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室戸海岸の朝・冬は暖か、昼・夏は涼しい ー最近の観測を基にしてー 近藤純正(東北大学名誉教授) 1.はじめに 室戸岬観測所、今回の気温観測の目的 2.観測の結果 「とろむ」、「室戸青少年自然の家」の気温 3.各地アメダス、江川崎ほかとの比較 海岸からの距離と気温の関係 |
② 室戸岬特別地域気象観測所 (旧室戸岬測候所) ・・・・・ 略称:岬観測所 位置と標高: 北緯33度15.1分、東経134度10.6分、標高185m 沿革(主なことのみ) 大正9年(1920年)7月10日 中央気象台室戸測候所設立、観測開始 昭和11年(1936年)7月5日 室戸岬測候所と改称 昭和35年(1960年)8月25日 気象レーダー1号機設置 昭和36年(1961年)9月の第2室戸台風の全体像をレーダ観測 昭和45年(1970年)4月1日 スカイライン完成 平成18年(2006年)11月28日 風向風速計を海上保安庁無線方位 信号所敷地内に移設 平成19年(2007年)5月31日 旧測風塔(40m)を解体 平成20年(2008年)10月1日 無人化、室戸岬特別地域気象観測所 平成23年(2011年)3月 同上 観測所局舎完成 |
③ <旧測候所測風塔> 左:旧測候所の40m測風塔、 右:測風塔から見下ろした露場と庁舎(2005年11月19日撮影) ![]() |
④<今回の 気温観測の目的> 高知県東部・室戸の気温は、テレビで室戸岬特別地域気象観測所 (標高=185m:旧測候所)の最高気温で報道されることが多く、 「室戸は高知より寒い」という印象がある。 しかし、地元で暮す人々は「室戸は暖かい」と感じている。 これを確かめるために海岸の代表地点・室戸岬漁港「とろむ」に おいて2014年1月23日から気温の連続観測を行なうことにした。 |
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<室戸は高知より暖かい -昔も今も- >室戸岬 高知 気温差 1921~1950年 16.1℃ 15.6℃ 0.5℃ 室戸岬が高温 1980~2009年 16.6 16.9 -0.3℃ 室戸岬が低温 気温上昇量 0.5 1.3 高知は都市化○室戸岬観測所の標高=185m 海岸近くの年平均気温は観測所より1.3℃高温 ○室戸の市街地は、都市化影響により 0.5℃ほど高温 (全国中都市の都市化による気温上昇の平均=0.5℃) 室戸市街地(年平均気温推定値=16.6+1.8=18.4℃) <今も> 18.4℃(室戸市街)-16.9℃(高知)=1.5℃(高知より高温) その他の特徴も調べてみよう! |
⑥<気温の観測> 試験観測 *岬観測所、旧室戸岬小学校、防災公園、岬海岸展望台 2013年10月29日~11月1日 *国立室戸青少年自然の家の駐車場 2014年1月23日~28日 連続観測 *室戸岬漁港「とろむ」のドルフィンセンターの駐車場 2014年1月23日~8月8日 (8月9日~10日、台風の波しぶきでモータ停止) *国立室戸青少年自然の家の駐車場 2014年5月13日~9月4日 四万十川流域観測 海岸から内陸までの気温変化を知る 2014年4月2日~9月6日 |
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<室戸岬の地図>(国土地理院地図から引用) 自然の家(標高=270m),岬観測所(185m),とろむ(3m) ![]() |
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<四国西南部の地図>(国土地理院地図から引用) 海岸から内陸へ、日中の気温分布は? 四万十川の河口から江川崎、さらに上流へと気温計を配置 ![]() |
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<西土佐大橋から北方を望む>( 2014年9月7日撮影) ![]() |
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<山村ヘルスセンターから西を望む>( 2014年4月3日撮影) 赤四角印:江川崎アメダス ![]() |
⑪ <気温の観測は難しい> * 地域の代表気温を観測 日当たりと風通しのよい開けた場所で観測 風通しが悪い狭い場所では、 日中の気温は1~2℃高く観測される * 気温計は放射の影響 (日中の太陽光、夜間の低温天空放射) により、日中は2~3℃高め、夜間は0.5℃程度 低めに観測されることがある。 * 放射の影響を0.02℃以下にするために、 4重の通風装置にPtセンサーを入れる。 |
⑫ <室戸岬漁港「とろむ」に設置した気温計> (2014年1月23日撮影) ![]() |
⑬ <室戸青少年自然の家の駐車場に設置した気温計> (2014年1月23日撮影) 5月から9月までの連続観測時は「とむろ」に設置した気温計と 同型に取り換えて観測 ![]() |
⑭<気温日変化、とろむと岬観測所と自然の家の比較>
2014年5月-7月の65日間の平均![]() |
⑮ <気温観測のまとめ> ![]() |
⑯ <室戸海岸「とろむ」の気温の推定式> 平均気温=岬観測所の平均気温+1.3℃ 最高気温=岬観測所の最高気温+1.0℃ 最低気温=岬観測所の最低気温+1.0℃ 「問題1」 〇 2013年8月12日、江川崎で最高気温41.0℃を記録。 とろむ はそれより何度低かったか?(4℃、7℃、10℃) 〇 2014年1月の24日(晴天)の最低気温は江川崎で-3.6℃。 とろむ はそれより何度高かったか? (5℃、8℃、11℃) |
⑰<室戸海岸の気温の特徴を調べてみよう> 他の観測所のと違いに注目 江川崎、中村、須崎、高知、ごめん、安芸 日変化・・・・・・朝と昼の気温 季節変化・・・・・季節による違い |
⑱ <真冬の気温の日変化> 上図:14日間の平均気温、下図:晴天の4日間の平均気温 下図によれば、江川崎の晴天日の朝は、「とろむ」より約8℃ 寒いが日中は3℃高い。 ![]() |
⑲ <盛夏の気温の日変化> 上図:22日間の平均気温、下図:晴天の6日間の平均気温 下図によれば、内陸の江川崎の晴天日中の 気温は「とろむ」に比べて約4℃高温である。次の図 (四万十川沿いの気温観測)を参照。 ![]() |
⑳ <夏の晴天日の昼過ぎの気温は、海岸からの距離によって どのように変わるか?> 四万十川沿いの気温分布の観測結果、(例)2014年7月25日 日中の気温は内陸ほど上昇し、江川崎 では河口より約5℃高温になっている。 ![]() |
(21) <平均気温の季節変化>「とろむ」と6アメダスの比較 「とろむ」はとくに冬の12月~1月に暖かく、江川崎に比べて4.8℃(12月)、 4.2℃(1月)も暖かい ![]() |
(22) <最高気温と最低気温の月平均値> 上図:1月、下図:8月 ![]() |
(23) <「とろむ」を基準のゼロとしたときの気温差> 赤印:8月の最高気温、青印:1月の最低気温 「とろむ」では8月平均の最高気温は江川崎より2.7℃低く、 1月平均の最低気温は江川崎より5.6℃高い。 ![]() |
(24) <2013年5月~8月の最高気温と最低気温の差> 赤丸印:晴天日の平均、灰丸印:5~8月毎日の平均 晴天日の「とむろ」における気温変化幅は6.7℃で、 高知(11.0℃)の61%、江川崎(17.0℃)の39%である。 ![]() |
(25) <室戸沖の水温と室戸岬の気温の季節変化> 室戸海岸の特徴は「黒潮」の影響が大きい ![]() |
(26) <風速の違いによる海水温度の日変化(晴天日)> 左図:Kondo, et al(1979)、 右図:近藤「地表面に近い大気の科学」(2000)による 変化幅が小さい海水温度の影響を受けて、 室戸では気温変化が小さい 「問題2」海水温度の日変化幅は、なぜ小さいか? ![]() |
室戸海岸の気温の推定式 平均気温=岬観測所の平均気温+1.3℃ 最高気温=岬観測所の最高気温+1.0℃ 最低気温=岬観測所の最低気温+1.0℃ 平 均 気 温 室戸海岸は岬観測所より1.3℃高温(高度減率=0.74℃/100m) 自然の家は岬観測所より0.4℃低温 自然の家は室戸海岸より1.7℃低温(高度減率=0.64℃/100m) 8月の最高気温 室戸海岸は高知より2.2℃涼しい 室戸海岸は江川崎より2.7℃涼しい(7℃低いことも) 1月の最低気温 室戸海岸は高知より4.2℃高温 室戸海岸は江川崎より5.6℃高温(11℃高いことも)
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