129. 四万十川の河口へ

著者=近藤 純正
四万十川の下流域を見学した。河口の下田漁港は、12年前の遍路旅で通った思い出の 所である。 (完成:2014年10月24日)

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四万十川の河口は、私が12年前に遍路で歩いた懐かしいところである。日本一の散歩 道、素晴らしい景色に出合い、疲れを忘れて歩いた道、再び訪ねることになる。

2014年4月から四万十川の上流の西土佐江川崎で気温観測を続けている。土佐湾から 吹く海風が四万十川を上り内陸に進むにしたがって気温がどのように上昇するかを知り たくなった。それには、基準となる河口で気温を観測する必要があり、気温計の設置 場所を決めるために下見しておきたい。

江川崎から中村までのバスは1日に3回、途中の口屋内で乗り継いで1時間20分ほど かかる。途中には狭い道もある。

観測の協力者を探すために、高知工科大学教授の村上雅博さんに相談すると、西内燦夫 を紹介していただいた。

7月20日の朝、西内さんはわざわざ西土佐まで私を乗用車で迎えにきてくれた。 四万十川沿いの道を下り、中村が近づき、佐田の沈下橋を案内してもらう(写真129.1、129.2)。

佐田の沈下橋
写真129.1 佐田の沈下橋。全長292m、幅員9mである。

沈下橋がにぎわう
写真129.2 観光客でにぎわう佐田の沈下橋。

佐田の沈下橋はテレビドラマ「遅咲きのヒマワリ」で放映されて、観光客が増えたと いう。四万十川に架かる多くの沈下橋の中で最長の292m、河口にもっとも近い沈下 橋である。

気温計は河口に設置するほか、中村アメダスに近い場所にも設置したい。具同小学校の 北東にある中村アメダスを見学したのち、適地を探すために案内していただく。

赤い鉄橋の四万十川橋付近の河川敷は緑地として整備されている。河川敷に降りていく 途中に気温計を設置する適地があった(写真129.3)。ここに気温計を設置するための許可 を得なければならないが、きょうは日曜日(7月20日)、西内燦夫さんに後日許可を とっていただく。

赤鉄橋
写真129.3 四万十川橋(通称:赤鉄橋)、川下から上流方向を撮影。 

この鉄橋から約10kmの距離にある河口へ向かう。下田漁港の前まで細長く延びる 中州の先端を見学。ここは海風が直接当たる場所で気温計を設置する適地である。

下田漁港は私の思い出の地である。記録をたどれば、12年半前の2002年2月1日 のこと。四国遍路の歩き旅で少々疲れがたまってきたので、現在の黒潮町の浮鞭 (うきぶち)海岸から国道を経て中村市街に行き、名所を観光、ひと休みする予定で あった。

ところが景色にみとれながら国道から離れ、松原大橋を渡り、遊歩道「名勝入野松原」 へと入っていった。砂浜に出てみると、足元には色とりどりの貝殻、弓状につながり 寄せる小波、立ち昇る冬の海霧、それを射す太陽光、西の空には下弦の月があった。 私は旅の疲れも忘れて、ここは「日本一の遊歩道」だと思った。ここから田野浦漁港を 経て11時には「下田の渡し場」に来ていた。12時に船頭さんが見えて、4.8トン の渡船で対岸まで渡った。冬であり乗船遍路は私ひとりであった 。

話を元にもどして、西内燦夫さんに案内されて、下田漁港を経て道崎の展望台に上る。 気温計設置場所の広範囲を観察する。四万十川河口から突き出た突堤によって土佐湾の 海水と河川水が仕切られている(写真129.4)。来月(2014年8月)に来たときは、 河川水温を 測ってみて海水温度との違いが小さければ、気温計は中州の先端に設置する。もし水温 差が大きければ、河川水が入り難い突堤の手前の適地に設置する予定である。

道崎の展望台から
写真129.4 道崎の展望台から見渡した四万十川河口。眼下は土佐湾(写真は横に2枚を合成)。 

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