深浦町長へのお願い 平成19年(2007年)7月12日
近藤純正(東北大学名誉教授)
深浦町長・西崎 哲 様
現在、私は全国各地の気象観測所(気象台、旧測候所など)を視察し、
防災気象に関係する気象観測や地球温暖化など気候変化の監視が正しく
行われているかどうか、その周辺環境が観測結果に及ぼす影響を調べており
ます。
その結果について、私は気象庁、各地気象台に報告し、環境整備に役立てて
いただいております。
多くの気象台は都市の中にあり、都市化の影響を受けており、また田舎の
観測所でも周辺環境が大きく変化し、地球温暖化などの実態把握が困難に
なってきています。
日本には、周辺環境が比較的よい観測所は北海道寿都、三陸の宮古、四国の
室戸岬、それに深浦など数か所しか残されていません。
深浦は北日本の日本海沿岸の代表地点であるにもかかわらず、無人化されて
しまいました。聞くところによれば、故人となられた前町長は深浦測候所の
廃止に強く反対されたと伺っております。
無人化後の深浦でも気象観測は続けられていますが、観測資料に異常が
見られるので私は、その原因を知るために去る3月28日に観測所周辺の
環境変化を視察してまいりました。
観測環境を保っていくためには、気象台だけでなく、地元住民・役場の
ご理解がどうしても必要だと考えております。そのため、説明資料を持参して
来る7月20日(金)の10時ころ貴役場に訪問し、財政企画課で説明させて
いただけることになりました。この旨を町長にもお伝えいたします。
説明資料の要約(7月20日訪問時の説明会の概要):
深浦は青森県のみならず、北日本の日本海側の気象・気候変動を監視
するうえで重要な観測所です。災害をもたらすような強風と温暖化など
気候変動の監視所として重要な所です。
(その1) たとえば、台風によって津軽平野のりんごが被害を受け、漁船が
遭難するような強風を正しく観測する必要があります。
深浦は陸側の山がほぼ南北にあることから、本来は南西~南南西の強風
が観測されるのですが、最近では南~南西にある松の成長によって、これらの
強風は希にしか観測されなくなりました。
深浦の測風塔は、新しく建て替えられますが、公園の由緒ある松などの影響
を受けることのない場所に設置しなければなりません(ただし、風向風速計
のみ)。このことを深浦町にも理解していただくお願いいたします。
来る7月20日には、他の観測所の例を写真や図で示します。去る7月4日、
私は青森地方気象台を訪問し、この問題について談話会をしてきました。
(その2) 全国各地で調査した結果、都市化の影響を受けていない観測所は
めったになく、深浦は寿都、宮古、室戸岬などとともに数少ない重要な
観測所の一つです。
このことを深浦町役場と住民の皆様にご説明し、観測所の周辺環境の維持に
ご理解とご支援をいただきたくお願いしたいと思います。