詩集『カエルトコ』より;番外

ベーリング海を渡る

思い遣りのシュレッダー肩に掛け
颯爽とザクザク歩く
凍てつく常世の昇華道路
一部彩色されたモノクロの風景を
空気いっぱい孕んでもったもった
歩くは歩く、雪こぎの至福千年
鼻毛がくっつき毛穴が踏ん張るとペンギン

女にできて、男にできないふたつ
「妊娠」と「忘却」
そのひとつを世界初で成し遂げようと歩く
念のため、「妊娠」ではない方
思い遣りのシュレッダー肩に掛け
それは最初に言った
どっこどっこのめり歩く
「愛情」と思っていたのは単なる「性欲」と
「執着」でしかなかったので捨てる
ただどうしても思い遣りだけは
粉微塵に刻んでおきたい、1ミリ角に
プライドの金庫背負っては
吹き溜まりに落ちて悔恨が骨折
這ってゆく