詩集『カエルトコ』より;番外

BaBaA

「だから言ったんだよ、レンタカーなんか大丈夫かって」
「仕方ないだろ、あんな深いぬかるみになってるなんて分かんねーもん」
「いいからなんとかしろよ、電話掛けろ、人呼べ」
「るっせーな。さっきの村まで戻るぞ」
「オニイサン」
「わっ!」
「わっ、きったねーババア!」
「キタナイババア、キレイナハンケチウルヨ」
「日本語分かんの?」
「ハンケチウルヨ」
「ここ、日本だったんだよ」
「ハンケチって何だよ?」
「ハンカチだよハンカチ」
「5ドルポッキリ」
「おばあちゃん、ハンカチ買うからね、あとで」
「それより電話ないの、テレフォーン!」
「ハンケチカウナラオシエル」
「分かったよ。5ドルでしょ、ほら、5ドル」
「10ニンカゾクデ50ドル」
「50…、カゾク??」
「カゾクハナレルノツライ」
「おばあちゃんねー」
「ツレテクナライッショニツレテッテクレー。ワタシムスメノコロニホンノヘイタイサンムラニキテ…」
「30ドル」
「45マデマケルノガセキノヤマダッペ」
「反応速いけど日本語変だぞ」
「35ドル」
「デンワナイ」
「分かった、40」
「45」
「42」
「エンギワルイ」
「43」
「ウッタ」
「あーあ、電話掛けるまで43ドルかよ。飯何回食える?」
「オニイサン、ショーバイジョーズ」
「お前だろ、ババア!」
「ババア、ヨクナイ、キタナイコトバ。ニホンノヘイタイサンムリヤリワタシノミサオ」
「おばあさん、電話の所まで連れてって下さい」
「デンワナイ」
「えっ?」
「デンワナイ。カワノムコウデアル」
「これだよ。もーっ!」
「詐欺じゃねぇかババア!!」
「ババアノイエニ、ハヤイフネアル」
「舟?」
「俺、次の展開もう見えたもんね」
「戦争、勝っときゃアよかったな」
「ババア、カッタ」