愛 衒学五重奏

物理学者との愛


彼女の名前は量子
二人の愛を確かめようとすると
何かが定められなくなる
それでも熱く統合しようとする彼女
「髪を噛んで…」
ああ 量子
僕は無我夢中で繰り込んでいく

彼女の肢体を貫くものには
かすかな重さがあった


老練(つ)な愛


生まれたままの姿の彼女に
すり込む すり込む
彼女は僕に 指環をはめる
別の角度から眺めてみると
彼女は縮こまり 時はたゆとう
すると左胸から蝶がひらり
右胸に が起こった


PHPな愛


昨日の女から今日の女へ
刹那の言葉のセッション
手練手管を含め
愛していると 最初に言わないで
ただ愛してくれれば それでいい
あらゆる僕たちの仕草が
いつも関わるだけの数となる
木霊になって返ってくるよ


古生物学者との愛



灯を消した街の底では
彼女の肌の色は分からない
でも彼女が明日 消えることは分かる
四つん這いになってごらん
そして重く 何かがのしかかる
ああ どうして潰れずにいられよう??

大きく輝く流れ星を見ながら
僕らは淘汰されはしなかったのだ


数学者との愛

   e^iπ + 1 = 0
ああ こんなにいっぱい…
ネピアがおっぱいに…
もいちど くわえてみる
何も残らない

成り立たない3人の言い分
余白に書き切れない言い訳
忍び寄るフェルマー
粗雑な策略を巡らしては
僕は350年をいっきに跳んだ
Kuri, Kipple : 2004.02.02


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