A02.気候観測応援会情報(2)

編者:近藤純正
これは、「気候観測を応援する会」がメンバー向けに送る情報(第2号)です。 (完成:2010年12月14日;津山地区メンバー追記:2011年1月2日)

本ホームページに掲載の内容は著作物であるので、 引用・利用に際しては”近藤純正ホームページ”からの引用であることを 明記のこと。

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工事中(更新記録)
2010年12月10日:ほぼ完成
2010年12月14日:完成
2011年1月2日:岡山県津山の地区メンバーに1名追記


	目次
	2.1 青森県深浦の地区メンバーが発足
	2.2 岡山県津山の地区メンバーが発足
	2.3 北海道新聞に応援組織の紹介
	2.4 総務省がアメダスの観測環境について改善勧告
	文献


2.1 青森県深浦の地区メンバーが発足

深浦観測所地区メンバー(5名):
兼平惣七氏(代表者)、本田一栄氏、木村勝三郎氏、工藤正昭氏、堀内不二男氏(連絡責任者)

青森県の深浦観測所(旧深浦測候所、現在の名称は深浦特別地域気象観測所)は、深浦町の史跡公園 「御仮屋」の東の部分にある。「御仮屋」の西の部分には 展望台があり、その眼下には深浦一帯の眺望が開ける。展望台の周辺は岡町の町内会有志の ボランティア活動により毎年草刈りなど美化に努めてきた。

今回発足した地区メンバーは、岡町の町内会会長・兼平惣七さんにお願いしてあったところ、 5名の方が参加していただいた。今後は観測所敷地の内・外にも気配りして良質な観測資料が 得られるようお手伝いしていただけることになった。

深浦には2007年3月28日に秋田大学の本谷研氏と訪問して以来、これまで5回訪問した。5回目には 市民講座を開催し(2010年9月18日)、住民の方々に観測の重要性を理解していただいた。 岡町の町内会長・兼平氏とは深浦訪問の都度、お目にかかるなど、連絡を続けてきた経緯がある。

2.2 岡山県津山の地区メンバーが発足

津山観測所地区メンバー(4名):
廣幡泰治氏(代表者、連絡責任者)、岡本成二氏、妹尾亮氏、古園勝啓氏

津山観測所(旧津山測候所、現在の名称は津山特別地域気象観測所)は、津山城址の東側の丹後山 に設置されている。この観測所の周りには、40年余前に城東地区住民によって植樹された桜200本が 成長し、そのうちの約20本が気象観測の邪魔になっていたが、住民の理解と協力により、2010年2月 15日~16日に伐採され、環境改善が行われた観測所である。

全国の専門家メンバーのひとりである廣幡氏がメーリング・リストなどによって呼びかけをした 結果、津山市内と岡山市内に在住の気象予報士が参加していただいた。

2.3 北海道新聞に応援組織を紹介

全国の専門家メンバーのひとりである本谷義信氏による投稿「大切な気象観測応援組織を結成」が 北海道新聞の11月23日版にて紹介された。

北海道新聞(2010年11月23日版)に掲載された記事(本谷義信氏提供)
大切な気象観測 応援組織を結成
本谷 義信 72(札幌市手稲区)

16日夕刊「今日の話題」の「情報のぬくもり」の測候所廃止の話に、わが意を得たりと思いました。

短期的な気象観測は防災に欠かせませんが、最近は地球温暖化などの気候監視も重要になっています。 長期にわたる高精度の観測が必要ですが、環境が変わると長期間の比較に耐えるデータは得られ ません。

観測所の周りの木が大きくなって風通しが悪くなったり、日の当たり方が変ったりしても困るのです。 観測は気象庁の責任だとしても、無人化された測候所の観測環境が同じ状態で維持され続けるか心配 です。

9月には今年の国内最高気温を記録した京都府京田辺市の地域気象観測システム(アメダス)の装置 につる性の植物が絡まっていたため、気象庁が記録を取り消す事態もありました。

そこでこの秋、全国の30人ほどの専門家らが「気候観測を応援する会」を発足させました。旅行の際 などに測候所のあった場所に立ち寄って観測環境が変わっていないかどうかを点検する組織で、私もその一員 です。

将来は観測環境の重要性を理解してくれる地元の方たちと共に観測維持に役立つことを願っています。

2.4 総務省がアメダスの観測環境について改善勧告

廣幡泰治氏からの情報によれば、「総務省が気象庁を所管する国土交通省に対してアメダスの 観測環境について改善を勧告した」という記事があった(時事通信11月26日)。 その概要は次の通りである。

全国約1300カ所のアメダス観測所のうち45カ所を調べたところ、周囲の樹木などによって正確な 観測に影響が生じる恐れがあるなど、設置基準を満たしていなかった観測所が15カ所(33%) に上がった。総務省は、国土交通省に樹木の伐採などによって観測所の周囲の環境を改善するよう 求めた。

備考:
(1)この勧告にいたる経緯について、次のことが想像される。総務大臣・片山善博氏が大臣就任前 の9月8日に、TBS「みのもんた朝ズバ」にコメンテータとして出演されており、その番組で 近藤純正(録画出演)が「京田辺アメダス」のほかにも観測環境が悪化している問題について解説 した内容を記憶されておられ、後日(2010年9月17日)、中日新聞の投書欄「紙つぶて」に 京田辺アメダスの問題を引用されて、次の内容を書いておられる。

・・・・気象観測は領土を守ることと 同じく、国の最も基本的な業務である。草取りを怠っていたのは測候所の手抜きなのか、それとも 予算や人員が足らないからか。それを吟味するのが予算査定である。(片山善博 慶応大教授)

その直後に片山善博氏は大臣に就任されてから、総務省内に命じてアメダスの45カ所を調べさせることに なったのかも知れない。

(2)かつて桑形恒男・近藤純正(天気、1990年)が東北地方の 67カ所のアメダスを調べたところ、29カ所(43%)がごく近傍の建物や樹木等の影響を受 けており、風速データの利用に際して注意が必要であることを一覧表にx印で示しておいた。

(3)これら環境の悪いアメダスは、移転せずして、改善することは困難である。多くのアメダス の前身は区内観測所であり、人家の庭に設置されたものもあり、1970年代の自動観測への変更に際し、 そのまま引き継がれた観測所も多く、その隣地に建物が新築されたり樹木が生えたりしている、 その意味で、一般のアメダスの多くは地域の気象の代表値ではなく概略値(低品質データ)を観測 しているとみなすべきであろう。

(4)アメダスの多くは低品質データであっても、利用価値がないわけではなく、利用者の工夫に 委ねられる。工夫の一例として、近藤と桑形は東北地方多地点で一斉に山林火災が発生 した1983年4月27日の異常強風の解析に際し、あらかじめ東北地方が西寄りの強風日10日間について 観測所ごとの日平均風速を求めて、これを平常時の並風速とした。それを基準に強風・並風・微風 に区分し、火災日の時刻ごとの強風域の移動・拡大・縮小の模様を解析した (近藤・桑形、1984a; 1984b、近藤、1987、図6.5)。

文献

近藤純正、1987:身近な気象の科学.東京大学出版会、pp.189.

近藤純正・桑形恒男、1984a:東北地方多地点一斉大規模山林火災を誘発した1983年4月27日の 異常乾燥強風(2).天気、31、37-44 and 52.

近藤純正・桑形恒男、1984b:東北地方多地点一斉大規模山林火災を誘発した1983年4月27日の 異常乾燥強風(3).天気、31、127-136.

桑形恒男・近藤純正、1990:東北南部から中部地方までのアメダス地点における地表面粗度の推定. 天気、37、197-201.

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