半透明の王女のためのパヴァーヌ (1)

とてもとてもヌムヌムの彼方
それはそれは遥かポミポミ
半透明の王女がおりました
名前を小中かな子と言いました
彼女は逆立ちしてもコナカカナコでした
おじいさんは山にポチ狩りに
おばあさんは川にドンタクに行きましたが
二人とも半透明の王女とは血のつながりはなく
戸籍上の関係も面識もありませんでした
ここで5行分を稼ぐエキストラだったのです
それを知って怒った龍は、突然の言及にも関わらず
名前をヒドラからギドラへと変えてみたりしました
ゴジラやガメラ、ギャオスのガ行の攻撃性に気づいたからです
グシケンヨーコーとゲッベルスは怪獣ではありません
龍のギドラがこのお話に関係があるかどうかは
まだこの時点では判然としていません
ひょっとしたら後で出てくるかも知れませんが
もし出てこなくてもがっかりしないで下さい
さて半透明の王女のお話です
彼女がとても困っていたのは半透明であることでした
透明なら諦めもつきますが、半透明は始末に終えません
どのくらい始末に終えないかと言いますと、それはそれは
半透明になった人でないと分からないほどの始末のなさで
どのくらいと問われてもだれ一人分かりませんでした
ここで生体の半透明性に係る物質特性を云々しようとしたら
非常にあれですし、童話ですからあれですので
いくつか症例を挙げてみましょう
たとえば王女は、ものがよく見えません
光が網膜までも透過してしまうのです
半透明なので少しは捕捉されますが
映画の途中で遅れて席に着く人ほどの視力しかありません
また、可視光に限らず、彼女の半透明性は
赤外領域にまで及んでいましたので
凍えたときに暖を取ることもままならなかったのです
ハロゲンヒーターも彼女にはただ少し明るいだけ
体を暖めるのは自分自身の発熱だけでした
だから王女はひっきりなしに食べなければならず
炭水化物とはいえ摂りすぎで少しふっくらとしていました
歯に衣着せずだと、肥っていました
それから、血液が…
これは訊かないで下さい
ヘモグロビンやβカロチンなどの色素が役割となる成分については
だれ一人分かるものはいませんでした
小中は…、そう王女の名前ですが、もう忘れてたでしょ
かな子と呼び慣わしましょうか
かな子はある日、愛してはいけない人を
愛してしまった自分に気づきました

続く かも知れない…
Kuri, Kipple : 2004.03.09


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