研究課題に対するヒント
(積雪域における気温の日変化幅)
(1)積雪地域のアメダスから積雪深がある深さ以上(たとえば0.3m以上)
の日を選ぶ。対象日の前日・当日・翌日の日照時間がともに数時間以上
の場合を選び、おもに晴天日を対象とする。
積雪深がある深さ以上の日を選ぶ理由は、積雪地域であっても、現実には
積雪部分と無積雪部分が混在している。そのため、アメダスの気温データ
には融雪・再凍結の効果が全面的に現われるわけではない。積雪部分では
地表面(積雪面)温度は0℃以上に昇温しないが、無積雪部分の地表面
(裸地、樹木など)温度は0℃以上に昇温しうる。この結果、地域の
気温は0℃以上になりうる(Yamazaki, 1995)。
ここでは、積雪部分の占める割合が多いときを解析したいので、積雪深が
深い日を選ぶことにした。
(2)当日の日平均気温を横軸に、気温日較差(最高気温と最低気温の差)
を縦軸にプロットする。各プロットは対象当日の日照時間ごと、および
日平均風速ごとに記号分けしておく。
(3)積雪の融雪・再凍結が起きるのは、日平均気温が0℃前後の日、
あるいは前日の最高気温が非常に高温になった日と考えられる。
このことを意識してグラフを眺める。
(4)夜間の放射冷却(夕方から朝までの温度低下量)が大きくなるのは、
低温の乾いた雪が積もった静穏の夜間である。
しかし、積雪内に融解した液体水が含まれると、積雪の熱的パラメータが
大きくなり、夜間冷却は小さくなる。
(5)比較的高温で、しばらく無降雪が続くと積雪面のアルベドは低下し、
日中の融雪が起きやすくなる。
(5)この研究課題はデータ解析であるが、理論的な考察を行なう場合
の参考に、熱収支式を示しておく。
地表面の熱収支式は、通常、次式で表わされる。
R↓ = σTS4 + H + lE + G ・・・
・・・・・・・・・・・・・・・ (式3.5)
入力放射 = 地面放射 + 顕熱 + 潜熱 + 地中伝導熱
ただし入力放射量:
R↓=(1-ref)S↓+L↓ ・・・・・・・(式3.6)
である。ここに、ref は積雪面アルベド、S↓とL↓はそれぞれ下向きに
積雪面に入る日射量と大気放射量である。
積雪面において、気温が0℃以上で融雪が連続的に生じて
いるときの積雪は全層0℃一定で地中伝導熱 G (この場合は積雪面から下への
伝導熱)に相当する分は融雪エネルギー M となり、次のように
表わされる(水環境の気象学、p.140)。
M =(R↓-σTS4) + H + lE
(6)詳細解析の際には、有限の厚さをもつ積雪を対象にして、
次の熱収支式を用いる(水環境の気象学、p.242)。
QS + QM = QG
ここに、QSは積雪の温度を上昇させるエネルギー、
QMは融雪に使われるエネルギー、QGは積雪層
が表面と底面から得る正味のエネルギーである。