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11.気象観測と住民の協力 =近藤純正=

この短文は、2007年5月25日付高知新聞朝刊の
『所感・雑感』に掲載された内容と同じです。

高知の気象観測は、高知市南比島町にある高知地方気 象台の観測場(露場)で行われている。終戦後、観測 露場の周りに住宅が建つようになり、年平均気温が 1℃ほど上昇した。

最近、高知駅周辺都市整備事業の一環として、観測露 場の周辺は新しい住宅団地と江ノ口東公園として整備 され、幹線道路のはりまや町一宮線も25~27mほどに 拡幅・舗装された。この都市整備により、高知は室戸 岬などに比べ、年平均気温がさらに0.3℃ほど上昇し た。これは都市気候と呼ばれる現象である。

高知は西寄りの風が多いのだが、露場西側に造られた 子供用サッカー練習場に背の高いフェンスが張られ、 蔓が植栽された。蔓が繁ると、風が遮られ露場の平均 気温の上昇が予想される。練習所で遊ぶ子供たちを見 守る上でも邪魔になると思われた。

観測は高知市周辺を代表する大気の状態を監視し、防 災目的のために行うものであり、蔓の繁茂に影響を受 けないことが望ましい。このことを一昨年(2005年) 12月に気象庁で話したところ、気象庁から高知地方気 象台を経て高知市役所へと伝えられ、蔓は移植された。 素早い対応に感謝したい。

都市気温の上昇は、人工熱の増加、道路の舗装、緑地 の減少などによって生じる。これとは別に、大気中の 二酸化炭素など温室効果ガスの増加によって生じる気 温上昇が、いわゆる地球温暖化である。

これも気象観測所での監視が必要だ。日本にはアメダ ス(地域気象観測所)を含めると気象観測所は1,300 ヵ所ほどあるのだが、大部分は都市化などの影響を受 けている。

室戸岬測候所は周辺が自然のままで、台風監視のみな らず、気候変動の監視所である。北海道の寿都(すっ つ)測候所と三陸沿岸の宮古測候所も重要な監視所で ある。

昨年7月、宮古測候所を見学した。港を見下ろす丘に あり、露場の南東側にクルミの木があった。私は他所 における実例とともに、このクルミの木が観測の邪魔 になっていることを測候所長に伝えた。クルミは測候 所の敷地外にあり、住民のものなので勝手に伐採でき ない。所長は持ち主に気象観測の重要性を説き、許可 を得て、3月下旬に伐採することができた。

室戸岬測候所など3ヶ所では気候変動を監視するには 数が少なく、ほかに10ヵ所ほどの候補を探している。

その候補の一つ、岡山県の旧津山測候所(現在無人の 観測所)は丘の上にあり環境はよいのだが、40年ほど 前には毎月の最大風速は西ないし北西の風で毎秒10 ~17mだったが、最近は風向も変わり6~9mと半減し ている。これは防災上からも問題があるので、去る5 月14日に津山の観測所を訪ねた。

観測所の近くには畑があり住宅はない。西側には吉井 川の支流を挟んで津山城が見える。観測所をひと回り する道路は桜並木となり、樹高は約10m。このうち10 本余が風を遮り、風速や気温などに影響していること がわかった。

翌日津山市役所で調べてもらったところ、桜並木は市 民による植樹だという。市の危機管理室長の計らいで 翌々日、植樹した方々の代表の連合町内会支部長に現 場に立ち会っていただき、桜並木が気象観測や気候変 動監視に影響していることを説明した。樹高を5m以 下にすれば、影響は小さくなりそうだ。

後日、市民、市、国のいずれが管理するとしても、気 象観測と桜並木が両立するような結果になることを祈 りながら、私は帰途についた。

追記:桜並木の伐採剪定のその後
2007年5月30日に津山市連合町内会城東支部の会合があり、 高原恭二支部長から「桜並木の生長が気象観測の邪魔に なっており、樹高が低くなるように伐採剪定してよいか」 について協議していただいた。

その結果、伐採剪定はよい、ということになった。ただし、 あとで桜が枯れないように伐採剪定は季節を選んで行って 欲しいとのことである。

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