(13/20) もう、この眺めも最後かと朝夕見なれた坂の峠で 新之丞はじっとして動きませんでした。 静かな谷間の下から上ってくる霧、遠く潮(しお)鳴り する海の景色、何もかも名残惜しいのでした。 「ずいぶんお世話になりました。」 ここまで言った新之丞が後ろを向こうとすると、