山崎 剛の研究内容
これまでの研究
・積雪のモデル化
積雪面での熱収支を定量的に評価するための簡単な積雪モデルを開発しま
した.モデルは積雪全層と厚さのない表面の熱収支を解く単純なものですが,
積雪表面温度,融雪量などを気象データから評価することができるように
なりました.
積雪内部の変態を計算できる積雪多層モデルを開発しました.積雪面での
熱交換はアルベード(日射の反射率)や熱伝導率は積雪の性質によって大きく
異なり,積雪の性質は気象状態に応じて刻々と変化するため,積雪面での
正確な熱交換を知るためには内部のモデル化が不可欠と考えました.
このモデルはそれまでばらばらに研究されてきた積雪に関する知識の統合
化でもありました.
これらの基礎となる積雪の表面,内部,気象に関する観測を実施しました.
・植生地のモデル化
植生地での熱収支を評価できる植生部分が2層からなる植生モデルを
開発しました.植生地はその構造が複雑で,生理作用もあるため,
もっとも厄介な地表面要素です.そこでの熱,運動量,物質の交換を
正確に評価するためには,植生を含めた地表面を1つの層として扱うのでは
無理があります.そのために,植物層を多層に切る多層モデルが開発されて
きましたが,このモデルはできるだけ簡単でしかも多層モデルと同様の
精度で交換量を評価するために開発したものです.
・植生と積雪の共存
積雪と植生(森林)が共存するといろいろ面白いことが起きます.
上に記した積雪と植生のモデルや領域大気モデルを使って,それらを
調べました.その結果,次のようなことがわかりました.森林内部の
融雪量は森林が密になると減少するが,特殊な条件では逆になりうること.
積雪があっても森林地帯では大気を加熱すること.そのために,森林が
ないところでも周囲の森林の影響で融雪期に気温が0℃よりも高くなり
うること.
最近の研究と将来研究
これまでの研究を基礎に,地球規模での気候に対して大きな影響を与える
大陸寒冷域での研究を進めています.熱収支とともに水循環の視点も
重視しています.また,植物生態の専門家とともに,北方林での水循環
特性の解明と生態生理のパラメータ化も図っています.具体的には
東シベリアのタイガ林地域やモンゴルに開発してきたモデルを適用したり,
データを解析したりしています.
重要な問題として,寒冷域に関しては,以下のようなことが考えられます.
・凍土の果たす役割の解明やモデルの改良
・着雪に関する研究(森林地帯)
・吹雪の影響(非森林地帯)
・降水量をはじめとする基本的な要素の観測精度の向上
・植生,雪氷圏の変動(人間活動の影響も含めて)
これまでの研究は,「大気陸面相互作用」というキーワードが使われて
きましたが,実際には一方通行的な研究が多く,今後は真の意味での
相互作用を追及していきたいと思います.
以下のサイトもご参照ください.文献,関連計画などを記しています.
URL: http://wind.geophys.tohoku.ac.jp/~yamaz/
山崎剛のホームページ