R E D CNNのさっきのニュースふたつが頭から離れない
太陽光発電のやり過ぎで
平均気温が2.8度も下がってしまったマダガスカル
最後の個体だったボノボの雌、ヴァレンティーナの死
マダガスカルは10年計画を停止しないし
ヴァレンティーナのクローンは違法とされている

「東京の空ってグラスウールのチクチクに似てるね」
「夕焼けが赤外線でね」
「ハハッ、コウモリの声が耳障りってこと?」

そんなに泣くのを堪えていると
喉のところに塊が上ってくる

「奥さんの好きなあの画集、売れてたねぇ」
「欲しかった?」
「ぅうぅん、そういう意味じゃなくって」
「ホントに?」
「いいな、帰るとこあって」
「ナニ?」
「アタシね、もうイイから…」
その台詞は小惑星の衝突
自信は電子レンジの中の玉子のように飛び散る
僕はT-REXになって夕焼けを恐怖する

恋のように赤い
情熱のように赤い
産みたてのように赤い
「止まれ」のように赤い
血のように赤い

「ヴァレンティーナ、ごめんね」
「謝ったらダメだよ」
「どうして?」
「だって、そういうストーリーだもん、最初から」

夕焼けには、恐怖する以外に術はない
それは暗黒の前駆?
粘菌を模倣する血溜まり?
巨星となったソル?


僕と君には、もう話すことが残っていない
空間が時間に取り残される
胞衣のように欲望は流れ下り
ひとつの種が絶滅し
林檎のように塊は喉に詰まり
アルベドは目に見えて降下し
永劫回帰のように関係が閉じる
そのあいだ
夕陽が雲に乗って流れている