する ことになり、その基になるデータがどのような状況で得られたかを調べる ため全国の気象観測所を見てまわるうちに、観測所環境が悪化して きていることに気づきました。観測データをそのまま使って計算すると 地球温暖化量は過大に評価されていることがわかり、さまざまな補正を 行なうことによって、はじめて正確な日本の地球温暖化量をもとめる ことができました。

生い立ちと進路
私は高知県の田舎で生まれ、育ちました。 少年時代は手造りの仕掛けで川の魚や山の小鳥を捕まえて遊んでいました。 戦中戦後は食糧難だったので、獲物はおいしい食料となりました。
私は旧制中学校最後の入学生です。その当時、中学校へ進学する者の割合は 数%でした。 高校生のとき、天文や気象の観測、化石の採集などをしていました。 当時、東北大学教授・山本義一の「気象学概論」や天文学の専門書を読んで いました。東北大学へ入ってからの研究経過は、まず、十和田湖の蒸発の 研究に始まり、大気中の熱や水蒸気の輸送の研究、海上での気団変質の 研究、その後、砂漠や森林などいろいろな地表面上のエネルギー 輸送の研究へと進みました。

飢饉や身近な現象の研究
専門分野の研究のほかに、古文書の解読から天保大飢饉時代の天候を推定 しました。天保の大飢饉は今から約170年前の1836年に東北地方を 中心として起きたものであり、その影響は日本全国に及んでいます。 仙台藩では未曾有の飢饉とされており、多数の餓死者、百姓一揆・打ち こわしが続出しました。
また、金華山のシカが大量死した異常気象、養魚の大量死事件、東北地方 の多地点で同時発生した大規模な山火事現象など、身近な現象も研究しました。

市民活動の応援
仙台港で1987(昭和62)年夏に「未来の東北博覧会」が開催され、 仙台市民の発案による「氷山を北極海から仙台港まで運ぶプロジェクト」が あり、その際に学問的・技術的な指導を行いました。実際には経費の関係で、 グリーンランドから30トンの氷山のかけらを貨物船で運び低温室「氷の館」 に展示しました。
仙台市の七北公園(現在のサッカー場の近く)で1989(平成元)年夏に 88日間行われた「グリーンフェア仙台=花と緑の博覧会」では、仙台市民 の中から発案された88日間砂時計の学問的・技術的な指導を行いました。 砂時計は「大砂時計館」に展示され、誤差0.04%(50分間)の精度で 88日間の時の流れを終了させました。

略歴
1933年9月30日 高知県伊野町に生まれる

1957年3月23日 東北大学理学部地球物理学科卒業
1962年3月20日 東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻修了(理学博士)
1962年4月1日 東北大学理学部技官
1962年11月1日   同 助手
1967年10月1日 科学技術庁国立防災科学技術センター(現在の文部科学省国立防災科学技術研究所)研究室長
1973年8月1日 東北大学理学部助教授
1979年7月16日   同 教授
1997年3月31日 定年退官
1997年4月1日 東北大学名誉教授、現在に至る

現在
〒254-0054 神奈川県平塚市中里49-6
電話:0463-36-1070

受賞
1951年1月10日 高知県教育委員会児童生徒文化賞(高知における海陸風の研究)
1976年5月19日 日本気象学会賞(海面上の境界層の研究)
1994年8月3日 水文・水資源学会学術賞(水文・水資源学に関し画期的な業績)
2001年5月9日 日本気象学会・藤原賞(大気境界層における熱および水などの収支に関する研究への貢献)
2002年8月21日 水文・水資源学会功績賞(水文・水資源学に係わる研究に関して顕著な功績)

名誉会員
日本気象学会名誉会員
水文・水資源学会名誉会員

主要著書
「地表面に近い大気」(1981年、共著、東京大学出版会)
「大気境界層の科学」(1982年、東京堂出版)
「身近な気象の科学ー熱エネルギーの流れー」(1987年、東京大学出版会)
「水環境の気象学ー地表面の水収支・熱収支」(1994年、編著、朝倉書店)
「地表面に近い大気の科学ー理解と応用ー」(2000年、東京大学出版会)
「身近な気象のふしぎ」(2023年、東京大学出版会)

文献の種類別の分類
・論 文=185編(英文69編,和文116編)
     Journals of the American Meteorological Society・19編
     Boundary-Layer Meteorology ・・・・・・・・・・・・・・・・・12編
     Journal of the Meteorological Society of Japan ・・26編
     他の英文国際誌 ・・・・・・・・・・・・・・・・・12編
     天気 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48編
     水文・水資源学会誌 ・・・・・・・・・・・・・・32編
     雪氷 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10編
     その他の和文誌 ・・・・・・・・・・・・・・・・・26編

・研究報告書=33編
・解説など=70編
・著 書=10編(学術専門書5編,入門書1編,その他4編)
・分担執筆著書=5編

・合 計=308編