三枝信子の研究内容
これまでの研究
1988~1993年:東北大学の気象学講座で,近藤先生の指導を受け,
土壌面から大気へ水が輸送される過程について研究しました。特に,
土壌面蒸発量を推定するためには土壌中で水が蒸発し土壌粒子の間
を拡散する過程を表現しないとうまくいかないことを示しました。
1993~1996年:筑波大学の生物科学系で,及川武久先生の植物生態
学研究室のメンバーと一緒に,草原から大気へ輸送される熱・水・
二酸化炭素量の観測をしました。季節とともに変化する草本植物の
種類と葉面積を詳しく測定し,それらが群落全体の二酸化炭素輸送量
を変化させるしくみを示しました。
1996~2000年ころ:資源環境技術総合研究所で,1993年に開始した
落葉広葉樹林と大気の間の二酸化炭素交換量の長期観測に加わりま
した。渦相関法で二酸化炭素輸送量を長期間安定に測定するのは
難しいのですが,装置や補正方法を検討・改良し,森林が一年間に
吸収する二酸化炭素量を算出できるようにしました。
現在~将来にむけての研究
2001年に研究所の名前が産業技術総合研究所に変わりましたが,
引き続き森林と大気の間の熱・水・二酸化炭素交換量の観測研究を
行っています。
今は特に,岐阜県高山の森林観測サイト(高山サイト)
に集まる岐阜大学をはじめとする各機関のさまざまな専門のみなさんと
一緒に,個葉光合成から群落光合成への積上げ,生態学的方法による
森林の年間炭素固定量観測との比較,森林の年間炭素固定量が年々
変動するしくみを解明することなどに取り組んでいます。
また,高山サイトと同じような観測をしている日本およびアジア諸国の
研究者と連携し,アジア陸域生態系の炭素収支が現在どのようであって,
将来どのように変わる可能性があるかを解明するための研究を始めた
ところです。