『没になった詩たち』

家族の食事と幽霊


この言葉少なの幽霊は
黙々と眠りを貪る
生きている隣人たちは
彼には目も呉れず飯を食う
コリコリツ
シヤクンシヤクン
ドクルドクル
美味いね
ガシガシ

彼はそれでも深い眠りの下

起きているのは 飯を食うその家族だけ
太陽も常夜燈を付けて寝ている
濃い紅の秋の花も目蓋を閉じた
風も鼾を掻いている
猫も夢を見ている
もちろん
ライオンも寝ている
そして彼もねている

グジユグジユ
プツプツ
美味いよ
ザクリ

ああ…

皆が目を覚ましませんように

この幽霊は時々 こんな寝言を言う


Kuri, Kipple : 1977.12.31
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