最高・最低温度計とデータの利用
(平均気温の代表値としての利用)
(1)観測方法による温度差
最低気温は最低温度計で観測できる。一方、最近のアメダスに
おける最低気温は毎正時の1時間ごとに観測された気温のうち、つまり24回観測
のうちの最低値を最低気温としている。そのため、最低温度計による値は
平均的に0.2~0.5℃ほど低めとなる。個々の日についての差はこれよりも
大きいことがある。
同様に最高気温については、最高温度計による観測値は逆に0.2~0.5℃
ほど高めの値となる。この差は、気温の時間変動が大きい条件、たとえば
大気が不安定な状態のとき、大きくなる。
(2)観測方法による日平均気温の代用値の差
昔、最低気温と最高気温の平均値を日平均気温の代用値とすることが行なわ
れていた。この場合、1日に24回観測のデータから得られた最低・最高気温の
平均値を用いても、平均的には同じ平均気温を得る。実際に旭川の1980年から
の9年間の観測データから確かめた結果、年平均気温の9年間平均は6.26℃で
同じであった。
(3)最高・最低温度の平均を日平均気温として利用できるか
工夫すれば、かなりよい精度で利用できる。
補正量=(年平均気温)-(毎日の最高・最低気温の年平均値)と定義して、
旭川のデータについて30年間の平均値を調べると
1900~1929年では、補正量=-0.24℃(最小最大の幅:-0.5~0.15℃)
1970~1997年では、補正量=-0.07℃(最小最大の幅:-0.25~0.05℃)
である。
同様に、山形のデータについて30年間の平均値を調べると
1900~1929年では、補正量=-0.41℃(最小最大の幅:-0.55~-0.3℃)
1970~1997年では、補正量=-0.34℃(最小最大の幅:-0.45~-0.25℃)
である。
地点による違いは、気温の日変化パターンの違いによるものである。
そのほか期間によっても違うのは、現在のアメダスのように1日24回の
観測と違って、気温観測の時刻と1日の観測回数が3回であったり、6回、8回、
24回であったり、時代や観測所によって異なるからである。
多くの地点では、午後から翌朝にかけて気温は時間とともに緩やかに変化する
のに対し、日の出~正午にかけての気温上昇が急激である。このパターン
によって、一般的に上で定義した補正量はマイナスの値をもつ。
つまり、(毎日の最高・最低気温の年平均値)は高めの値となるので、この
値から引き算すれば年平均気温が求められる。
例外的に、年間を通じて毎日、海陸風が発達するような海岸観測所では、
海風が吹き始めると気温はほぼ一定で推移するが、夕刻~翌朝にかけては
気温下降が生じる。このような日変化パターンでは補正量はプラスの値と
なる。
したがって、地域ごとに補正量を求めておけば、毎日の最高気温と最低気温
の年平均値が年平均気温の代用値となり、気候変動の調査に利用できる。