レジで店員に質問される 「ところで、怪しい者を見ませんでしたか」 「はっ?」 「怪しい者」 あんた以外にかと問い返すのを抑え いいやとだけ答えてすぐに店を出る 真夜中の住宅街で 幅員ギリギリの大型車両がかすめる 佐川ドリフト急便の暴走だ あっという間にその風に煽られる プリマ・ドンナ いつまでも いつまでも回り続ける 私は想い出す、何年もむかし 上海のサーカスで見た 赤い靴の踊り子の「永遠のスピン」を 知人の話では、去年の夏もまだ その娘は回り続けていた、と言う プリマ・ドンナは、パドゥドゥ 私の袋の中身は、ヒミツ ふいに正義の足音が駆け寄り、追いつく 「本当に見なかったのですね、怪しい者」 もういい 「分かったよ、私がその、怪しい者だ」 やっぱり でも説明は抜きだ |