電話じゃおやすみが言えなくて
次の話題を探してしまう
ああ、やたらと僕は喋りまくる
あのこの、このこと
あること、ないこと
ああ、僕は昔話を聞かせるために
君に電話したんじゃないだろう!
ただちょっと、声が聞きたかったんだ
いや、それでもない
何か、言いたかったんだ
言いたかったんだ、けど…
なぜひとこと言えないんだ
自信がない? 本心が分からない?
いや、もう苦しいほど分かってるよ
言葉にして、何が変わるのか
全然予想もつかないけれど
声に出して言いたかったんだ
君が先に言うのを待ってるのか?
保証つきでなきゃ告白できないのか?
…
ああ、ちきしょう、うだうだ考えてるから
君の話を半分も聞いてないよ
うん、うん、え? ああ、そうだよねえ
……
もし君が僕に質問してくれたらなあ
それを待ってるのか?
それじゃずるいぞオマエ
これじゃあいつまでたってもおやすみが言えない
また僕はしゃべりまくる
昨日のこと今日のこと
明日のこと君のこと
自分のことは? 恥ずかしいっての?
そりゃあないよね、その歳で
ほらほら!
今だよ
ああ、言えない
あっ、切らないで
だってまだ、君に
おやすみが、言えない
そのまえに
大事なことが
言えない