徐 健青の研究内容

これまでの研究

1. 裸地面モデルに関する研究
中国各地における裸地面の熱収支・水収支の日変化・季節変化を知るために、 詳細な裸地面モデル(Kondo and Saigusa, 1994)をもとにして、やや 簡単化したモデルを作成しました。この簡単化モデルを用いて、 中国30地点の気象条件下に各4種類の土壌があるとした場合について 熱収支・水収支量を評価しました(Kondo and Xu, 1997)。

さらに、このモデルをチベット高原に応用し,チベット高原における熱・水収支 を評価し,広域的な日射量,放射量,顕熱,潜熱,蒸発量,流出量などの 季節変化を示しました。

2.気候変動に関する熱収支・水収支的研究
近藤・徐(1997)によって提案されたポテンシャル蒸発量 と気候湿潤度を用いて,東アジアにおける近年(1971-2000)年の気候変動を 調べました。また,ポテンシャル蒸発量とパン蒸発計蒸発量の関係も調べ ました(その意味については文末の備考を参照)。

3.植生指数と気候湿潤度に関する研究
近藤・徐によって提案された気候湿潤度は、衛星から観測された 植生指数NDVIとよい相関を持っていることを明らかにしました。 この関係を用いて,陸面上の植生の気候的,地域的変化を調べました。

現在~将来に向けての研究

これまでの研究で裸地面モデルを開発し,またポテンシャル蒸発量と 気候湿潤度の関係を乾燥・半乾燥域・高原域などに応用してきました。 引き続きポテンシャル蒸発量(パン蒸発計蒸発量)と,気候湿潤度の解析から, 寒冷域における熱・水収支の季節・年々変動を調べる予定です。

ポテンシャル蒸発量(パン蒸発計蒸発量)と気候湿潤度に関するデータセット も徐々に充実してきたので,気候モデル・領域モデルの計算結果と比較 したいと思っています。

気候変動に関しては,長期の気温観測データとパン蒸発計蒸発量の解析 を進める予定です。

備考: ポテンシャル蒸発量の意味
近藤・徐(1997)によって提案されたポテンシャル蒸発量 Ep は、毎日の風速、 気温、湿度、黒い標準面への入力放射量の日平均値によって定義されます。 それゆえ、Ep はその地域の総合的な気候パラメータ、つまり 「熱・水収支的パラメータ」の気候変動を表現できます。
現在のような多要素の気象の観測が行われていない昔は、蒸発計蒸発量 が総合的な気候パラメータとなっていました。それゆえ、蒸発計 蒸発量とポテンシャル蒸発量の関係が既知であれば、昔から現在さらに将来 にかけての総合的な気候パラメータである「熱・水収支的パラメータ」の変動 を知ることができます。

ポテンシャル蒸発量 Ep は、気温や湿度など単パラメータよりは、はるかに 重要なパラメータであるわけです。さらに、降水量 Pr とEp との比 Pr/Ep を 「気候湿潤度」と呼ぶことにしています。


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