旋風機

墓参りの帰途、何気なく脇目すると、そこに扇風機が回っていた。
  こんなに寒いのに…
最初はそう思っただけ。
しかし、扇風機は部屋の中ではなく、外で回っているのだ。
どーゆーこと?? 何を涼ませているの??
それに電源はどこなんだろう。見当たらない。というか、
扇風機からのびているはずの電気コードが見えない。
電池式なのか。それにしては大きいぞ。かなりでかいぞ。
近くに寄って確認しようとした。う〜ん、違うな。
だって、どこにも電池交換用の蓋がない。と思う。
ん? それどころか、スイッチやつまみもないようだ。
どうなっているんだ??? 永久機関か?? そんな馬鹿な…。
それから気づいた。モーターもない!!
ますます不可思議、異星の物体か?
あっ、風でまわっているということか!
いやいや、風なんか吹いていない。吹いているはずがない。
だってここは土星と天王星の中間の虚空で、言うまでなく「真空」だからだ。
思うに、土星のカッシーニ間隙にあるメモリアルステーションの、
ひい爺さんの墓参の最中からどうも奇妙だったんだ。
爺さん、どうしてだか俺に借りを返したいって囁き続けっぱなし。
死んだんだよ、爺ちゃんよ、と言っても惚けてて分からないみたいだった。
どうも調子が悪い。今日って友引だったかな〜。
それはいいとして…。扇風機だ、問題は。
どうやって回ってるんだ、この羽根は…。
………
羽根? 羽根ってなんのことだ?? 羽根なんかどこにもないぞ。
ひょっとしてスピン?? そんなジョークは一部にしか理解してもらえないぞ。
羽根どころか、本体もない。ってゆーか、何にもないぞ。
どうして扇風機が回っている、なんて思ったんだろう???
ってゆーか、宇宙船にも乗ってないぞ、俺。
宇宙服さえ着てないぞ、俺。
もっと言うと、俺なんかどこにもいないぞ。
ああ、あれか。
「我思う、而して我在り」 な〜んだ。
ってゆーか、俺、思考もしてないみたいだぞ。
うちゅ


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桂枝雀に捧ぐっ Part2
Kuri, Kipple : 2004.02.24


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