深浦観測所の周辺環境を守ろう(平成21年11月14日)

深浦の史跡公園「御仮屋」に設置された深浦観測所は、南側に伸びた笹などの 影響を除けば、昔から変化が少なく理想に近い環境にあり、全国的にみて 日本海側では日本一の観測所である。ここなら地球温暖化の実態を正しく 監視することができる。これは筆者が全国を6年もかけて巡回して確信した ことである。

昭和15(1940)年、深浦岡町の「御仮屋」に測候所が創設された。以前、 笹は現在のように茂っていなく、ここから眼下に港が見えるほどであった と聞く。近年は笹の利用がなく刈取りが行われず、笹は3mほどに伸び 密集し、松なども成長し風をさえぎり気象観測に影響を及ぼすようになって きた。

 年平均風速は3分の2に減少し、秒速10m以上の強風日数は年間約100日 から13日ほどに減少した。これは防災上からも問題である。気温を測る 露場も風が弱まり、日だまりの傾向となり、また逆に日陰も生じ気温が 正常に測れなくなった。この誤差は僅かではあるが、100年間当りの地球 温暖化量の約0.7℃に比べて無視できない誤差となる。

深浦観測所は創設から今年で70年目になる。現在は無人化されたが、 長期にわたる正確な観測を今後も続けていかねばならぬ。そのために、 住民の皆様に観測の重要性についてご理解をいただきたい。

 いま地球温暖化が大きな社会問題となっている。しかし、これを観測する 観測所の多くは、周辺が都市化されるなど環境が悪化し、気候監視が危うく なってきている。気象庁は予算と人員の削減により観測所の管理が不十分に なっている。このことを筆者は世に訴え、住民の理解と協力によって観測 環境を守る活動を続けている。

 深浦観測所の周辺環境の問題は、筆者が深浦を最初に訪問した2年前から インターネットや新聞、各地での講演会を通して公表してきた。

笹刈りや乱雑に伸びた木の枝の剪定をしていただきたい。さらに密集して 植樹された桜については間引き、あるいは坂下の道路脇にでも移植できな いだろうか。史跡公園「御仮屋」の美観上からも望ましい。これは深浦町民 に受け入れてもらえないだろうか。

参考:
岡山県内陸の津山観測所では、周辺は昔からほとんど変化がなく内陸では 日本一の環境に恵まれた所であるが、40年ほど前に植樹された桜20本ほどが 成長し、気象観測の邪魔をするようになった。岡山地方気象台が桜は観測に 影響していないと主張していたが、筆者が何度も津山を訪問し、実際の観測 資料によって説明した結果、地元市長はじめ住民に理解されて桜20本ほどが 伐採され環境整備が進むことになった。

近藤純正(東北大学名誉教授)
〒254-0054神奈川県平塚市中里49-6


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