キヲキル


 白一色の海を眺めて 僕たちの涙は涸れるだろう



 君は歌舞伎町で行き倒れるのだが 二日目の朝に

烏についばまれてようやく死体だと気づかれる

 君はチョモランマで穏やかに死ぬのだが

見知らぬ種族が一日掛りで鳥葬にしてくれる

 どちらの死が素敵か決めかねる

どんな死を欲するのか思いあぐむ

それは無駄なこと死は死馬鹿なこと



 一本の木を切って僕たちはプロメテウスの火を灯し

千の森を失って最期の燠き火をただ 見つめる

 今だ …



 流れる大地に戦慄いて 僕たちの喉は嗄れるだろう

 置き去りにされた子供は親を探す

 しかし置き去りにされた僕たちは

僕たちしかいないことを 知らなければならない



 青く

湿った心地よい 褥
2002.07.18