A53.宮古観測所の観測機器

著者:近藤純正
岩手県三陸沿岸に設置されている宮古特別地域観測所の観測機器についての説明である。 (完成:2011年5月20日)

本ホームページに掲載の内容は著作物であるので、 引用・利用に際しては”近藤純正ホームページ”からの引用であることを 明記のこと。

これは2011年5月27日の見学会の参加者に配布する資料である。ほかの資料 「A54. 宮古特別地域気象観測所」も配布する。


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宮古特別地域気象観測所(旧宮古測候所、略称:宮古観測所)は北緯39度38.8分、東経141度57.9分、 標高43mにある。

気象観測機器は時代により測定の原理と種類が変更されてきた。現在使用されている観測機器は 次の通りである(気象庁ホームページをもとに作成、盛岡地方気象台により確認)。

気温:
電気式温度計(白金抵抗温度センサ)で観測する。温度に対する白金の電気的な 抵抗値の変化を測定することで気温を測る。

気温や湿度を測定するには、日射や風雨の影響を受けないように温度・湿度センサを通風筒の内部 に設置している。通風筒は二重の円筒となり、その間に断熱材を入れて日射や反射光が直接センサに 当たらないようにした構造で、常にファンにより通風(約5m/s)している。

湿度:
電気式湿度計で測る。高分子膜湿度センサが使用されている。相対湿度の変化に 応じて高分子膜に含まれる水分の量が変化し、これにより誘電率が変化することから相対湿度を測る。

雨量:
転倒ます型雨量計で測る。口径20cmの「受水器」に入った降水(雨や雪など)を 「濾水器(ろすいき)」で受け、転倒ますに注ぐ。転倒ますは2つの「ます」がシーソーのような 構造になっており、降水量0.5mmに相当する雨水が「ます」に貯まると反対方向に転倒して水を下に 排出する。その転倒数を計測することによって「降水量」を知ることができる。

積雪の深さ:
積雪計は地面から2~4mの高さに送受波器を設置し、送受波器から雪面まで の距離を測定することによって「積雪の深さ」を測る。雪面までの距離を測定する方式として、 超音波式と光電式がある。光電式は送受波器と雪面までの距離をレーザー光が雪面に反射して戻って くるまでの時間を計測して求める。

超音波式は超音波が雪面で反射して送受波器に戻るまでの時間を 計測し、温度による音速補正を行い、送受波器から雪面までの距離を求める。宮古観測所では 超音波式積雪計が使用されている。

視程:
視程計は,通常,光を出す投光部とそれを受ける受光部からなり、投光した光が大気 で散乱される量を計測することによって視程を測る。前方散乱方式では、投光部から空間に光を 投射し,その斜め前方で光源からの直射ビームを避けた位置に設置した受光部で霧粒や雪片など からの散乱光(前方散乱)を検出し,その散乱強度から視程がわかるようになっている。

気圧:
薄い金属製の円筒の中を真空にし,あるいは水晶を用い,これに強制的に振動を 与えるとその振動数が圧力によって変化することを利用した気圧計のほか,単結晶シリコンなどの 弾性体で作った真空の空間容積が気圧によって変化する気圧計などがある。

気圧は電気的な振動数(周波数)の変化によって検出する「振動式気圧計」と、静電容量の変化に よって検出する「電気式気圧計」がある。宮古観測所では後者の電気式気圧計が使用されている。

風向風速:
風車型(プロペラ型)風向風速計で観測する。風車型風向風速計は流線型をした 胴体に垂直尾翼と4枚羽根のプロペラが取り付けられている。垂直尾翼により風が吹くとプロペラが 風上に向くようになっており、胴体の向きから風向が、プロペラの回転数から風速がわかる仕組みに なっている。

日照時間:
太陽追尾式日照計で観測する。太陽を追尾することにより直達光を取り入れ、 規定値以上の光の強さがあれば日照ありと判断する。日照計感部は常に太陽に向き合うように、 太陽が出ているときはサンセンサーで、太陽が出ていないときはコンピュータ制御で太陽を追尾する。

風向風速の鉛直分布:
ウインドプロファイラによって観測する。ウィンドプロファイラは、 地上から上空に向けて電波を発射し、大気中の風の乱れなどによって散乱され戻ってくる電波を 受信・処理することで、上空の風向風速を測定する。地上に戻ってきた電波は、散乱した大気の 流れに応じて周波数が変化しているので(ドップラー効果という)、発射した電波の周波数と受信 した電波の周波数の違いから風の動きがわかる仕組みになっている。上空の5方向に電波を発射する ことで、風の立体的な流れがわかる。

ウィンドプロファイラは、2001年4月から運用を開始し、留萌、帯広、室蘭、宮古、酒田、高田、 水戸など全国に31か所設置されている。



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