A51.室戸岬の気象

著者:近藤純正
室戸岬は1934年(昭和9年)9月21日に上陸した「室戸台風」、1961年(昭和36年)9月16日に上陸した 「第2室戸台風」で知られている。高知県東部にある室戸岬の特徴は、(1)自然環境がほとんど変化 していない、(2)風雨が強い、(3)気温変化の幅が小さい、(4)冬日が少ない、(5)降雪日 が少ないことである。 (完成:2011年2月22日)

本ホームページに掲載の内容は著作物であるので、 引用・利用に際しては”近藤純正ホームページ”からの引用であることを 明記のこと。

この章は、室戸では室戸岬の気象に適した生活・産業・建築様式があることを改めて認識する ために著したものである。なお、室戸岬気象観測所が地球温暖化監視の上で重要なことは、 「A52. 室戸岬気象観測所」(観光案内用の短文)に掲載して ある。


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	     目次
		はじめに
		65.1 自然環境がほとんど変化していない
		65.2 風雨が強い気候
		65.3 気温変化の幅が小さい気候
		65.4 少ない降雪

		65.5 冬日が少ない暖地
		66.6 海上の風速       
		67.7 室戸岬と海上ブイの風速の比較
		68.8 海水温度と気温の関係


はじめに

室戸岬は高知県東部、太平洋に向かって突き出た岬である。岬の西側に土佐湾、東側に紀伊水道、 南には暖流「黒潮」が流れている。そのため、南洋で発生した台風が最盛期の勢力をほぼ保ったまま 襲来することがあり、いわゆる台風銀座と呼ばれている。また、前線や低気圧が近くを通る頻度も 高く、強雨が斜めから降ってくる。こうした気象に備えた建築物がつくられている。

岬の気象学的な特徴は、①自然環境がほとんど変化していない、②風雨が強い、③気温変化の幅が 小さい、④冬日が少ない、⑤降雪日が少ないことである。

室戸岬観測所(旧室戸岬測候所、現在は無人となり室戸岬特別地域気象観測所と改称)は、 北緯33度15.1分、東経134度10.6分、標高185mにある。風速計の地上からの高さは41.8mで あったが、風速計のみ2006年に室戸岬灯台の北側、標高約150mの場所に建つ鉄塔の地上21.8mの 高さに移設された。灯台は観測所の南南西方向に約580m離れている。風速計の移設により、 2007年以後の年平均風速は従来の値の約86%になった。

65.1 自然環境がほとんど変化していない

日本の気象観測所のほとんどは、周辺が都市化されて都市独特の気候が顕著に表れるようになった。 室戸岬観測所は昔から周辺の環境がほとんど変わらず、広い地域を代表する気象を観測できる。 したがって、地球温暖化など地球規模の気候変化を観測できる数少ない観測所の一つである。 このような観測所は日本には3か所(北海道寿都、岩手県宮古、高知県室戸岬)しか残っていない。 この3か所のうち、室戸岬は最良の環境にある。

高知や東京などにおける都市化の影響をみるために、1921年以後30年間と1980年以後30年間の平均 気温(℃)と、それら期間における気温上昇量(℃)を次の表1に比較した。都市の気象台 (高知、徳島、大阪、東京)において30年間の平均気温が過去60年間に1℃以上も上昇したのに 比べて、室戸岬ではわずか0.5℃しか上昇していない。この0.5℃は地球規模で生じている気候変化 (地球温暖化量)を表す値である。

地球温暖化は世界中の大きな問題になっており、正確な値を知ることが重要となっている。 その目的のために、周辺の環境が悪化しないように、室戸岬観測所を大事に守っていかねばならない。

表65.1  室戸岬と主な都市における1921年以後30年間と1980年以後30年間の平均気温(℃)と、 それら期間における気温上昇量(℃)の比較(気象庁資料から作成)
                室戸岬	高知	徳島	大阪	東京
1921~1950年	16.1	15.6	15.2	15.3	14.4
1980~2009年	16.6	16.9	16.9	16.8	16.2
 気温上昇量	 0.5	 1.3	 1.7	 1.5	 1.8


65.2 風雨が強い気候

室戸岬は風雨が強い所である。次の表65.2~表65.4に、気象庁の観測所における歴代全国ランキングを 示した。室戸岬では、最大1時間降水量、最大風速、最大瞬間風速が5位以内に入っている。

表65.2 最大1時間降水量の歴代全国ランキング(気象庁資料から作成)
順位	都道府県 観測所	    mm	  起日	         備  考
1	千葉県	香取	     153	1999年10月27日	
2	長崎県	長浦岳	     153	1982年7月23日	
3	高知県	清水*	     150.0	1944年10月17日	
4	高知県	室戸岬*     149.0	2008年11月26日	 前線に湿潤空気の流入
5	福岡県	前原	     147	1991年9月14日	


表65.3 最大風速の歴代全国ランキング(気象庁資料から作成)
順位	都道府県 観測所	        m/s	風向	  起日	        備  考
1	静岡県	富士山*	72.5	西南西	1942年4月5日	
2	高知県	室戸岬*	69.8	西南西	1965年9月10日	昭40年台風23号
3	高知県	室戸岬*	66.7	西南西	1961年9月16日	第2室戸台風
4	沖縄県	宮古島*	60.8	北東	1965年9月5日	第2宮古島台風
5	長崎県	雲仙岳*	60.0	東南東	1942年8月27日	台風


表65.4 最大瞬間風速の歴代全国ランキング(気象庁資料から作成)
順位	都道府県 観測所	        m/s	風向	  起日	        備  考
1	静岡県	富士山*	91.0	南南西	1966年9月25日	
2	沖縄県	宮古島*	85.3	北東	1966年9月5日	第2宮古島台風
3	高知県	室戸岬*	84.5]	西南西	1961年9月16日	第2室戸台風
4	沖縄県	宮古島*	79.8	北東	1968年9月22日	第3宮古島台風
5	鹿児島県 名瀬*	        78.9	東南東	1970年8月13日	昭和45年台風9号

記号
* 気象官署(気象台と旧測候所)を表す。
] 資料不足値(器械の故障などにより資料数が欠けた場合)を表す。

室戸台風
1934年(昭和9年)9月21日午前5時ころに室戸岬付近に上陸した台風で、西日本を中心に大きな災害 がもたらされた。死者・行方不明3,036人、負傷者14,994人、被害住宅92,740戸、被害船舶27,594隻 である。

室戸岬上陸時の中心気圧は911.6ヘクトパスカル(ミリバール)であり、戦前の日本本土に上陸した 台風の中で上陸時の中心気圧が最も低い台風である。

室戸岬では最大瞬間風速60m/sを記録したのち器械が破損、正確な数値は不明である。室戸岬は本土 における台風観測の最前線、「台風銀座」として注目されることになった。

第2室戸台風
1961年(昭和36年)9月16日午前9時過ぎに室戸岬西方に上陸し、大阪湾沿岸に大きな被害を及ぼした。 被害は死者・不明202人、負傷4,972人、住宅499,444戸、船舶2,540隻。上陸時に、中心気圧925ヘクト パスカル、最大風速66.7m/s、最大瞬間風速84.5m/s以上の新記録を観測した。ただし、この記録は その後、1966年の第2宮古島台風にともなう最大瞬間風速85.3m/sによって更新された。

表65.5 陸上(気象官署)における中心気圧(ヘクトパスカル)が低い台風(気象庁資料から作成)
順位	都道府県 観測所	  中心気圧	  観測日	備 考
1	鹿児島県 沖永良部  907.3	1977年9月9日	沖永良部台風
2	沖縄県	宮古島	   908.1	1959年9月15日	宮古島台風
3	高知県	室戸岬	   911.6	1934年9月21日	室戸台風
4	沖縄県	宮古島	   912.0	2003年9月11日	平成15年台風14号
5	鹿児島県 枕崎	   916.3	1945年9月17日	枕崎台風


あとで示すように、室戸岬では年平均風速が7.7m/s、強風日数が年間258日もあり、全国的にみて 強風地点である。また、年平均降水量は2,358mmで日本の平均値1,800mmの1.3倍にあたる。室戸岬に 限らず、高知県では日降水量が30mm以上の強雨の日数が多いところである(日降水量が10mm以上、 50mm以上も同様に多い)。室戸岬では、降雨に強風が重なり、雨粒が斜め方向から降ってくる。

65.3 気温変化の幅が小さい気候

気候の平年値は通常、過去30年間の平均値で表す。気象庁による1971~2000年の平年値を用い、 毎日の最高気温と最低気温の平均値、および気温の日較差(毎日の最高気温と最低気温の差の平均値) について室戸岬と高知の比較を表65.6に示した。

室戸岬では年間を通して、気温の日較差は4~6℃程度であるのに対し、高知では7~10℃と約1.8倍も 大きい。

表65.6 室戸岬と高知における毎日の最高気温の月平均値と最低気温の月平均値(℃) (気象庁資料から作成)
	室    戸     岬	  	   高      知
        最高    最低  日較差    	最高	最低  日較差
1月	10.4	4.8	5.6		11.8	1.3	10.5
2月	10.7	4.7	6.0		12.4	2.1	10.3
3月	13.5	7.4	6.1		15.7	5.5	10.2
4月	17.8	12.2	5.6		20.6	10.5	10.1
5月	21.0	16.0	5.0		24.1	14.6	9.5
6月	23.5	19.3	4.2		26.7	19.1	7.6
7月	27.1	22.8	4.3		30.5	23.1	7.4
8月	28.5	23.9	4.6		31.6	23.6	8.0
9月	25.9	21.4	4.5		28.8	20.4	8.4
10月	21.6	17.0	4.6		24.2	14.3	9.9
11月	17.2	12.2	5.0		19.1	8.7	8.4
12月	12.7	7.4	5.3		14.2	3.3	8.9
年平均	19.2	14.1	5.1		21.6	12.2	9.4


表65.6によれば、8月の最高気温の平均は高知の31.6℃に対し、室戸では28.5℃で3.1℃も涼しい。 いっぽう、1月の最低気温の平均値は高知の1.3℃に対し、室戸では4.8℃で3.5℃も温かい。

このように、室戸岬は夏涼しく冬暖かく、また毎日の気温の日較差が小さい。その理由は、室戸岬は 北北東~東~南~西~北西の広い範囲が海に面しているからである。そのうえ、室戸岬観測所が標高 185mの高い場所にあり、地面付近で日中に形成される暖気や夜間に形成される冷気が溜まりにくい からである。

次の表65.7では、年平均気温、気温日較差、気温年較差、年降水量、年平均風速、年間の強風日数、 強雨日数、冬日の日数について比較した。

表65.7 室戸岬ほかの気象観測所における気候の平年値の一覧。
気温日較差は毎日の最高気温と 最低気温の差の年平均値、気温年較差は8月の平均気温と1月の平均気温の差、強風日数は日最大風速 が10m/s以上の年間の日数、強雨日数は日降水量が30mm以上の年間の日数、冬日は日最低気温が 氷点下になる年間の日数である(気象庁資料から作成)。
	        室戸岬	清水	高知	徳島	高松	大阪	京都	東京	仙台
年平均気温:℃	16.4	17.9	16.6	16.2	15.8	16.5	15.6	15.9	12.1
気温日較差:℃	5.1	5.6	9.4	7.6	8.7	7.8	9.0	7.2	7.7
気温年較差:℃	18.3	18.6	21.2	21.4	22.1	22.6	23.2	21.3	22.6
年降水量:mm	2358	2421	2627	1541	1124	1306	1545	1467	1242
平均風速:m/s	7.7	3.5	1.8	3.1	2.4	2.6	1.6	3.3	3.4
強風日数:日	258	36	1	19	11	35	1	26	62
強雨日数:日	24	25	27	13	8	11	14	13	11
降雪日数:日	3	7	7	13	15	15	31	9	65
冬日:日	4	3	27	12	30	10	27	10	77

(注1)風速は観測所ごとに風速計の地上からの高度が異なり、完全な比較はできない。
(注2)強風日数が年間に1日と極端に少ない高知と京都は都市化によって観測所の周辺にビルが 増えてきたことによる(他の都市でも同様に風速は弱まっている)。以前について統計してみると、 1961~1974年の期間の強風日数は高知では年間7日、京都では4日であった。ただし、風速計の種類と 設置高度は年代によって変更されているので厳密な比較はできない。
(注3)室戸岬観測所における風速計の地上からの高度は、この表に示された平年値が統計された 期間には41.8mであったが、2006年に風速計のみ室戸岬灯台の北側の鉄塔(標高161m)の地上から の高さ21.8mに移設され、年平均風速は86%に弱く観測されるようになった。したがって、表に示す 年平均風速の平年値は7.7m/s、強風日数は258日であるが、2007年以後の年平均風速は約6.6m/s、 強風日数は約200日とみなしてよい。
(注4)日本平均の年降水量約1800mmと比べると、室戸岬はその約1.3倍である。

65.4 少ない降雪

表65.7に示すように、室戸岬の降雪日数は年間3日であり、南西諸島を除くと、八丈島、静岡、宮崎と 並んで少ない所である。積雪の日数は年間平均1日未満である。室戸岬で降雪・積雪が少ないのは、 冬の季節風が吹いてくる北西~北の方向に標高の高い四国山脈があるからである。

65.5 冬日が少ない暖地

室戸岬は、表65.7に示すように冬日(冬の日最低気温が0.0℃未満の日)が少なく、年間に4日ほどしか ない暖地である。南西諸島を除けば、4日以下の少ない地点は清水、下関、潮岬、八丈島の4か所で ある。

そのため、海岸段丘上にあるやや平たんな地形にはビワの果樹園がある。ビワは温暖な気候で栽培 され、冬季に開花し、品質をよくするために3~4月に幼果を摘み取り(摘果)、初夏に実を結ぶ。 春先の寒さに弱い果物であるため、気象の特徴を利用した作物といえる。

65.6 海上の風速

海面は波や砕波(白波)があって完全な平らではないが、陸面上に比べて風に抵抗する障害物が ほとんどなく風が強い。風は地形や大気の条件(水温と気温の差など)によっても大きな影響を 受ける。ここでは概略的な特徴を知るために、最初に、地形が平たんで広い場所を吹く風について 説明する。

風速は地表面からの高さとともに増加するので、海面と陸面について高度5m、10m、20mの風速を 比較する。地表面の摩擦の影響を受けない上空約1~1.5kmの風速が20m/sの場合を表65.8に示した。 海上の風速は陸上の風速の1.5~2倍ほども強い。

表65.8 陸面上と海面上の風速(m/s)の目安、ただし上空1~1.5kmにおける風速が20m/sのとき
			高度5mの風速	高度10mの風速	高度20mの風速
陸上(平屋の住宅地)	 5.5 		 7 		 8.5 
陸上(草丈約10cmの畑) 9	        10		11
海上			13		14		15


風に及ぼす地形の影響は複雑である。一般に風が山を越えるにはエネルギーが要るので、風は山越え よりは迂回する傾向がある。そのため、岬の先端付近では、東よりの風、または西寄りの風のとき、 風速は強くなりやすい。

室戸岬では、西寄りの風のとき、土佐湾側では風が強く波も高くなるが、岬の東側では風は弱く、波も 高くならない。逆に東寄りの風のとき、岬の東側では風が強く波立つが、土佐湾側では比較的に静かで ある。

岬の地形の影響がどの範囲まで及ぶか。岬の標高は海岸段丘の上では南から北に進むにしたがって ゆるやかに高くなり、平均として標高200mとして考える。山越えの風は大気温度の上下差によって も大きく変わるが、ここでは平均的な場合を想定すると、山の標高の約10倍の距離の風下側まで弱風 域ができる。つまり、室戸岬周辺では、強風時でも約2kmの風下まで岬の遮蔽効果によって弱風域、 したがって波の弱い範囲ができる。

以上は一般的に言えることがらであり、実際には室戸岬周辺の海上で経験している漁業者たちの 経験を聞いてみることが重要となる。

65.7 室戸岬と海上ブイの風速の比較

土佐湾の室戸岬沖、高知沖、足摺岬沖には高知県海洋部によって設置された「黒潮牧場ブイ」があり、 1時間ごとの表面流向・流速、表面水温、風向・風速、波高・波向、周期が計測され、リアルタイムで 漁業者に提供されている。インターネットでは高知県が運営する「高知県漁海況ホームページ」の 「黒潮牧場ブイ情報」にて1時間ごとに、また過去のデータも見ることができる。

室戸岬沖の10号ブイは、室戸岬の真南26km、水深750mの位置に2003年3月26日に設置された。 このデータを用いて、室戸岬と海上ブイにおける風速を比較してみよう。

室戸岬観測所の風速計が2006年に現在地点(室戸岬灯台のすぐ北側)に移設されてから風速の観測値 は以前の値の約86%になったので、2007年~2009年の3年間の平均について比較する。次の表65.9は 10号ブイにおいて観測された水温・風速と、室戸岬で観測された気温・風速の月平均値である。

表65.9 室戸岬沖の10号ブイにおける水温・風速と室戸岬における気温・風速(2007年~2009年、 3年間平均値)(気象庁および高知県漁海況ホームページの資料より作成)
      ブイ水温	     室戸岬気温	     ブイ風速	    室戸岬風速
         ℃		℃		m/s		m/s
1月	20.2		8.1		7.7		7.4
2月	18.9		8.9		6.9		7.2
3月	19.1		11.3		6.7		7.4
4月	19.8		15.1		4.6		6.1
5月	22.4		18.6		5.5		6.7
6月	24.1		21.5		4.9		6.1
7月	26.6		24.8		4.6		5.8
8月	28.8		26.3		5.1		5.9
9月	27.9		24.4		5.8		5.9
10月	26.3		19.9		6.7		6.5
11月	23.9		14.8		6.3		6.9
12月	21.5		10.6		7.0		7.0
年平均	23.3		17.0		6.0		6.6


風速については、ブイと室戸岬では平均的にほとんど同じとみてよい。室戸岬は測風塔の周辺が 森林で覆われて風速が弱められるかわりに、地形的には岬の先端付近にあって迂回流によって強め られる効果がある。さらに風速計の地上からの高さ(21.8m)がブイよりも高く風速が大きく観測 される。これらの効果が重なりあって、平均的にブイと室戸岬の風速はほとんど同じになっている。

漁業者たちは、毎時観測されている室戸岬の風速やブイの風速を見て沖合に出漁しているだろうか? 海面を眺めて波の状態から海上風と波高を推定し、出漁することが多いのではなかろうか。 風速計による観測値は1地点における風速であるのに対し、海面状態はやや広い海面上の風速を 目視するものである。熟練者になると目視による精度は高く、十分に実用に役立つ。

風速、ブイと室戸岬の比較
図65.1 室戸岬の風速とブイで観測した風速の季節変化

風速計が発明される以前から人々は海で働いていた。海面状態と海上風速の関係がビューフォート 風力階級表としてつくられている。

表65.10 気象庁風力階級表(ビューフォート風力階級表)、海上における状態。風速は高度10mに おける値
風力   海  上  に  お  け  る  状  態		  風速(m/s)	和名
階級
 0	鏡のような海面					    0.0~0.2	静穏
 1	うろこのようなさざ波ができるが、波頭に泡はない	    0.3~1.5	至軽風
 2	小波の小さいもので、まだ短いがはっきりしてくる。
        波頭はなめらかに見え、砕けていない		    1.6~3.3	軽風
 3	小波の大きいもの、波頭は砕け始める。泡はガラス
	のように見える。ところどころに白波が見えること
	がある						    3.4~5.4	軟風
 4	波の小さなもので、長くなる。白波がかなり多くなる    5.5~7.9	和風
 5	波の中ぐらいのもので、いっそうはっきりして長くなる。
	白波が多く現れ、しぶきを生じることもある	    8.0~10.7	疾風
 6	波の大きいものができ始め、至るところで白く泡立った
	波頭の範囲がいっそう広くなり、しぶきを生じることも  10.8~13.8	雄風
 7	波はますます大きくなり、波頭が砕けてできた白い泡が
	筋を引いて風下に吹き流され始める		    13.9~17.1	強風
 8	大波のやや小さいもので長さが長くなる。波頭の端は
	砕けて水煙となり始める。泡は明瞭な筋を引いて流れる  17.2~20.7	疾強風
 9	大波。泡は濃い筋を引いて流れる。波頭はのめり、
	崩れ落ち、逆巻き始める。しぶきで視程が損なわれる
	ことも						    20.8~24.4	大強風
 10	波頭が長くのしかかり非常に高い大波。大きな塊となっ
	た泡は濃い白い筋を引く。波の崩れは激しく衝撃的に  24.5~28.4	暴風
 11	山のように高い大波。海面は長い白い泡の塊で完全に
	覆われ、到る所で波頭の端が吹き飛ばされて水煙となる 28.5~32.6	列風
 12	大気は、泡としぶきが充満する。海面は、吹き飛ぶ
	しぶきで完全に白くなる。視程は著しく損なわれる	  32.7以上	


65.8 海水温度と気温の関係

前掲の表65.9に示した資料から、こんどは海水温度と気温の関係をみてみよう。

ブイの水温は室戸岬 の気温よりも高いことがわかる。室戸岬の気温は標高185mで観測されており、標高ゼロの平地より も約1℃低めに観測されていることを考慮しても、黒潮の影響により水温は年間を通して気温よりも 高い。夏季の6~8月の水温・気温差は2℃前後であるのに対し、冬季の12~2月は11℃前後の差で ある。

ブイ水温と室戸岬気温の比較
図65.2 室戸岬の気温とブイで観測された水温の季節変化

以上が室戸岬の気象についてのまとめである。室戸の人々の参考になれば幸いである。



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