(電話で…)
私の電話番号は忘れていいんです。
私の誕生日も忘れていい。
でも
いつもあなたを待っていることは
忘れないで下さい。
私の体のどこに傷があったか
すっかり忘れていても構いません
夜明けの街に這い出したとき
雨が降っていたかどうか
覚えていなくても構いません
でも
いつもあなたが心配なのは
忘れないで下さい
あなたに帰る古里がないのなら私の名前は忘れてもいいんです
わたしが古里です
休める家が壊れてしまったら
わたしが家です
眠れる夜が来ないのなら
わたしがベッドです
私の顔も忘れていい
他になす術もなく
ずっと抱き合ったままでいたことも
忘れて
でも
あなたを忘れられないことは
忘れないでいて下さい
泣きたくなったら私を
思い出して下さい
まだ
いつも
ずっと
待っていることを
忘れないで下さい