K230 東京都心部の森林蒸発散量は100年に約38%増加


著者:近藤純正
東京都心域にある自然教育園の自然林の蒸発散量は874 mm/yであり(2010~2014年の 気象環境に基づく規準値)、同じ状態の森林があるとすれば100年前は633mm/y と推定され、100年間に38%(241mm/y)増加したことになる。 気温や湿度など観測の方法・測器は時代によって変更され、昔の水蒸気量(湿度) の観測には年平均値で2~3%の誤差があり、増加率38%には約5%の誤差を含む。 10年間平均の年降水量(約1660mm/y)は長期にわたりほぼ一定で、 昔の水資源量1035mm/y(湧水など利用可能な水=降水量-蒸発散量) は現在では781mm/y となり、25%減少している。水資源量の減少は、 地球温暖化に加えて都市昇温・乾燥化によるものである。

本稿では、森林蒸発散量が入力放射量・気温・水蒸気量・風速などの変化で 増減することを熱収支式の解から調べた。年蒸発散量は、入力放射量の年平均値R↓ =461W/m2(2010~2014年の気象環境に基づく規準値) の10%増加で18%の増加、年平均気温T=16.6℃(2010~2014年の気象環境に基づく 規準値)の1℃上昇で11%の増加、年平均水蒸気圧e=13.7hPa (2010~2014年の気象環境に基づく規準値)の7%減少でほぼ同じ10%の増加となる。 また、晴天日の日平均蒸散量は高度35mの風速が2倍になれば10~20%の増加となる。 (完成:2023年5月30日)

本ホームページに掲載の内容は著作物である。 内容(新しい結果や方法、アイデアなど)の参考・利用 に際しては”近藤純正ホームページ”からの引用であることを明記のこと。

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更新の記録
2023年5月20日:素原稿

    目次
        1 まえがき
        2 都市化による気温と水蒸気量の変化
        3 計算方法
        4 熱収支量の季節変化、観測との比較
         4.1 晴天日中の月蒸散量の季節変化
         4.2 降水日も含む月蒸発散量の季節変化
        5 都市昇温・乾燥化による年蒸発散量の変化
         5.1 過去50年間の変化
         5.2 過去100年間の変化
        6 蒸発散量の気象要素に対する敏感度
         6.1 入力放射量10%の増加に対する敏感度
         6.2 気温1℃の上昇に対する敏感度
         6.3 水蒸気圧7%の減少に対する敏感度
         6.4 気温1℃上昇と水蒸気圧7%減少のときの熱収支量
        まとめ
        文献
        付録
          付録1 2010~2015年の晴天日中10~15時の熱収支量などの一覧表(表5)
          付録2 気温と水蒸気圧が同時に変わったときの熱収支量の季節変化(図10)
          付録3 晴天日の蒸散量の風速に対する敏感度(図11,図12)          


謝辞
本稿の原稿は都立大学の松山 洋教授と森林総合研究所の清水貴範博士に査読していただいた。 ここに深く感謝いたします。


1 まえがき

暖候期(5~8月)の森林蒸発散量は、疎林と密林での違いは約10~20%程度と 小さいが、地域による平均気温の10℃の差で約60%増加する。 これはシベリアのタイガ林(葉面積指数:LAI=0.4)、富士北麓の標高1100mにある カラマツ人工林(LAI=2.4~2.8)、熊本県山鹿市の鹿北試験地のスギ人工林 (LAI=4.1~5.2)、および日本の低標高の森林(LAI≒6)での結果であり、 熱収支計算によって確認することができた(近藤、2023a)。
「K229.森林蒸発散量の葉面積指数への依存度は低い」

森林の伐採、山火事、松枯れなどによって植生が変化したとき、 年蒸発散量は樹齢10年の森林では11%増加し、また松枯れ後の低木・下草の 森林蒸発散量は5%減少する。その結果として、植生の差で年蒸発散量には 16%ほどの違いが生じる(近藤、2023a)。これは、上記の結果と矛盾しない。
「K229.森林蒸発散量の葉面積指数への依存度は低い」

大都市では都市昇温・乾燥化が起きており、それが森林蒸発散量に影響すると 考えられる。1920年を基準としたときの2020年の気温は、大都市 (東京、横浜、名古屋、京都、広島、福岡)では地球温暖化による影響(1℃) の上昇に加えて都市化による影響(1.5℃前後の上昇)により、 合計2.5℃前後上昇している。また、特に東京では合計3.0℃の昇温が生じている (近藤、2023b)。大気中の水蒸気量も増えているが気温上昇ほどではないため 東京の相対湿度は約10%低くなってきている。そのため、蒸発散量は増加する ことになる。

古い時代には、東京の各地で湧水が生活用水として利用されていた。例えば、 調布市の深大寺や国分寺市の武蔵国分寺は古多摩川の流れが削ってできた河岸段丘 「国分寺崖線」があり、その下から流れ出る湧き水がある。 段丘の上(北側)には森が広がっており、そこに貯えられた地下水が 湧き出たものである。明治神宮の御苑内に湧き水「清正井」がある。説明板には、 「江戸時代の初期に下屋敷を構えていた加藤清正が掘ったと伝えられており、 一年中絶えることなく湧き出る清水は・・・・」と記されている。

最近の2017年夏に清正井は水涸れした。また2021年3月に深大寺の延命観音下の 湧き水が水涸れした。深大寺門前町の水車は古くから湧水によって動いていたが、 近年は湧水の減少により電動ポンプで汲み上げられた水を利用して観光用に 動いていた(ごく最近は、水車の一部が破損して停止している)。 これら水涸れの原因として、水源域の地表・水みちの人為的改変などによる影響に 加えて都市昇温・乾燥化も影響していると考えられる。すなわち、 都市昇温・乾燥化による蒸発散量が増加した結果、地中に貯えられる 水量の減少により水涸れが生じたのではなかろうか?

本稿では、東京の都市昇温・乾燥化が森林蒸発散量をいくら増加させるかについて 熱収支式を用いて検討する。具体的には、森林群落の熱収支式を解き、 気温と水蒸気量と放射量が気候変化したとき、蒸発散量がどの程度変わるかを 比較する。これは単に都市における問題に限らない。 島としては世界で3番目の面積をもつボルネオ島では、 熱帯林の農地化のために広大な面積が伐採され、それに大規模場循環の変化も重なり、 年降水量が50年間に約20%も減少している(Kumagai et al., 2013)。 蒸発散量の変化には様々な原因があり、本稿ではその中の気温や水蒸気量の 気候変化による影響を調べるものである。

参考(予備知識)
(1)樹冠上の気温は地上気温より低温
東京都港区白金台にある自然教育園の自然林(樹冠の平均高度=14m)において、 観測塔の高度19mで観測した6~8月の気温は都市ビル街の旧大手町観測露場の気温 (高度1.5m)に比べてわずかに低温である。 曇天・雨天を含む全期間82日間について、高度19mの気温は大手町に比べて 0.66℃(日平均)、0.47℃(2~5時の平均)、0.81℃(12~15時の平均) の低温である。晴天日は、これらと大きく違わず、0.77℃(日平均)、 0.61℃(2~5時の平均)、0.73℃(12~15時の平均)の低温である。
「K125. 自然教育園の林内気温、3~10月」

(2)顕熱・潜熱輸送量を表わす樹冠葉面層の有効温度Teと放射温度Trの違い
樹冠層上面の数m上で観測される顕熱・潜熱輸送量を表わす有効温度Teは、 樹冠の上で測った上向きの長波放射量(Lu=σTr4) で定義される放射温度Trと異なる。ここにσはステファン・ボルツマン定数である。 一般に、TrがTeと異なるのは、日中なら放射計では太陽光が当たっている葉面と そうでない葉面や、森林の上部・下部、さらに林床面の温度の平均値を測定しており、 この温度が顕熱・潜熱輸送量を表わすTeを代表するとは限らない。 つまり、森林など植生地は水面や裸地面などと違って地表面温度の定義が複雑である。 そのため、Trではなく熱収支式を満たす地表面温度を有効温度として用いる (近藤、1994、9.4.5節を参照)。
水平面から下側の全立体角からの放射量を測る通常の放射計ではなく、 例えば視野角2°の放射計を下に向けて測った放射温度計では、日中の水稲群落については 天頂角70°で測った放射温度が群落の顕熱・潜熱輸送量の代表温度(有効温度Te) である。通常の放射計では、低温に観測される(近藤、2000、7.4.1節を参照)。

(3)乱流フラックスを表わすパラメータは一定ではない
例えば30分間の地表面温度や風速・気温・水蒸気量の平均値が同じ条件であっても、 乱流フラックス(運動量輸送量、顕熱・潜熱輸送量)は同じ値にならず、 各観測が30分間の場合、バラツキは5%程度ある。これは乱流の性質である。つまり、 カルマン定数・熱交換速度・蒸発効率などは 同じ気象要件であっても厳密には一定ではない。そのほか、完全な測器はないため、 乱流フラックスには観測誤差も含まれる。そのため、 これらパラメータは気象要素の平均値が似た条件について多数の観測データから 平均的な値を決めている。蒸発効率βの場合、 晴天日中の数時間平均として得られたβ値を日平均あるいは月平均の熱収支式の計算に 使用しても、比較的に高い精度で日平均フラックスが得られる (「K123.東京都心部の森林(自然教育園) における熱収支解析」の表123.3を参照」)。

(4)葉面温度が気温に比べて数℃以上の高温となる晴天微風時の交換速度
後掲の式(9)で示すように顕熱の交換速度 k は、風速 U の関数(強制対流の効果) であるのと同時に、葉面温度と気温の差(Ts-T)が数℃以上となる晴天微風時には (Ts-T)の関数(自然対流の効果)となる。例えば、U=0、葉面の大きさ=0.02m、 (Ts-T)=10℃(または3℃)のとき自然対流の効果による交換速度は k=0.0075m/s (または0.0058m/s)となり(近藤、1982、p.73を参照)、後掲の式(9) の右辺第1項に相当する。なお、熱収支式による計算から得られる(Ts-T)と 熱収支量の大きさに対する k 依存度は小さいので、用いる k 値は近似値でよい。


2 都市化による気温と水蒸気量の変化

気象観測では、測器・観測・統計方法が時代によって変更されてきたため、 長期的な気候変化を正確に知ることは難しい。しかし、日本の気温については、 測器・統計方法および観測所環境の変化にともなって生じる都市化による昇温や 「日だまり効果」などを補正することによって、ほぼ正しい気温変化を知ることが できている(近藤、2012;2020;2022)。
「K209.猛暑日・熱帯夜と都市化・地球温暖化との関係」
「K225.日本の地球温暖化、再解析2022」

湿度については、昔の観測方法では、棒状温度計の球部に濡れたガーゼをまいた 湿球温度計と乾球温度計(非通風式の乾湿計)の温度差から湿度を求めていた。 日本の気象庁では1950年1月から1970年代まで乾湿計の受感部に吸引した外気を 当てる「アスマン通風乾湿計」が使われるようになった。 そうして湿度を求めるときの「乾湿計定数」が変わった。 この変更による湿度のズレがあり、その補正は複雑である(Kondo, 1967)。 1971年以降は順次、地上気象観測装置が導入され、おおむね15年ごとに 測器は更新されている。1996年3月以降は順次、現在の電気式湿度計(静電容量式) が使われるようになった。

東京の気象観測地点は移転を繰り返しており、1964年には大手町のお堀端から 気象庁旧敷地内(現在のKKRホテル東京の東側)へ、 2014年12月2日には旧敷地内から北の丸公園の森林内の風通しの悪い場所へ移転した。 これら移転にともない水蒸気量(相対湿度)の観測値が不連続になっている。

図1はデータに不連続のない1965~2013年の約50年間の気象庁旧敷地内における 年平均気温と年平均水蒸気圧の経年変化である。地球温度化と都市化による 気温上昇が加わり、気温は0.035℃/y=1.7℃/50yの割合で上昇している。 水蒸気圧は0.011hPa/y =0.55hPa/50yの割合、したがって(増加量/年平均値)= (0.55hPa/13hPa)=1.04、すなわち4%/50yの割合で上昇している。

水蒸気圧の経年変化
図1 東京大手町の気象庁旧敷地内における年平均の気温と水蒸気圧の経年変化、 1965~2013年。


後掲の5.1節「過去50年間の変化」では、これら上昇率(0.035℃/y=1.7℃/50yと 0.55hPa/50y=4%/50y)を用いて50年間の蒸発散量の増加率を計算する。 5.2節「過去100年間の変化」では、湿度観測において平均として相対湿度に 2~3%の誤差を含むので、観測値を参考にして水蒸気量の推定値を用いて計算する。 水蒸気量の観測誤差を含むことで年蒸発散量の100年間の増加率38%/100y(後述) には5%程度の誤差を含むことになる。


3 計算方法

注1:群落としての熱収支
前報では1枚の葉面について熱収支の計算を行なった(近藤、2023a)。
「K229.森林蒸発散量の葉面積指数への依存度は低い」

本稿では森林群落の1層モデルを用いる。すなわち、1層の上面(樹冠の上) では放射、顕熱、潜熱の交換が行なわれ、下面では林内・林床に向かう熱輸送量 Gがあるとする。晴天日にはGにより林内の樹体温度の上昇と林床下の地温の上昇 となる。Gの長期間の平均値はゼロとみなしてよい。 前報では個葉の両面から顕熱Hが放出され、熱収支式に2Hが使われたが、 本稿では群落上面から上に向かう顕熱H(上向きをプラスとする)を用いる。 なお、高さ h の塔での観測では、Gの観測値には観測誤差と高度 h 以下の層内での 熱の移流も含まれる。いわゆる熱収支インバランス問題である。 本稿では観測データを利用するとき、これらはGに含めて解析する。

注2:熱収支式の解析解
熱収支式には温度の4乗の項を含み、また飽和比湿(飽和水蒸気圧)が温度に対して 級数的に増加する性質をもつため解析的に解けず、高精度の結果を得るには 逐次近似法で解くことになる。しかし、森林などの群落は 小面積の葉面からなるために、顕熱の交換速度は通常の風速範囲で k=0.02~0.04m/sである(近藤、2023a)。
「K229.森林蒸発散量の葉面積指数への依存度は低い」
交換速度がこの大きさであれば、通常の平均的な気象条件では、 群落温度と気温の差は±3℃以内のことが多く、近似の解析解でも精度よく 結果を知ることができる。本稿の主目的は地球温暖化・都市化による 気候変化によって森林蒸発散量がどれほど増加するかを見積もり、 また結果の理解を容易にするために式の形で表わされる解析解を利用する。

熱収支式
R↓を入力する放射量(反射は含まない、W/m2)、Q= R↓-G (W/m2)とする。Tを気温、Tsを群落葉面温度(TとTsにσがつくときの 単位:K、それ以外の場合は℃)、qSAT(Ts)とqSAT(T)を それぞれTsまたはTに対する飽和比湿、rh(=0~1)を相対湿度、 Hを顕熱輸送量(W/m2)、ιEを潜熱輸送量(W/m2)、 ι(=2.45×106J kg-1,20℃)を気化の潜熱、σ (=5.67×10-8Wm-2K-4)を ステファン-ボルツマン定数、Cpを空気の定圧比熱(J kgー1Kー1)、 ρを空気密度(kg m-3)とすれば、熱収支式は次の(1)~(3) で表わされる。

Q-σTs4-H-ιE=0  ・・・・・・・・・・・(1)
H=Cpρk(Ts-T) ・・・・・・・・・・・・・(2)
ιE=ιρβk{qSAT(Ts)-rh×qSAT(T)} ・・・・(3)

これら(1)~(3)から3つの未知量(Ts, H, ιE)を求めることができる。 その場合、逐次近似法によって厳密解を知ることができる。しかし本稿では、 近似の解析解を得るために次の近似式(4)と(5)を用いる。 Δ=dqSAT(T)/dT とすれば、

σTs4≒σT4+4σT3(Ts-T) ・・・・・・・・・・・(4)
qSAT(Ts)≒{ qSAT(T)+Δ(Ts-T)} ・・・・・・(5)

これらにより、式(1)と(3)は次の近似式で表わされる。

 (Q-σT4)-4σT3(Ts-T)-H-ιE≒0  ・・・・(6)
 ιE≒ιρβk{(1-rh)qSAT(T)+Δ(Ts-T)} ・・・(7)

その結果、式(2)と(6)と(7)の3式から次の解析解(8)を得る。

(Ts-T)=A/B ・・・・・・・・・・・・・・・・(8)

A=( Q-σT4)-ιρβk{(1-rh)qSAT(T)}
B=4σT3+Cpρk+ιρβkΔ
Δ=dqSAT/dT =(deSAT/dT)×0.622p/(p-0.378eSAT)2

deSAT/dT=[6.1078(2500-2.4T)/{0.4615(273.15+T)2}] ×107.5T/(237.3+T)

T:℃, p(大気圧):hPa, e(水蒸気圧):hPa、eSAT (飽和水蒸気圧):hPa(近藤、1994、p.130を参照)

森林の交換速度(k:m/s)として次の式(9)を用いる(近藤・菅原、2016)。
「K123.東京都心部の森林(自然教育園)における熱収支解析.」

  k=0.01+0.01U0.5 , (2<U<8 m/s) ・・・・・・・・・(9)

最終的に、式(8)の(Ts-T)を式(2)と(7)に代入すれば、HとιEがわかる。 なお、蒸発散の潜熱 ιE=100W/m2は、蒸発散量E=3.53mm/d=1287mm/y に相当する。

近似式による誤差の概略値は、解析解から得たTsとHとιEを式(1) に代入すればわかる。その誤差は計算ごとに求めるが、本稿の条件の範囲内では ゼロに近い。前記の「注1」で説明したように、 晴天日には林内・林床に向かう熱輸送量Gが生じるが、長期間平均値 (全日24時間の月平均値と年平均値)のGは近似的にゼロとしてよく、 長期間平均値を求めるときには、(Q-σT4)≒(R↓-σT4) として計算する。ただし、斜面などで観測高度h 以下の層で絶えず 熱移流がある場合は別途考える。

注3:熱収支式の型式
上記の式(2)および(3)(または(7))は顕熱コンダクタンス・蒸発効率の形式 (k、β)で表わした。ほかに顕熱コンダクタンス・水蒸気コンダクタンス形式 (k, kw)、あるいは抵抗形式もある。「コンダクタンス」は「交換速度」 (単位はm/s)と呼べば理解しやすい。β=kw/(k + kw)、 抵抗はコンダクタンスの逆数で表わされる(近藤、2000,p.211)。 地表面の種類と条件により、どの形式が便利であるかが決まる。 乾燥域で土壌が乾燥してくると、裸地面蒸発は風速に無関係になり、 抵抗形式(大気中と土壌内の水蒸気流が直列抵抗で結ばれる)が理解しやすい。 通常の水面や森林を対象とする場合、解析解では形式(k, β) がもっとも簡単で理解しやすい。それゆえ、本稿では形式(k, β)を用いる。 なお、k とβは完全に独立したパラメータではないが、風速が微風~暴風の広い 範囲ではなく、通常の小さい変化幅の範囲内なら互いに独立したパラメータとして 取り扱ってよい。


4 熱収支量の季節変化、観測との比較

この節では、本稿の主目的「森林蒸発散量に影響する都市昇温・乾燥化」 に入る前の準備として「森林の蒸発散量の季節変化」を検討する。 ここでは、代表として次の森林を取り上げる。

(1)共通林:各地の森林流域における「流域水収支法」によって得られた 蒸発散量と「熱収支法」の比較から求めた蒸発効率βの季節変化は、 2月に最小値(β=0.10),8月に最大値(β=0.26)となる正弦関数で表わした (近藤ほか(1992b)。以後、この方法によって求めた蒸発効率を「共通β」 として表わす。Mを月数、X=2π(M-8)/12とすれば、「共通β」は (β=0.18+0.08cosX)で表わされる(近藤ほか、1992b)。

(2)自然林:東京都港区白金台の自然教育園内の自然林(樹冠の高さ=14m) は、おもに高木スダジイ、亜高木ヤブツバキ、トウネズミモチ、およびコナラ (落葉樹)からなる(近藤・菅原、2016)。 「K123.東京都心部の森林(自然教育園)における 熱収支解析」
2009年7月から2015年12月までの6年間にわたり、高度20mの観測塔で渦相関法 (直接測定法)によって観測した顕熱・潜熱輸送量と「熱収支法」の比較から求めた 晴天日中の蒸発効率βを「自然β」(2月に0.08,8月に0.30)とする(図2下)。

(3)落葉広葉樹林:埼玉県川越にある落葉広葉樹林は、 秋から冬に落葉するため、葉面積指数LAI=0.1~2(11~3月)からLAI=4~6(4~10月) へと大きく変化し、それにともない無次元蒸発散量 (=蒸発散量/ポテンシャル蒸発量)は0.1~0.2(11~3月)から0.5~0.8(4~10月) へ変化する(近藤、1998:近藤、2000,図7.18)。後掲の図4に示すように、 渡辺(2001)による1996年の5~10月の蒸発散量の観測は「自然β」 を用いた熱収支式の計算で得られる蒸発散量とほぼ一致する。

(4)針葉樹林:熊本県北部の鹿北試験地の周辺は標高=150~220mにあり、 スギとヒノキの針葉樹林では葉面積指数=4.1~5.2、樹高=32m(観測タワー 周辺の値)である。ここでは高さ50mの観測塔で渦相関法(直接測定法) によって2007~2008年に潜熱フラックスが観測された(Shimizu et al., 2015)。 「熱収支法」による計算と比較してみると、後掲の図5に示すように蒸発効率として 「自然β」(2月に0.08、8月に0.30)や「共通β」(2月に0.10,8月に0.26) を用いると、蒸発散量の計算値は夏に大きめ、冬に小さめになった。 そこで、針葉樹林のβとして季節変化幅の小さい「針葉β」(1月に最小の0.11、 7月に最大の0.21)を用いる。Mを月数、Y=2π(M-7)/12とすれば、 「針葉β」は(β=0.16+0.05cosY)で表わされる(この妥当性に関する 詳細な確認は、続報で行ないたい)。
 「K231.針葉樹林の蒸発効率と熱交換速度」

注4:熱収支式による計算
熱収支式を解く方法によって全国66地点の低標高にある森林の蒸散量(「共通β」 を使用)、遮断蒸発量(濡れた樹体からの蒸発、β=1.0)、 および蒸発散量(蒸散量+遮断蒸発量)が月ごとに計算され一覧表に示されている (近藤ほか、1992a)。その計算では降水継続時間は統計的に降水量とともに 長くなることを考慮し、無降水日は蒸散のみ、少降水日(0<日降水量<5mm/y) は蒸散と遮断蒸発の両方が生じ、多降水日(日降水量≧5mm/y)は 遮断蒸発のみ生じるとして計算した(近藤ほか、1992b)。 気象データは1986~1990年の5年間の日々の気象データを用いて計算した。 図4~図5に ιE(1986~1990年)と記されたプロット・線はこの計算値 (正確な計算値)のことである。それ以外の計算値は「雨日ナシ」を仮定した 概算値であり、計算精度が少し低い。本稿の主目的は、 森林蒸発散量が都市化の影響によって何%増えるかであり、 増える割合を求めることである。

4.1 晴天日中の月蒸散量の季節変化
図2(上)は予備知識として示したものである。東京都港区白金台の自然教育園内の 自然林(樹冠の高さ=14m)の高度20mで2010~2015年に観測した熱収支量 (上向き・下向きの短波・長波放射量、顕熱輸送量H、潜熱輸送量ιE)、 および気象要素から求めた蒸発効率β(図2の下図の丸印付き実線)の季節変化と 交換速度k(=CHU=0.01+0.01U0.5) を用いて計算した晴天日中(10~15時)平均の蒸散の潜熱(実線)と顕熱(破線) の季節変化である。丸印と×印はそれぞれ観測値である。ここに、晴天とは、 10~15時の日照率=100%、正味放射量が十分に大きい条件である(付録の表5)。 観測時間中に雲量などの時間変化が激しくない「きれい」な条件では、 交換速度と蒸発効率が高精度で決まると考えたからである。

教育園日中、熱収支量とβの季節変化
図2 東京の自然教育園の自然林における熱収支量と蒸発効率βの季節変化、 2010~2015年の晴天日中(10~15時)平均値。上:顕熱輸送量Hと蒸散の潜熱輸送量 ιEの観測値と計算値、下:丸印付き実線は自然教育園の観測で得た「自然β」、 点線は近藤ほか(1992b)による「共通β」)。


図2(上)に示した顕熱・潜熱輸送量(H, ιE)の観測値(記号)と計算値 (実線・破線)にわずかな差がある。

図2(下)に示された蒸発効率βの季節変化に注目すると、丸印つき実線は渦相関法 (直接測定法)の観測から導き出した値であり、新緑の着葉前(4月5日前後)の β=0.08から着葉後(5月20日前後)のβ=0.21に急激に上昇している。 その結果として丸印つき実線は、4月平均のβ=0.10から5月平均のβ=0.20 へ急上昇する季節変化となる。それに対して、点線は森林流域の降水量、 流出量などを用いる「流域水収支法」による蒸発散量から求めた「共通β」であり、 2月に最小、8月に最大となる正弦関数で表わされた(近藤ほか(1992b)。 当時の1992年には、筆者は新緑の着葉前後でβが急激に変化する現象に 気づいていなかった。

4.2 降水日も含む月蒸発散量の季節変化
前述したように、森林の蒸発散量(ET:Evaporation + Transpiration) を熱収支式によって正確に求める場合は無降水日、少降水日、 多降水日の3つに分けて計算する(近藤ほか、1992b)。ここでは、 概算値を知るために月平均気象値を用いて計算するため、 降雨日も含む熱輸送量の月平均値(H, ιE)には多少の誤差を含む。 このことを意識して以下の図3~図5を見ることにしよう。

図3は東京の自然教育園の自然林における月平均の潜熱輸送量の季節変化で、 観測値と概算値の比較である。概算値では蒸発効率「自然β」を用いた。 概算値(破線)は観測値(丸印)の季節変化をほぼ再現できている。なお、 観測値のうちのやや小さめの丸印(5~9月)は、降雨日の測器受感部の濡れによる 出力ノイズのため、「データなし」を多く含み月平均の観測値は不正確である。

教育園、潜熱の季節変化
図3 東京の自然教育園の自然林における月平均の潜熱輸送量の季節変化、 観測値(丸印)と概算値(破線)の比較(2010~2015年)。計算では蒸発効率 「自然β」を用いた。5~9月の丸印は降雨日の「データなし」を多く含むため 月平均値としてはやや精度が低い。なお、実線は蒸発効率「共通β」と 1986~1990年の東京大手町の旧気象庁観測露場における日々の気温と湿度 および地域代表風速を用いた計算値である(近藤ほか、1992a)。


注5:年蒸発散量の観測値に含まれる誤差と、2010年代の年蒸発散量の規準値
自然教育園の自然林における2010年代(2010~2015年)の年蒸発散量の観測値 940mm/y(図3の丸印の値を蒸発散量に換算)には、降雨日のノイズによる データなしが含まれ、年間値として大きめに観測されている(近藤・菅原、2016)。 一方、月平均気象値を用いた2010年代の計算値は874mm/yであり、 観測値より7%小さい。また、「共通β」と1986~1990年の5年間気象値を用いて 無降水日、少降水日、多降水日ごとに細かく計算した東京の蒸発散量は877mm/y (近藤ほか、1992a)がある。これらを含めて、2010年代の年蒸発散量の規準値の 候補は次の通りである。

(1)940mm/y:2010~2015年の観測値、データなしを含み5%程度過大?
(2)893 mm/y=940×0.95:上記に対する仮の補正
(3)874 mm/y:月ごとの平均気象値を用いた概算値
(4)877 mm/y:1986~1990年の気象値を用いた詳細な計算値
(5)938 mm/y=877×[1+{(1.14-1)×(25年/50年)}]: 5.2節「過去50年間の変化」1.14倍を25年間(1988~2013年)に補正
(6)904±29 mm/y:上記5候補の平均値

これら(1)~(6)のどれを規準値とすべきか?本稿では、 単に計算上の便利さから(3)の874mm/y を規準値として用いることにした (表1~表4)。今後、真値に近い値が確定すれば、規準値874mm/y は修正される。

図4は川越の落葉広葉樹林における月平均の潜熱輸送量の季節変化であり、 計算値(破線)は観測値(丸印)の季節変化をほぼ再現できている。 計算では蒸発効率「自然β」を用いた。この森林は落葉広葉樹であるため、 落葉期の11月から新緑前の4月までの蒸発散観測値は小さめになっている。

川越、潜熱の季節変化
図4 川越の落葉広葉樹林における蒸発散の潜熱輸送量ιE の季節変化。


なお、図4の実線は蒸発効率「共通β」と1986~1990年の前橋地方気象台における 日々の気温と水蒸気量および地域代表風速を用いた計算値である (近藤ほか、1992a)。前橋は、川越の周辺で都市化昇温の小さい地点であることから 選んだのである。

図5は熊本県北部の鹿北試験地(針葉樹林)における月平均の潜熱輸送量の 季節変化であり、計算値(破線)は観測値(丸印)の季節変化をほぼ再現 できている。この森林に対しては「共通β」(β=0.10~0.26)や「自然β」 (β=0.08~0.30)を用いると夏の計算値は大きめ、冬は小さめになるので、 それよりも季節変化幅の小さい「針葉β」(β=0.11~0.21)を用いた計算値 (破線)を示してある。しかし、月平均気象値を用いた概算であるため、 「針葉β」の詳細な確認は、続報で行いたい。
「K231.針葉樹林の蒸発効率と熱交換速度」

鹿北、潜熱の季節変化
図5 鹿北試験地の針葉樹林における蒸発散の潜熱輸送量ιE の季節変化。


なお、図5の実線は蒸発効率「共通β」と1986~1990年の佐賀地方気象台における 日々の気温と水蒸気量および地域代表風速を用いた計算値である (近藤ほか、1992a)。佐賀は、鹿北試験地の周辺では都市化昇温の小さい地点 であることから選んだのである。

これまでの図3~図5で示したように、月平均気象値を用いて各地の自然林、 落葉広葉樹林、針葉樹林に対して行なった蒸発散量(潜熱輸送量) の概算値は近似的に観測値を再現できることがわかった。 概算値が観測値をほぼ再現できる要因は、「まえがき」の参考(予備知識)(3) で説明したように、例えば晴天日中の数時間平均として求めたβ値を用いて得られる 日平均(月平均)の潜熱輸送量は、小さい誤差で求めることができるからである。 すなわち、夜間はβ=0(蒸発散・降水・結露ゼロ)であっても、日平均(月平均) の放射量、気温、水蒸気量、風速を用いて熱収支式を解けば、日平均(月平均) の顕熱・潜熱輸送量が比較的に高精度で求めることができる。その意味で、 βは利用価値の高いパラメータである。


5 蒸発散量の気象要素に対する敏感度

これまでの検討により、月平均気象値を用いた計算でも年蒸発散量はほぼ正確に 得られることがわかったので、本稿の主目的の計算に進むことにしよう。

5.1 過去50年間の変化
東京では図1に示したように、過去50年間に気温は1.7℃/50y、 水蒸気圧は 0.55hPa/50y=4%/50y上昇している。水蒸気圧の上昇は気温の大きな 上昇に比べて小さいので、年平均相対湿度は50年前に比べて2.6% (晴天日中10~15時平均)、4.3%(昼夜の全日平均)低下したことになる。

図6は晴天日中の熱収支の季節変化について、50年前(1965年前後の平均) と最近(2010~2014年の平均)の比較である。50年前に比べて顕熱Hの減少に対して 潜熱(蒸発散量)は増加となっている。そのため最近は蒸発散量の増加によって、 森林の林床下に貯えられている貯水量が速く消費されることになる。

東京、日中50年前と比較
図6 東京の50年前(1965年前後の平均)と最近(2010~2014年の平均) の森林における熱収支量の季節変化の比較、ただし晴天日中(10~15時)のみ。


次に、図7は昼夜を含む全日平均の熱収支量の季節変化で、 50年前と最近の比較である。年間平均値で顕熱Hは4%の減少に対して 蒸発散量は14%の増加になっている。2~4月の顕熱輸送量Hが他の季節に比べて プラスであるのは、①新緑の着葉前で蒸発効率が小さいこと、 ②放射量の大きさに比べて気温が低いため、ボーエン比(H/ιE) が大きく熱エネルギーのHに配分される割合が他の季節に比べて 大きくなるためである(熱配分則の特徴、 「基礎3:地表面の熱収支と気象」)。

東京、全日50年前と比較
図7 図6に同じ、ただし昼夜を含む全日の月平均熱収支量。


観測方法が時代によって変更されてきたことと、降水量の年々変動が大きいため、 東京における降水量が長期的に増加しているか否かは明確ではない。 気象庁観測所51地点平均の降水量の120年間の変化を見ても、 長期的に増加しているか否かは判断できない。仮に降水量が一定としても、 雨量計の捕捉率が良くなってきているので、見かけ上の降水量観測値は増える ことになる(近藤、2023b、第2章)。

5.2 過去100年間の変化
100年前の東京では、現在に比べて年平均気温は現在の16.6℃より3℃低い13.6℃ (近藤、2023b、図3.2)、年平均水蒸気圧は現在の13.72hPaの0.97倍の13.31hPa である。現在および当時の東京の森林(樹冠の上)でも、同様な気温差があり、 この割合で水蒸気圧が違っていたとする。相対湿度に換算すると、 現在のrh=0.61に対して100年前はrh=0.72, その差は0.11で100年前の相対湿度は 現在の都市乾燥化の影響により11%ほど高かったことになる(近藤、2023b、図3.4)。 前述したように、昔の湿度の観測には誤差があり、月平均や年平均で相対湿度には 2~3%の誤差がある。そのため蒸発散量の計算結果に含まれる誤差は5%程度である。 このことを意識して、以下の結果を見ることにしよう。

図8は東京の森林における、100年前(1910年代:黒印)と現在 (2010年代:太い実線・破線)の全日平均熱収支量の季節変化である。 ただし樹種などが現在の自然教育園の自然林と同じとした場合であるが、 「まえがき」で述べたように、樹種に多少の違いがあっても、 結果にはあまり影響しない。

100年前の顕熱輸送量(黒印付き点線)は、年間を通じてほとんどプラスであり、 森林が大気を平均として加熱していたことになる。現在(太い破線) の2~4月は昔と同様に大気を加熱しているが7月~12月はマイナスで、 大気を冷やす働きをするように変化してきた。

潜熱輸送量(蒸発散量)について、現在(太い実線)は昔(黒印付き実線) に比べて年間値で1.38倍に増えている。現在(2010~2014年)、 東京の自然教育園の年蒸発散量は874mm/yであるので(前記の注5)、 100年前は874/1.38=633mm/y であったと推定される。その差は241mm/y となる。

東京、全日100年前と比較
図8 東京の森林における1910年代(黒印)と2010年代(太い実線・破線) の全日平均熱収支量の季節変化、ただし樹種などが同じ森林の場合。


森林内の水収支について考えてみよう。
〇 現在(2010~2014年)の年降水量=1655mm/y と蒸発散量874mm/y の差781mm/y が水資源量(利用可能な水)として地中へ入り森林外へ流出するか、 地下水を涵養する。
〇 100年前(1910~1919年)の年降水量=1668mm/y と蒸発散量633mm/y の差1035mm/y が水資源量(利用可能な水)である。
〇 したがって、100年間の水資源量の減少量=1035-781=254mm/y となり、 前記の241mm/y にほぼ等しい。水資源量の減少率=254/1035=0.25(25%)となり、 森林の広がる地域を水源とした湧水が影響を受けることになる。 降水量の少ない年には水涸れの可能性がより高くなると考えられる。

神奈川県秦野市は湧水の豊かな所であり、現在でも一部で生活用水として 利用されている。災害時に上水道が止まったとき、湧水を利用するとされる対策が とられている。水資源量が大きく減少している東京都心域では、 対策はとられているだろうか?


6 蒸発散量の気象要素に対する敏感度

前節では、都市化を含む気候変化によって気温と水蒸気量が同時に変化した場合の 森林蒸発散量の季節変化を調べた。本節では入力放射量、気温、水蒸気量のうち、 それぞれが単独に変化したときの蒸発散量の気候変化を調べてみよう。ただし、 それぞれの気象要素が単独に変化する場合でも、互いに関係しあっている。 例えば、気温だけが上昇すれば、水蒸気量が一定でも相対湿度は下がるので、 蒸発散量は増える。このことを意識して結果をみることにしよう。

2010年代を現在とし、2010~2014年の東京の自然教育園の自然林の状態とする。 この節では、変化した割合(増加する%)に注目する。

6.1 入力放射量10%の増加に対する敏感度
入力放射量R↓を増加させる要素として気温の上昇と水蒸気量の増加のほかに、 大気汚染の減少や雲量の減少もある。2010~14年のR↓(年平均R↓=461W/m2) が毎月1.1倍になった場合、森林蒸発散量がいくら増加するか、 計算結果を図9に示した。現在の値(太い実線と破線)に比べて、 R↓が10%増えたときの値は 丸 印(蒸発散の潜熱輸送量ιE)と四角印 (顕熱輸送量H)で示した。

放射量が10%増えたとき
図9 入力放射量R↓が2010年代の値から毎月10%増えた場合の顕熱輸送量Hと 潜熱輸送量ιEの季節変化。R↓の2010年代前半の年平均値は461W/m2である。


これまでに示した図6~8と違って、図9ではR↓が増えればHとιEの両者が増えている。 表1に示すように、R↓の年平均値の増加分46W/m2が森林群落葉面温度と 気温の差(Ts-T)の年平均値を-0.25℃から+0.63℃に0.88℃上昇させ、 σTs4が5W/m2増加する。残りの46-5=41W/m2 がHの増加29W/m2とιEの増加12 W/m2(E=874 mm/yに対して 増加155mm/y)に分配される。蒸発散量の増加割合は155/874=0.18、 すなわち18%の増加となる。

表1 入力放射量R↓が毎月1.1倍になったときと現在(2010年代前半) の熱収支量の年平均値の比較(H~R↓の単位:W/m2)、 Tsは群落葉面温度である。

     1.1倍のとき  現在値    差   H  21 -8    29  ιE       80 68 12 σTs4 405 400 5   R↓ 507 461 46 蒸発散量(mm/y) 1029 874 155 rh(%) 61.4 61.4 0 e(hPa) 13.72 13.72 0



6.2 気温1℃の上昇に対する敏感度
気温が1℃上昇すれば、森林群落葉面温度と気温の差(Ts-T)の年平均値は -0.25℃から+0.59℃に0.84℃の上昇となりσTs4が4W/m2増加する。 表2に示すように、気温が上昇し水蒸気量が一定でも相対湿度は低くなり 蒸発散の潜熱は7W/m2増え、逆に顕熱輸送量は11W/m2 ほど減少する。潜熱ιEを蒸発散量に換算すると、874mm/yから968mm/yに11%増える。

表2 気温Tが毎月1℃高くなったときと現在(2010年代前半)の熱収支量の 年平均値の比較(H~R↓の単位:W/m2)、Tsは群落葉面温度である。

      1℃高温のとき  現在値    差   H -19 -8   -11  ιE       75 68 7 σTs4 404 400 4   R↓ 461 461 0 蒸発散量(mm/y) 968 874 94 rh(%) 57.7 61.4 -3.7 e(hPa) 13.72 13.72 0



6.3 水蒸気圧7%の減少に対する敏感度
2010年代前半の東京の年平均気温16.6℃に対する飽和水蒸気圧=18.88hPaである。 気温1℃高温の17.6℃に対する飽和水蒸気圧=20.12hPaであり、6.6%高くなる。 そこで、この項では前項の気温に対する敏感度と関連づけするために、 毎月の水蒸気圧が7%減少したとき、蒸発散量がいくら増えるか、 その割合を計算する。

表3は水蒸気圧eが毎月7%低くなったときと現在の年平均熱収支量の比較である。 年蒸発散量の増加比は89/874=0.10、すなわち10%の増加となる。 表2で示した気温1℃の上昇の場合の年蒸発散量の11%の増加とほぼ同じである。

表3 水蒸気圧eが毎月7%低くなったときと現在(2010年代)の熱収支量の 年平均値の比較(H~R↓の単位:W/m2)、Tsは群落葉面温度である。

      7%低いとき  現在値   差   H -14 -8   -6   ιE      75 68 7 σTs4 399 400 -1  R↓ 461 461 0 蒸発散量(mm/y) 963 874 89 rh(%) 57.1 61.4 -4.3 e(hPa) 12.76 13.72 -0.96



6.4 気温1℃上昇と水蒸気圧7%の減少のときの熱収支量
クイズ:気温1℃上昇の結果は表2に、水蒸気圧7%低くなったときの結果は 表3に示した。それならば、気温1℃の上昇と同時に水蒸気圧が7%低くなったときの 熱収支量はどうなるか?結果は両者(表2と表3)を加えた値になるか、否か? 解析解(式2,7,8)を参考にして答えよ。

計算結果を見てみよう。
表4は気温の1℃上昇と同時に水蒸気圧が7%低くなったときと 現在の年平均熱収支量の比較である。季節変化の図は付録2の図10に示してある。 年平均または年合計の各熱収支量の変化量は、表2と表3に示す結果を加えた値に なっている。すなわち表4から182/874=0.21、蒸発散量は合計21%(=11%+10%) の増加となっている。

表4 気温Tが毎月1℃上昇し、同時に水蒸気圧eが毎月7%低くなったときと 現在(2010年代)の熱収支量の年平均値の比較(H~R↓の単位:W/m2)、 Tsは群落葉面温度である。

    (+1℃、0.93×e) 現在値    差   H -24 -8   -16   ιE       82 68 14 σTs4 403 400 3  R↓ 461 461 0 蒸発散量(mm/y) 1056 874 182 rh(%) 53.7 61.4 -7.7 e(hPa) 12.76 13.72 -0.96



その理由は、温度差(Ts-T)の解析解を示す式(8)によれば、 分母のBは不変だが、分子Aには気温Tと相対湿度rhの効果が加算の形 [σT4と(1-rh)qSAT(T)]になっているので、 式(2)が示す顕熱輸送量Hの変化はTとrhの変化の効果の和となることがわかる。

潜熱輸送量ιEを表わす式(7)によれば、上記の温度差(Ts-T)の効果に さらに繰り返して相対湿度rhの効果 [(1-rh)qSAT(T)] が加わる。 いずれも加算であるので、表4の結果が前記6.2項と6.3項の場合を加えた値になる ことが理解できる。

なお、図9に示した入力放射量R↓(Q= R↓-G)の効果は、式(8)の 分子Aに入っており、R↓の大きさによって分子Aはマイナス、 したがって温度差(Ts-T)がマイナスになる場合もある。 そのときHはマイナスになる。しかし、潜熱輸送量ιE(蒸発散量E)は式(7) が示すように、プラスのことが多い。このように、 諸条件が変化したときの熱収支量の振る舞いを知りたいとき、 解析解から理解することができる。


まとめ

東京には多くの湧水があり、昔は湧水のあるところで住民が暮らしてきた。 近年、その湧水が涸れることがあり、このことが本研究の動機のひとつである。 湧水の涸れは、舗装などの人為的な地表・水みちの改変のほか、地球温暖化に加えて 都市昇温・乾燥化により森林の蒸発散量が増加していることが原因であると考えた。 本稿では、蒸発散量が入力放射量・気温・水蒸気量・風速などの変化で 増減することを熱収支式の解から調べた。

本稿の主目的は長期的な気候変化に対して森林熱収支の年間量の増減する 割合を知ることであり、日々の変化ではなく、熱収支式に月ごとの 平均気象値を用いて解いた。この方式の計算でも観測値を再現できるかを確認する ために、東京の自然教育園の自然林、埼玉県の川越の落葉広葉樹林、 熊本県北部の鹿北試験地の針葉樹林について、月平均の蒸発散の潜熱輸送量の 季節変化の観測値と概算値の比較を行なった。概算値は観測値の季節変化をほぼ 再現できることがわかった。そうして、主目的とする東京の森林について計算した。

まず、湿度観測値に不連続のない1965年から2013年を1960年代から2010年代の 50年間として、気候変化による森林蒸発散量への影響を調べた。気温は1.7℃/50y、 水蒸気圧は 0.55hPa/50y=4%/50yの上昇として計算した。ただし、 水蒸気圧の上昇は気温の大きな上昇に比べて小さいので、 年平均相対湿度は50年前に比べて2.6%(晴天日中10~15時平均)、 4.3%(昼夜の全日平均)低下し、乾燥したことになる。50年前に比べて 最近は昼夜を含む全日平均の年間値で顕熱の4%の減少に対して、 蒸発散量は14%の増加となった。

次いで、100年前と現在との東京の気温差・水蒸気圧差を森林域にも当てはめて 計算したところ、100年前の森林の蒸発散量は633mm/y と推定され、 蒸発散量は2010年代の874mm/yに比べて100年間に38%(約240mm/y) 増加したことになる。気温や湿度など観測の方法・測器は時代によって変更され、 昔の水蒸気量(湿度)の観測には年平均値で2~3%の誤差があり、 38%増加には±5%の誤差を含む。東京における10年間平均の年降水量 (約1660mm/y)は長期にわたりほぼ一定であり、昔の水資源量1035mm/y (湧水など利用可能な水=降水量-蒸発散量)は現在では781mm/y となり、 254mm/y(25%)減少している。

年蒸発散量は、入力放射量の年平均R↓=461W/m2の10%増加で 18%の増加、気温の年平均値T=16.6℃の1℃上昇で11%の増加、 水蒸気圧の年平均値e=13.7hPaの7%減少でほぼ同じ10%の増加となる。 また、晴天日の日中平均(10~15時)の蒸散量は高度35mの風速の2倍 (100%の違い)で7~14%の増加、日平均値では10~19%の増加となる。

なお、自然教育園の自然林における現在2010年代(2010~2014年) の年蒸発散量の観測値の940mm/y であるのに対し、熱収支法による2010年代の計算値は 874mm/y であり、観測値より7%小さい。本稿では、874mm/y を規準値として用いた (注5)。規準値を蒸発散量の100年間の増加率1.38で割り算して100年前の蒸発散量 633 mm/y を求めた。

蒸発効率βについて、次のようにまとめることができる。ただし、 落葉樹林の夏は自然林に同じとしてよい。また、針葉樹林については 続報で確認したい。

     年平均値  最小値(月)  最大値(月) 森林の種類 自然β   0.19 0.08(1~3月) 0.30(7~8月) 自然林 共通β   0.18 0.10(2月) 0.26(8月) 多種 針葉β   0.16   0.11(1月)   0.21(7月) 針葉樹林




文献

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付録1 2010~2015年の晴天日中10~15時の熱収支量などの一覧表(表5) 

自然教育園における晴天日中10~15時の毎月の熱収支量などは表5に示した。

表5 2010-2015年の晴天日中10-15時(日照率=100%)について計算する条件と 計算結果(近藤・菅原、2016の付表4の一部修正)
「K123.東京都心部の森林(自然教育園)における 熱収支解析」
R↓:入力放射量(W/m2
G:下層への熱(W/m2
Q=R↓-G:有効エネルギー(W/m2
T:樹冠上の気温の代表値(℃)
e:水蒸気圧(hPa)(大手町露場の観測値、2014年12月2日以後は北の丸露場)
U:風速(北の丸公園、測風塔高度=35m)(m/s)
H:顕熱輸送量観測値(W/m2
lE:潜熱輸送量観測値(W/m2
β:HとιEの計算値が観測値にもっとも適合する蒸発効率(無次元)
数:上記条件で選んだ、10-15時のHとlEがともに観測された日数

 月  R↓ G  Q  T e U  H lE 数 β H   lE                         計算 計算 1 690 152 537 8.8 3.23 3.4 125 53 23 0.08 116 46 2 794 193 602 9.7 3.98 3.2 180 58 29 0.08 164 50 3 979 202 777 18.7 6.99 3.3 246 119 18 0.08 230 98 4 1046 178 869 20.5 7.16 3.9 268 179 33 0.10 256 149 5 1069 87 982 23.1 9.43 3.8 213 332 13 0.20 205 306 6 1130 77 1053 28.2 16.41 3.9 141 444 11 0.27 132 430 7 1167 126 1041 32.3 25.80 4.0 86 460 6 0.30 80 452 8 1148 49 1098 33.0 27.60 4.1 81 519 8 0.30 98 484 9 1038 148 890 29.4 20.34 3.3 85 329 16 0.27 64 338 10 867 133 734 21.0 10.70 3.7 80 229 15 0.23 81 215 11 719 130 589 15.2 6.61 3.4 62 135 21 0.18 66 121 12 668 118 551 9.8 3.95 4.6 110 77 4 0.13 96 79 平均 943 133 810 20.8 11.85 3.7 140 245 - 0.19 132 231




付録2 気温と水蒸気圧が同時に変わったときの熱収支量の季節変化(図10)

基準は2010年代を現在として、2010~2014年の東京の自然教育園の 自然林の状態とする。

気温は2010年代の値から毎月1℃高温に、水蒸気圧は毎月7%減少した場合の 顕熱輸送量Hと潜熱輸送量 ιE の季節変化を図10に示した。

気温と湿度が変化したとき
図10 気温と水蒸気圧が2010年代の値から毎月それぞれ1℃高温に、 7%減少した場合の顕熱輸送量Hと潜熱輸送量ιEの季節変化。 2010年代の年平均気温=16.6℃、水蒸気圧=13.71hPaである。


付録3 晴天日の蒸散量の風速に対する敏感度(図11,図12) 

基準は2010年代を現在として、2010~2014年の東京の自然教育園の自然林の状態 とする。

その1:晴天日中の蒸散の潜熱
図11は相対湿度rhが0.1小さくなったとき蒸散の潜熱(蒸散量)の増加率が風速 (広域を代表する高度35mの風速)によって、ほとんど違わないことを 示したものである。実線は有効入力放射量R↓-σT4=625W/m2, 気温T=33℃、β=0.3の場合で相対湿度rh=0.65(小丸印)から0.55(大丸印) になった場合である。相対湿度が0.1(10%)低下したとき、風速=2~8m/s の範囲内では蒸散の潜熱(蒸散量)の増加率は8±1%であり、 風速にあまり依存しない。

点線は有効入力放射量=500W/m2, 気温T=23℃、β=0.2の場合であり、 実線の場合と同様に、相対湿度rh=0.43(小四角印)から0.33(大四角印) になった場合も、蒸散の潜熱(蒸散量)の増加率は8±1%であり、 風速にあまり依存しない。

晴天日中33℃と23℃、敏感度
図11 晴天日中の蒸散の潜熱輸送量の風速・気温・相対湿度に対する敏感度
実線:(有効入力放射量=625W/m2, 気温T=33℃、β=0.30) で相対湿度rh=0.55から0.65に変化
点線:(有効入力放射量=500W/m2, 気温T=23℃、β=0.20) で相対湿度rh=0.43から0.33に変化



その2:晴天日平均の蒸散の潜熱
図12は晴天日の日平均値を示したものである。実線は有効入力放射量= 200W/m2, 蒸発効率β=0.30の場合で相対湿度rh=0.75(小丸印)から 0.65(大丸印)になった場合である。小丸印より気温が2℃低い28℃の場合を 実線で示した。この実線(有効入力放射量=200W/m2, 蒸発効率β=0.30、気温=28℃)を基準にしたとき、 相対湿度が0.1(10%)低下したとき、風速=2~8m/sの範囲内では蒸散の潜熱 (蒸散量)の増加率は19±2%で、風速依存度は小さい。 日平均気温が2℃上昇することによる蒸散の潜熱(蒸散量)の増加率は風速によらず 6%である。また、相対湿度の0.1の乾燥化と気温2℃の上昇の両効果は、 両増加率を加えた26±2%の増加率となっている。

上記の実線より10℃低温の場合(点線)の場合も同様に、 (有効入力放射量=160W/m2, 蒸発効率β=0.20、気温=18℃) を基準にしたとき、相対湿度が0.1(10%)低下したとき、 風速=2~8m/sの範囲内では蒸散の潜熱(蒸散量)の増加率は14.5±1.5%で 風速依存度は小さい。日平均気温が2℃上昇することによる蒸散の潜熱(蒸散量) の増加率は風速によらず9%である。また、 相対湿度の0.1の低下と気温2℃の上昇の両効果は、両増加率を加えた24±1% の増加率となっている。

晴天日、敏感度
図12 晴天日の日平均の蒸散の潜熱輸送量の風速・気温・相対湿度に対する敏感度
実線:(日平均有効入力放射量=200W/m2, 蒸発効率β=0.30) で相対湿度rh=0.55から0.65に変化
点線:(日平均有効入力放射量=150W/m2, 蒸発効率β=0.20) で相対湿度rh=0.43から0.33に変化



要約すると、蒸散の潜熱(蒸散量)の増加率は風速への依存度が小さく、 風速=2~8m/s の範囲内では増加率の風速による違いは±1.5~2%である。


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