『没になった詩たち』

A TASTE OF TEARS


あの涙は誰のための涙?
あの涙は苦かった?
自分の口からは
                 何も言葉が出てこなくて
許してほしい過ちが
                 次から次へと出てきては
君の心を焦がした。
あの涙は自分のための涙。
あの涙は苦かった。

あの涙は誰のための涙?
あの涙は辛かった?
こうなるしかなかった僕を
                 痛いほど知っていたけれど
夜の帳に紛れては
                 陽の光を見上げられずに
僕の愛を投げ捨てた。
あの涙は僕のための涙。
あの涙は辛かったね。

あの涙は誰のための涙?
あの涙は甘かった?
生ぬるいゆったりとした流れが
                 君を眠りへ澱みへと誘う。
何処へ行くかは分からないけれど
                 気持ちよく流されて
君はそれに逆らう必要はない。
あの涙は彼のための涙。
あの涙は甘かった。

唇を濡らすあの涙を
                 君は拭おうとしなかった


Kuri, Kipple : 1996.08.05
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