135. 室戸岬灯台まつり

著者=近藤 純正
2014年11月1日~2日の灯台まつりを見学した。(完成:2015年6月28日)

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はじめて体験した灯台まつりで、私は演者・奏者たちの一所懸命な生きざまに感動した。 2014年11月1日~2日は第37回室戸岬3大扉一挙公開の室戸岬灯台まつりである。 その前日10月31日に市民講座「室戸海岸の朝・冬は暖か、昼・夏は涼しい」を開催 するため2泊3日の室戸への旅であった。

大扉その1は四国88カ所開創1200年を記念した第24番札所・最御崎寺 (ほつみさきじ)の宝仏殿の公開、国指定の美術工芸品・彫刻の重要文化財3つが 展示されている(写真135.1)。

最御崎寺放物
写真135.1 最御崎寺宝物殿の重要文化財。左から石造の如意輪観音半跏像、木造の 薬師如来坐像、木造の月光菩薩立像。

左端には如意輪観音半跏像(にょいりんかんのんはんかぞう)がある。この像は弘法大師が 唐より持参したものと伝えられ、この寺の登り口東方の岩屋で発見されたもの、全国の重要 文化財唯一の大理石像である。

大扉その2は、11月1日の夕刻の灯台まつり開会セレモニーで子ども灯台守任命式 及び点灯式のあと、灯台内部が公開された。

 室戸岬灯台は明治32年(1899)に点灯、直径2.66mの日本一の第1等レンズ が使われている(写真135.2)。

灯台
写真135.2 一日灯台長の川村風夏さんと灯台を撮影する観光客。

 見学者の一人が、高知海上保安部次長の本多康伸さんに訊ねた。「わたしのお祖父さんは この灯台建設に従事し、その際に地中を深く掘ったと聞いているが、灯台の基礎は深く 造るものでしょうか?」と。次長は「灯台の基礎は深くない」と答える。しかし、次長が 灯台内部を探すと、大黒柱に相当する大きな鉄の円筒柱に扉がついている。開扉して覗くと、 深さ約4mの井戸の構造になっている。現在は使われていないのか、底には水が 溜まっており、真の深さは不明である。

 現在は、灯台のレンズはモータで回転させているが、昔は鳩時計の原理を利用していた。 つまり、重りを人力で巻き揚げて、ゆっくり落下するときのエネルギーがレンズを回転 させていたはずだという。鉄の円筒柱は重りの上げ下げの通路であったわけだ。

 翌日、再び灯台を見学すると、本多次長が見つけた重りが倉庫に置かれていた。 びくともしない重さであった。昔の灯台守は、夜を通して重りを巻き揚げレンズを回転 させていたのである。

 大扉その3は、11月2日の13時~16時、室戸岬特別地域気象観測所の公開で ある(写真135.3)。この観測所では、日本最初のレーダ1号機が昭和35年(1960) に設置され、翌年には第2室戸台風の眼が観測された。

観測所見学会
写真135.3 室戸岬特別地域気象観測所(旧測候所)見学者に対して高知地方 気象台長の齊藤誠台長が説明している。

 一方、11月1日の灯台まつり開会セレモニーの後、宝仏殿公開記念夜会として、 最御崎寺を会場にして豊山太鼓、ヨガのパホーマンス、ジャズバンド、オカリナの演奏、 ソプラノ歌手によるステージがあった。

 ピストルジャズは別名室戸の海賊とも呼ばれ、熱気を帯びた激しい演奏が披露された。 3名のメンバーは室戸市出身とのこと(写真135.4)。ギター演者は上半身裸である。  ピストルジャズと共演したHIBOさんはジャズの印象を特徴ある絵にして表現 した(写真135.6)。

ジャズ演奏
写真135.4 ピストルジャズ、別名室戸の海賊による演奏。

ひろさんインタビュー
写真135.5 ジャズと共演して特徴を絵に描いたHIBOさん(左端)。

 続いて、オカリナ奏者のホンヤミカコ(本谷美加子)さんが登場(写真135.6の左)。 彼女は、北海道出身で国内外でのコンサートを行なっており、2014年5月より四国 遍路結願のお礼参りや慰問コンサートなどのために、四万十市に移住、高知県観光特使 として活躍されている。

 最後の登場はソプラノ歌手の青木寛子さんである(写真135.6の中)。彼女は高知県立 丸の内高校音楽科卒、武蔵野音楽大卒業、同大学院主席修了である。

演奏、3人
写真135.6 左から順番にオカリナ奏者のホンヤミカコさん、 ソプラノ歌手の青木寛子さん、アコーディオン奏者の坂野志麻さん。

 この記念夜会に登場した彼ら彼女らの生きざまに私は感動した。翌2日の灯台まつり 本祭では、灯台の旧官舎敷地内でライブが行われ、室戸高校吹奏学部&音楽部による演奏、 続いて坂野志麻さんによるアコーディオン演奏があった(写真135.6の右)。坂野志麻さんは 安芸市生まれ、高知県内各所で活躍中。来年には、世界一周の豪華旅客船内で旅客相手に 演奏される予定とのこと。

 演奏が終わり、彼女に訊くと、現在は高知市内に住み、音楽活動だけで生活している という。収入には波があり、ぎりぎりだという。この日も、彼ら彼女らの一所懸命に 活動している姿に心を打たれ、私は励まされる思いをした。

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