僕たちの出会わなかった夜


sleeping gypsy

The Night We Never Met

   The night we never met...

このタイトルを見たとき僕は
「僕たちの出会わなかった夜」
そういう意味だと思った

君は砂漠をさまよって
日没が君の命を救うのだけれど
今度は冷気が体温を奪っていく
君は表面積を小さくしようと必死
そして長い長い月の夜が始まり
褐色の腕に夜露が降りてくる
君はそれをすべて舐めとって
真夜中に力を振り絞って立ち上がる
生き延びるために出発する
西を目指して
いや、君が西と信じている方角に、だ
それは僕が待っているところ

そして僕のいるキッチンまでには
200年の時間がはさまっている
君の天使の瞳も遥かに霞んでいる

シチューにするかカレーにするか迷って
結局もう一枚玉ネギの皮をを剥いただけで
到着しない君を待っている僕は
とても窮屈なエプロン姿だ

ANGEL EYE

   Angel eye...

そう始まる歌を最初に聴いたとき
"Angel lied..."と聞こえたのさ
そして君はやって来ない

沈んだ気分で古い詩集を読んでいると
君から僕への長い長い伝言
2000行を費やした詩の意味は
「会いたい」

ハシバミ色の天使の眼差しには
嘘の欠片も見えなかったのに
二人の間での真実が200年後に
偽りになることもあるのかな


GOLDEN SLUMBERS

   Golden slumbers kiss your eyes
   Sleep pretty wanton, do not cry
   And I will sing a lullaby

200年は遠すぎる
そして僕はそこへは行けない
君はそこで眠りなさい
その夜は決して明けないのだから

僕が子守唄を歌い終わったら
君の寝息が僕の子守唄
小さな椅子にできるだけ深く腰掛け
このまま眠ろうと思う

   そしてこの生温い無気力の夜が
   君の死の淵の夜と出会うだろう

僕の左腕のしびれは聖痕のように残ればいい

   そしてついには受けとる愛が
   注ぐ愛と等しくなる

君の詩にはただの一度も
「愛」とは書かれてはいなかったけれど

   Kissing you Angel eye,
   I will sing you a lullaby
   at the night we never met.
   To the night, we never get...