update 2012-03-09
図書館が出てくるSFリスト:ファンタジー&ホラー,妖しい本
ファンタジーとホラーの最新情報 |
「妖しい本」
(「妖しい本」の最新情報)
- 『リリス』ジョージ・マクドナルド
- 筑摩書房 , 1986(ちくま文庫)4-480-02091-8
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- 『図書室のドラゴン』マイクル・カンデル
- 早川書房 , 1992(ハヤカワ文庫FT)4-15-020171-4
- ・・・は、あれはSFじゃなかったか。 常塚@東大文学部さま
- 『平妖伝』 馮夢竜 太田辰夫訳
- 平凡社, 1979 (中国古典文学大系36)
- 『平妖伝』羅貫中 佐藤春夫訳
- 筑摩書房 , 1993(ちくま文庫)4-480-02742-4,4-480-02743-2
- 天帝の図書館の管理者である白猿神が、妖術の秘伝書「如意宝冊」を持ち出して下界でコピーを作り、これを使った妖術師達が乱を起こすという物語です。 久留@NTTさま
「正式の名は『北宋三遂平妖伝』。(略)北宋中ごろの農民蜂起を素材にして、明の羅貫中が二十回の小説『三遂平妖伝』をまとめ、それをさらに、明末の馮夢竜が四十回にふくらませた」
(『中国の古典・名著総解説』自由国民社, 1994)
- ラヴクラフトの「ダンウィッチの怪」等のCTHULHU神話作品
- (国書刊行会、青心社他)
- アーカムのミスカトニック大学付属図書館が重要
な舞台の一つになります。 久留@NTTさま
- 『はてしない物語』 M・エンデ
- 岩波書店 , 1985
- 主人公バスチアンの英雄物語を納めた図書館です、確か。
映画版『ネヴァー・エンディング・ストーリー』に出てくるか
どうかは知りませんが。 鈴木@名工大さま
- 『闇の聖母』 フリッツ・ライバー
- 早川書房 ,1979 (ハヤカワ文庫SF)
- 図書館と妖しい本が出てくるSF?
一応科学的に説明されていたと思いますが…
- 『ピポ王子』ピエール・グリバリ
- 早川書房 , 1980(ハヤカワ文庫FT)
- たぶん佳作ではないのだろう。
挿絵が内田善美でなかったら手にしなかった 渋谷@アイザックさま
- 『冬の夜ひとりの旅人が』イタロ・カルヴィーノ
- 松籟社, 1981(イタリア叢書)
- 筑摩書房, 1995.10(ちくま文庫) 4-480-03087-5
-
落丁のせいで読めなかった本の続きを探し求めて、物語が展開するんですが、
最後に中南米かどこかの図書館にたどり着きます。
作中、色々な小説のパスティーシュが出て来るんですが、『日本文学』の模倣
など、なかなか笑えます。 太田(む)さま
- 『図書館警察』スティーヴン・キング
- 文芸春秋 1996
- ジャンクションシティ公立図書館のアーデリア・ローツ主任司書の督促は効果抜群です。「図書館警察の厄介になるべからず!よい子は本の返却日をかならず守りましょう!」
- 『賢者の石』 コリン・ウィルソン 中村保男訳
- 東京創元社, 1971(創元推理文庫)4-488-64101-6
- p.47 ローシフォード公共図書館
- p.78,84,89,279 大英博物館図書室
- p.259 心霊研究協会の図書館
- p.279 ロンドン図書館
- p.331 レスター大学図書館
- p.385 ペンシルヴェニア大学図書館
- p.451 「古きものども」の図書館
(クトゥルーということでここにかきますが、あまりファンタジーというかんじじゃないですね) 岡本@名大図書館さま
- 「ロイガーの復活」 コリン・ウィルスン 団精二訳
- 『ロイガーの復活』早川書房, 1977(ハヤカワ文庫NV)
- 『ラヴクラフト恐怖の宇宙史』H・P・ラブクラフト+C・ウィルソン 荒俣宏編 角川書房, 1993(角川ホラー文庫)4-04-169019-6
- p.12 ペンシルヴェニア大学図書館(「賢者の石」p.385とおなじ図書館) 岡本@名大図書館さま
- 出納担当の女性司書は「ヴォイニッチ写本」の危なさに気がつかない(まあ、そんなものかもしれません)。余所事ながら目録担当者は無事だったんでしょうか…
なんていってたら『魔女の鉄槌』(もちろん原書)が整理に回ってきました(^^;
- 『十六歳の肖像』 栗本薫
- 早川書房, 1986(ハヤカワ文庫JA グイン・サーガ外伝 7)4-15-030233-2
- 『光車よ、まわれ!』 天沢退二郎
- 筑摩書房, 1987(ちくま文庫)4-480-02138-8
- p.40 国立図書館の夜間閲覧室 岡本@名大図書館さま
- 『魔法使い(ウィザード)になる方法』 ダイアン・デュアン 大出健訳
- 富士見書房, 1991(富士見ドラゴンノベルズ 67)4-8291-4167-0
- いじめっ子に追いかけられて図書館に逃げ込む冒頭は何かに似ているが(笑)、ク
ライマックスの生命の賛歌なんて涙ものです。 有里さま
- 『死者の書』 ジョナサン・キャロル
- 東京創元社, 1988(創元推理文庫)4-488-54701-X
- ゲイレン町立図書館。「牡蠣殻を思わせるピンクのラインストーンをちりばめた眼鏡をかけ,下ぶくれの頬に紅をさした」お婆さん司書。アビイにマーシャル・フランスの愛読書を教えてくれる。
#この図書館はニューアーク式なので貸し出した人の名前が図書カードに残っている。
- 『水の都の王女』上・下 J・グレゴリイ・キイズ 岩原明子訳
- 早川書房, 1997(ハヤカワ文庫FT237,238)4-15-020237-0,4-15-020238-9
- 王室図書保管室の司書、ガーンが王女ヘジのパートの全編にわたって重要な役割をはたします。本の修理、索引作り(そんな簡単なものじゃないと思うぞ)、配架の仕組みなどをヘジが教えてもらう場面>(上)p209
- 表題の王女がお城の地下の構造や王家(自分)の謎を調査するために図書館を利用します。
この図書館は偏屈じいさん(王女からみて)に管理されていて、王女は利用する取引き条件として、本の索引作りや傷んだ本の修理をさせられます。
図書委員だったときにしたラベル張りや本の修理を思い出させてくれます。(^^; 山田@niftyserveさま
- 『ヴァルデマール王国年代記1 女王の矢(上)』
M・ラッキー 笠井道子訳
- 社会思想社 , 1990 (現代教養文庫)4-390-11367-4
- 主人公は図書室があると聞くと、行きたくてうずうずしていた。 おむらよしえさま
- 『夏街道[サマーロード]』 早見裕司
- 徳間書店 , 1988 (アニメージュ文庫)4-19-669595-7
- 図書館は主人公たちのグループのたまりばになっている。図書館で「占い」をする。 おむらよしえさま
- 『水路の夢[ウォーターウェイ]』 早見裕司
- 徳間書店 , 1990 (アニメージュ文庫)4-19-669631-7
- 「夏街道」の続編。図書室の地下から、不可思議な水路が開かれる。 おむらよしえさま
- 『天と地の娘 根の国の物語1』 篠田真由美
- 中央公論社 ,1996 (C★NOVELS Fantasia)4-12-500435-8
- 主人公は図書委員で、異世界への扉が開かれる場所が図書館。 おむらよしえさま
- 『愛のゆくえ』 / リチャード・ブローティガン著 ; 青木日出夫訳
- 新潮社, 1975. (新潮文庫 ; フー20-1) 4-10-214701-2
- 早川書房, 2002.8. (ハヤカワepi文庫 ; 21) 4-15-120021-5
- 内容はもうすっかり忘れてしまったのですが、図書館が出てきます。
多分SFとは言えないでしょう。ファンタジーと言えば言えるかな?
栗山正光@筑波大学図書館部さま
- 「ここは人々が一番大切な思いをつづった本だけを保管する珍しい図書館。住み込み館員の私は、もう三年も外に出ていない。」ハヤカワepi文庫版カバーより。
- 『マーゴスの王』 デイヴィッド・エディングズ 宇佐川晶子訳
- 早川書房,1990(ハヤカワ文庫FT142 マロリオン物語3)4-15-020142-0
- デイヴィッド・エディングズのマロリオン物語には図書館が重要な役割を果たしま
す。
トル・ホネスの大学の図書室には親切な司書がいて予言書の検索を手伝ってくれます。
また、「図書館員が学問の基礎」なんて言葉も出てきます。 高橋誠さま
- 『図書館の怪人』 R.L.スタイン著 豊岡まみ訳
- ソニー・マガジンズ 1995.11(グースバンプス#8)4-7897-1035-1
- 「狼少年」もの(狼が来たぞ〜の方。ただし少女)。子ども向きの量産ホラーで全然こわくありません。
- ティンバーランド・フォールズの図書館は森のはしっこに建ち「3階建てで、黒い板ぶき屋根に、黒い石造りの小塔が屋根の両端に立っている」「まるで隠れるように、道路から引っ込んで木々の中に建っている。だから、なかはいっつも暗くて、寒い」とまさにお化け屋敷。司書のミスター・モートマンはちびでぶでいつも手のひらが湿っている。彼がおいしそうに蝿を食べながらモンスターに変身するところをルーシーは見てしまった…
- 「司書は、カード・カタログのカードが散らばるのが、なによりも嫌い」とゆーか、とっても困るんですけど、だからといって自分の正体がばれそうな時に必死でもとにもどしたりしないと思います(苦笑)
- 「刑務所のリタ・ヘイワース」スティーヴン・キング 浅倉久志訳『ゴールデンボーイ : 恐怖の四季春夏編』
- 新潮社 , 1988 (新潮文庫)
- 「マンハッタンの奇譚クラブ」スティーヴン・キング 山田順子訳『スタンド・バイ・ミー : 恐怖の四季秋冬編』
- 新潮社 , 1987 (新潮文庫)
- 『ファイアスターター』(下) スティーヴン・キング 深町眞理子訳
- 新潮社 , 1982 (新潮文庫)
- 『ゴールデンボーイ : 恐怖の四季春夏編』所収の「刑務所のリタ・ヘイワース」には、刑務所内図書室が、
『スタンド・バイ・ミー : 恐怖の四季秋冬編』所収の「マンハッタンの奇譚クラブ」には、異次元とおぼしき世界の小説家の著作の読める図書室が出てきます。
「マンハッタンの奇譚クラブ」には、この世に実在しない作家の小説に読みふける主人公、という点で、ジョナサン・キャロル『死者の書』1988 (創元推理文庫)に共通するものが感じられました。
- スティーヴン・キングの、よりSFな作品では、『ファイアスターター』のラストシーンで、チャーリーがニューヨーク市立図書館の司書に相談に行く場面が印象に残っています。
(下), p.356-357:
「 ... もしほんとうにむずかしい質問があったら、答えを知るためには図書館へ行くのがいちばんいい、なぜって図書館なら、まずたいていの質問に答えてくれるはずだから ... 」 林哲也@浜松医科大学附属図書館さま
- 『文字禍』 / 中島敦
- Quiet Press,1998
- Newton Book版はQuiet PressまたはNifty-serveのニュートン会議室から、プレインテキスト、HTML、エキスパンド・ブック版は青空文庫から入手できます。底本は『中島敦』(ちくま日本文学全集 筑摩書房 , 1992)とのこと。
- 私は10年前に『ことばの探偵』(安野光雅ほか編 筑摩書房 , 1988(ちくま文学の森 14))で読んだもののすっかり忘れていました。
- アシュル・バニ・アパル王の治世20年目のころ、ニネヴェの図書館に、夜毎あやしい話し声がするという噂がながれる。ナブ・アヘ・エリバ博士が真相をつきとめようと図書館にこもり、本を見つめつづけていると…。
粘土版時代の図書館員の苦労がしのばれます。
- 「彼女の図書館」 早見裕司
- 『黒ノ十三』綾辻行人監修 トンキンハウス 1996(プレイステーション用ソフト)
- 中学校に行けなくなってしまった千里は私営の古い図書館の手伝いをしている。この図書館には不思議な生き物たちがひっそり姿を見せ、しおりに描かれた唐子が話かけてくる…
著者様に読ませていただきました。多謝。
- 『ふしぎをのせたアリエル号』リチャード・ケネディ 中川千尋訳・絵
- 福武書店,1996.1(福武文庫)4-8288-5757-5
- “おとうさんやおかあさんのいないこどものくらしている”聖アンナこどもの家の図書室。正面玄関のすぐ左にあって、隣は応接室、廊下をへだてたすぐ前は職員室。先生たちの図書室でこどもははいれない。みっつの壁に革装、天、小口に金を塗った本がぎっしり。部屋のまんなかには樫の木の机、机の両脇にはビロード張りの椅子。窓際には長椅子がある。先生たちの密談の場所になっている。
- 『黄金の羅針盤』 フィリップ・プルマン 大久保寛訳
- 新潮社,1999.11(ライラの冒険シリーズ1)4-10-538901-7
- ジョーダン学寮の司書チャールズ氏と建物の外見がでてくる。
- 『火龍面舞』 朱鷺田祐介
- プランニングハウス , 1998 (ファンタジーの森)4-939073-05-X
- 魔道士学院大書庫とその女性司書<集計者>モーリンが登場する。
- 学院の候補生たちは大書庫の古鏡の門に1ヶ月間配属されて、各国の内政情報を整理する作業を行うことで、「現実を知りたければ、調査すること」「事実を知りたければ、分析すること」「真実を知りたければ、考察すること」を学ぶ。
- 延々と書架が続く大書庫。ここに収められている魔道書の中には、あるべき場所から勝手に逃走し、読み手の心を食らい尽くすものさえある。
- 読むことを禁じられたことから道を誤るという一点だけは共感できました。
- 『世界線の上で一服』 早見裕司
- プランニングハウス , 1999(ファンタジーの森)4-939073-13-0
- 亜影王が主人公に見せる100年先の図書館。大きな「天井の高い、古い洋館建築」年配の女性司書がいて、少女と香坂七夜の本について話す。
- 『夏の鬼 その他の鬼』 早見裕司
- エニックス , 2000(EXノベルズ)
- 1997年が舞台。学校図書館が登場する。
匿名希望さま
- 「ドライ・オア・フレッシュ」 瀬川ことび
- 『夏合宿』 角川書店 , 2001.3 (角川ホラー文庫) 4-04-352503-6
- 両親の南米土産の「干し首」をめぐる、ホラー。
- 干し首について調べにいった主人公にレファレンスする年齢不詳の司書。レファレンスの説明、相互貸借の説明。そしてインターネット検索。ちょっとプライバシーをばらしかけて「おっと、利用者の情報をもらしてはいけない」
まるでSF者としか思えない。SF者、ホラー者、オタク者の司書。私らにとって普通の司書でた!って感じ。 赤野正子さま
- 『ハリー・ポッターと賢者の石』 / J.K. ローリング ; 松岡佑子訳
- 静山社, 1999.12. 4-915512-37-1
- ホグワーツ魔術魔法学校の図書館が登場します。痩せて怒りっぽく、飢えたハゲタカのような司書のマダム・ピンスが守る図書館には「何万冊もの蔵書、何千もの書棚、何百もの細い通路」があり、一年生にはあまりにも大きすぎると感じられるほど。中でも「閲覧禁止」の書棚には「強力な闇の魔法」に関する本があって、先生の許可が無いと読むことができません。続巻『ハリー・ポッターと秘密の部屋』では先生を騙してその許可書にサインをもらい本を借り出す場面がでてきます。また、『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』でも図書館で勉強している場面がありますが、室内についての詳しい説明はありません。蔵書には『二十世紀の偉大な魔法使い』『現代の著明な魔法使い』『近代魔法界の主要な発見』『魔法界における最近の進歩に関する研究』『最も強力な魔法薬』など。
- 『海辺のカフカ』 / 村上春樹
- 新潮社, 2002.9. 4-10-353413-3, 4-10-353414-1
- 香川県高松市にある私立図書館
過去に生きる女性館長と、トランスセクシュアリティの図書館員。
主人公はここで夏目漱石をせっせと読むのであった。
でも、けっこう読まれているはずなのに、まだ誰も指摘してなかったのはなぜ? 本橋牛乳さま
- 『霊玉伝』 / バリー・ヒューガート ; 和爾桃子訳
- 早川書房, 2003 (ハヤカワ文庫FT; 330) 4-15-020330-X
- 架空の古代中国、唐の時代。僧院の書庫係が司馬遷の偽造文書の切れ端を握りしめて死んだ。犯人と目されるのは700年前に死んだ伝説の暴君。李老師と弟子の十牛が謎を追う!とお話は『薔薇の名前』で始まります。
- 元は砦だった哀谷の寺の書庫は正方形の部屋で「三方の壁ぎわに卓がすえられ、残りの一方の壁面は巻物の書棚だった。本は脇部屋にあった。部屋の中央は書庫係用の大きな円卓」があり、この影に被害者は倒れていました。扉は内側から閂がかけられ、小さな庭に面した「ほぼ床まで届く」脇窓の手首ほどの太さの鉄棒はねじ曲げられていた……。
- そして、殺された眇法師が偽造文献を売った先が世界一の書庫、長安の天恵殿。本物贋物を問わず収集し、「恐ろしく出来の悪い贋作でも、純粋に面白いというので保存しているものもある」。劉詳(リウシエン)書庫長は李老師と旧知の仲。
- 『架空の王国』 / 高野史緒著
- 中央公論社, 1997 4-12-002725-2
- 図書館が出てくるファンタジー(なのかしら?)に、『架空の王国』(高野史緒著、中央公論社)があります。
架空歴史物語なのでファンタジー、というべきなのか、ミステリというべきなのか、ジャンル分けが難しいですが、大学図書館で殺人が起こり、その謎を解いていくお話です。出だしから「本の匂い。」で始まる小説で、閲覧室や書庫やら、かなり本格的に図書館が出てきます。モデルはフランス旧国立図書館だそうです。全体として面白いかどうかはかなり微妙ですが、これを初めて読んだときには、「こんな図書館のある大学に行きたい!」と真剣に思ったものです。 さとるさま
- 「あやかしの声」 / 阿刀田高.
- 『あやかしの声』 新潮社,1999.4 (新潮文庫)4-10-125523-7
- 『あやかしの声』 新潮社,1996.8 4-10-334317-6
- p239「私」の妻の静子は「三十年このかた大学の図書館に勤めている」司書。最近、一人で書庫にいると幻聴があるという。
p240「昭和の初めに建てられた図書館だから、外側から見ても壁には蔦が絡まり、亀裂が走り、窓も薄汚れて、見るからに陰気臭い。」書庫は「墓場みたい」。
p251〜254「私」は出張の途中アレクサンドリア図書館の遺跡に寄る。そこで会った男のセリフ「本には命があります。言いたいことが沢山あるのに聞いてもらえない。書庫の中で囁いているんです。古い図書館はみんなそうです。」
- 阿刀田氏は中島敦のファンなので(『短編小説のレシピ』参照)、この作品は「文字禍」に対するオマージュでしょう。
著者略歴によると元国立国会図書館司書であり、デビュー作「記号の惨殺」(『過去を運ぶ足』文春文庫)も図書館を舞台とするミステリです。国立M図書館の閉架書庫でおきた殺人事件、被害者は出納係のプレイボーイ。男性閲覧係長が探偵役をつとめ、「ハイミス・エリート」司書が容疑者として浮かびあがります。
さらに「役に立ったこと」(『雨降りお月さん』中公文庫所収)と題するエッセイでは「主人公の職業を図書館員とすると、その人が一風変わった人格であっても、読者は(中略)納得してくれる。」とも書いています。(苦笑) 宮島史江@二松学舎さま
- 「地図をかかえて夕暮れの街へ」 / 瀬川貴次.
- 『実録・カトレア寮の怪』 集英社, 1998 (スーパーファンタジー文庫) 4-08-613321-0
- 主人公が古本屋で緑の表紙の地図を入手してから不思議なことがおこる。これは「絶対城」とよばれる図書館の蔵書だったから。なかなか本を返したがらない主人公に対して絶対城はポルターガイストで督促します。
p175「図書館だよ。万巻の書物を読みつくして絶対の妙境に到達するとかなんとか……それで絶対城」
「バベルの図書館っていうのがどこかにあって、そこには過去に出版された本すべてと、これから先出版される本までそろっているってはなしがあるけど、絶対城はその分室かもしれない」
p191「本来、絶対城の本は館外持ち出し禁止」
p192「過去出版された本はすべてそろっているような図書館ですから、蔵書の廃棄処分もありえませんよ」 宮島史江@二松学舎さま
- 「本」 / 小林泰三
- 『人獣細工』 角川書店, 1999.12 (角川ホラー文庫) 4-04-347002-9
- 読んだ者を狂わせる呪いの本『芸術論』、図書館も以下のように出てきます。
p182 事件がおきた当時の新聞を図書館で閲覧。
p252〜253 「名づけることが禁じられた土地、ゲリル」の野外図書館、雨にうたれて本が消える。
宮島史江@二松学舎さま
- 『爆れつハンターSpecial3』 / あかほりさとる
- メディアワークス, 1996 (電撃文庫) 4-07-305001-X
- p44〜47 キャロットはドーターに連れられてステラ教団本部の「本やらファイルやら書類やらがあたり一面、隙間なく並べられている」資料室に行き、ソーサラー紳士録を閲覧します。
閲覧しおえた紳士録を放り投げると、背後の「天井まで積み上げた本の山にぶつか」り、お約束どおり崩れてきた本に埋まります。 宮島史江@二松学舎さま
- 『帰還者―レブナン―』 / 中島理香
- 講談社, 1999 (X庫ティーンズハート) 4-06-199838-2
- 石川県南部の山奥の小さな町にある教会風(鐘もあります)の図書館が主要舞台。クトゥルーものです。
p43 外観は「三角形の屋根とほっそりしたシルエットの鐘楼に、正面には天使の彫刻入りのペディメントとバラ窓」「灰白色の石の壁には、スウォッグ(花綱飾りの彫刻)をほどこした大きな両開きのフランス窓が並んでいる。」
p77〜79「入り口を抜けると、そこは吹き抜けの円形ホールになっていて、部屋の中央に二階へと続く螺旋階段があった。」「ホールには、玄関を含めると前後左右に四つの大きな扉があ」り、「それぞれの扉の横には、案内板らしい大理石のプレートがかかって」いる。「下が一般図書関係で、二階が資料や専門書の類を置いている。学習室や、ビデオ鑑賞ができるのも二階」
p84「温厚そうな白髪の老人」である鬼原館長(男性)。
p92 女性司書の「広瀬は三十代半ばくらいの年恰好で、ややキツメの顔立ちの美人」 宮島史江@二松学舎さま
- 『悪魔たちの学園祭』 / 十々樹りえ
- 朝日ソノラマ, 1990.11 (パンプキン文庫) 4-257-75006-5
- p115〜116 市立図書館で十一年前の事件を調査します。図書館の隣には小さな郷土資料館もあります。
「閲覧室で、十一年前の九月の新聞を出してもらった」「一月分が綴じられた新聞の束は、保存がいいのか、ほとんど変色していない」
p118 主人公が通っている高校では「国語科準備室は、図書準備室でもある」
宮島史江@二松学舎さま
- 『こんなに緑の森の中』 / 谷山由紀
- 朝日ソノラマ, 1998.11 (ソノラマ文庫) 4-257768-55-X
- p51〜52 高校を中退した主人公が図書館で大検の受験勉強。
「すべてが「学生席」と「社会人席」に分かれている」のを見て、「集団に所属していないと、しばしば社会から排除されてしまう」と疎外感が残ります。結局社会人席を選びました。 宮島史江@二松学舎さま
- 「囁く者」 / アルジャナン・ブラックウッド ; 中野善夫訳
- 『怪奇礼讃』 東京創元社, 2004.7. (創元推理文庫) 4-488-55502-0
- ベッドと書き物机、洗面台、ソファ、それに天窓しかない屋根裏部屋。その部屋に泊まったジョーンズの元に囁く者たちが訪れる。
- このリストに入れただけでネタばれですが、ばれてどうこうという類いの話ではありません。本に囲まれるのが好きな人は必読。
- 『復活の儀式』上・下 / T.E.D.クライン ; 大瀧啓裕訳.
- 東京創元社, 2004.5. (創元推理文庫) 4-488-55901-8, 4-488-55902-6
- ヒロイン、キャロル・コンクリンはニューヨークの私立ヴーアリス財団図書館で貸出助手をしており、第一巻「前兆」の半分くらいはこの図書館が舞台。
- ヴーアリス財団図書館は「カーネギーが作った無料貸出制度に先駆けるもの」(年会費60ドルなのにこの言い方は変)で、チェルシー・ホテルから1ブロックも離れていない、通りの南側の青みがかった灰色の壁、高いアーチ型の窓が並んだ建物。19世紀英米文学のコレクションを持ち、2階には児童図書室もある。貸出責任者ミセス・テイト、副主任ミス・エルムズ、児童室の司書ミセス・シューマン、購入担当ミスター・ブラウンが勤務している。キャロルの勤務態度はかなり問題あり。
- 『未来少女アリス』 / ジェフ・ヌーン ; 風間賢二訳.
- 早川書房, 2004.6. (ハヤカワ文庫FT . プラチナファンタジィ; FT366) 4-15-020366-0
- 1860年からタイムスリップした1986年のマンチェスターが舞台のアリス物語。第8章はマンチェスター中央図書館/迷宮図書館(library/labyrinth = librarynth)でのドタバタ。アリスの本の扱いは誉められたものではありません。
- 受付の図書館員はカエル女で、ツイードのボンネットをかぶり、鼻眼鏡をかけている。返却期限遅れの罰金に175ポンドをアヒル男から徴集しようとする。
- 大きな円形の迷宮図書館は螺旋状の入り組んだトンネル構造で(バベルの図書館)、本はタイトルしりとり順に配架されている。「お静かに!」の貼り紙も閲覧席付近にあり。
- 「終夜図書館」/ 早見裕司.
- 井上雅彦監修『蒐集家(コレクター)』 光文社, 2004.8 (光文社文庫 . 異形コレクション ; 15) 4-334-73739-0
- その私設図書館は沖縄南部の田舎町青い空の下サトウキビ畑の下にあるのです外から見ると打ちっぱなしのコンクリートで公園のトイレくらいにしか見えないけれど一階には作家に必要な参考図書が過不足なく揃っていてそれだけでも驚きなのに特別会員にだけ許された地下書庫には今まで出版されたジュニア小説がすべて集められているんですしかもその下の階には。
- というような文体で書かれています。ジュニア小説蒐集家の館長が登場。この地下書庫は、ハヤカワ文庫を通し番号で並べて抜けが気になるタイプの理想です。
ありがちな展開(ごめんなさい)と思いつつ、最後のセリフでほろりと来ました。これはありがちな展開でなければならなかったのです。
- 「S倉極楽図書館」/ 笙野頼子
- 『片付けない作家と西の天狗』河出書房新社,2004.6.30, 4-309-01640-5
- 「S倉地下図書館」の入り口は、S倉(千葉県佐倉市)の神明神社にある。
主な利用者は小型四足獣(ハクビシンなど)であるため天井が極めて低く、カウンターでは司書(人間)が腹ばいになっている。利用者カードには個人認証のために各自の足型が押されている。また蔵書にも肉球のスタンプが押され、その形や大小によって図書が分類されている。
なお実在の図書館としては、作者が森茉里全集を読むために訪れたらしい鴎外記念本郷図書館・豊島区立中央図書館・豊島区立千早図書館の名が作中で挙げられている。 樺太労働局さま
- 『影のオンブリア』 / パトリシア・A.マキリップ ; 井辻朱美訳.
- 早川書房,2005.3 (ハヤカワ文庫FT . プラチナファンタジィ ; FT382) 4-15-020382-2
-
- 「言葉が彼女に飛びかかってきた。金色の,銀色の,そして赤色の。」
- 二つの図書室が登場します。一つはオンブリア大公宮殿の図書室。ローズウッドとガラスからなる優雅な書棚が並んでいます。
- もう一つはオンブリアの影の支配者,黒真珠ことドミナ・パールの秘密の図書室。小さな楕円形の部屋で本であふれた棚で埋まっている。並べられた本の題名は『既知の世界の地図』『隠れた島々に産する有用な植物とその扱いかた』『世の初めからのオンブリアの歴史』『事故死した人間の髪,歯,爪の保存法』『自然界の,あるいは人工的な毒物と解毒剤』など。本棚の裏には羊皮紙を丸めたものが転がっています。恐ろしいことに照明は蝋燭,もちろん,幽霊もいます。この部屋にマグは閉じ込められてしまいます。(2005/6/14)
- 「シチュー当番」/クラフト・エヴィング商會
- 『じつは、わたくしこういうものです』平凡社, 2002.2 4-582-82992
- 冬季の夜間にだけ開館する「冬眠図書館」の司書へのインタビューという形式をとった掌編。
架空の職業カタログである本書中、最も高い人気を誇る一章。
あとがきによれば、実際にこの図書館を開設してしまおうという声もあったとか。
樺太労働局さま(2005/07/09)
- 『図書館のキス Good News Boy 福音の少年』 / 加地尚武.
- ぺんぎん書房, 2004.12 4-901987-41-1
- パラレルワールドの二十世紀末、古代アレクサンドリア図書館を電子図書館として再生するプロジェクトが行われていた。魔法とコンピュータを用いて、散逸した蔵書の内容を復元するというものである。「査読魔法(サイコメトリーのようなもの?)」によって得た情報から仮想上の「著者人格」を構築し、図書館を模した仮想空間内で執筆作業を行わせることで復元は行われる。
仮想空間内には「姉妹図書館」もいくつか存在するが、現代文学の図書館は酒場の形をしており、飲んだくれの作家たちが集まっている。
この他に、主人公の父が市民図書館でマルチメディア体験コーナーを利用する場面もある。
なお、前作「福音の少年 Good News Boy 錬金術師の息子」で吸血鬼の古書店主が語る、図書館にまつわる思い出も印象深いものがあるが詳述は避けたい。 樺太労働局さま(2005/07/09)
- 『戦う司書と恋する爆弾』 / 山形石雄.
- 集英社, 2005.9 (スーパーダッシュ文庫) 4-08-630257-8
- 死者の魂が化石化し、石版状の「本」になる世界。
「本」は「神立バントーラ図書館」に収められ、異能の戦闘集団「武装司書」に管理される。
創世神話に由来を持つ図書館、本が発掘される「図書鉱山」など魅力的なガジェットの多い作品。
続編があるなら、この世界における図書館の有り様をもう少し書き込んで欲しいところです。
樺太労働局さま(2005/09/26)
- 「闇の天使」 / エドワード・ブライアント ; 真野明裕訳
- カービー・マッコーリー編『闇の展覧会 罠』早川書房, 2005.9 (ハヤカワ文庫 ; NV1092) 4-15-041092-5
- 語り手アンジー・ブラックはまずコロラド大学附属図書館の教養部門で『ペルシャ王ラキニの呪術』(ロンドン, 1685)の翻訳複製本を使ってある呪術のおさらいをする。ついでに貸出係に両替してもらって,公衆電話をかける。
しばらくして,地元のデンバー公立図書館に行ってラスベガスの電話帳の個人別の欄から復讐相手の住所を調べる。
- 「妖精のハンドバッグ」 / ケリー・リンク ; 柴田元幸訳.
- 「SFマガジン」2006年3月号 ; The Faery Handbag, c2005
- 「まるでゾフィアが図書館の女王様で,図書館員は請願に来た平民みたいだった。」
- すごく大きくて黒くてちょっとごわごわしているハンドバッグ。その中にはバルデツィヴルレキスタンがそっくりそのまま入っていると,世界最高の嘘つきだったゾフィアおばあちゃんは言うのだった。
- 図書館の本の延滞と紛失の常習犯だったおばあちゃん。カール・セーガンの伝記を盗んだところを図書館員に目撃された時,悲劇が起こります。(2006/01/29)
- 『オドの魔法学校』 / パトリシア・A.マキリップ ; 原島文世訳
- 東京創元社, 2008.2. (創元推理文庫) 978-4-488-52007-6 ; Od Magic, c2005
- 「司書ならわかるかもね。」(p.83)
- 王都ケリオールのオド魔法学校の図書室とその司書が登場する。図書室は階段の近くのだだっ広い一室。書架がそびえ立っており,床から天井までぎっしり本が詰まっていて最上段には「魔法でなければ届かないのではないか」(p.84)と思われるほどだが,実際ははしごを使っている。学生や教師の利用は多いが,書物が机に放置されることも多いらしい。
- 司書は痩身で白髪まじり,尖った鼻とばさばさの髪の男で,ブレンダンには「知りたがりだが親切な小鳥のように」(p.94)見えた。結局,探している植物を書物の中には見つけられなかったブレンダンに,歓楽街黄昏区なら手がかりが見つかるかもしれないと示唆する。
(2008-09-19)
- 『茨文字の魔法』 / パトリシア・A.マキリップ ; 原島文世訳.
- 東京創元社, 2009.1. (創元推理文庫) 978-4-488-52009-0 ; Alphabet of Thorn, c2004
- 「わからん。図書館のことを語った叙事詩はひとつもない。存続するかどうかは気まぐれのなせる業だ。」(p.80)
- レイン十二邦の王宮図書館が3つの舞台のうちのひとつ。初代の王が本好きであったことから始まった図書館は,海に面した宮殿の基礎部分にあたる崖を丸ごと掘抜いた街と化しており,巻物,石板,獣皮の書字板,写本など様々な資料が全土から集められている(いくつかの部屋は忘れ去られている)。司書たちは孤児を受け入れ,写字生として育てている。
主人公ネペンテスも司書に拾われた捨て子で,各地からもたらされた書物を翻訳する書記。背が高く、髪は鴉の濡れ羽色、皮膚ははしばみ色、瞳は時に緑、時に褐色。図書館内で育ち,外のことには無関心。同僚の書記で調べものが得意なレイドリー,怖がりのオリエルも登場する。
ネペンテスを拾った司書のデイモンは骨張った手をした,冷静沈着で髪の薄い、痩身の男。ネペンテスの未知の文字を解読する能力を高く評価している。(2009-01-12)
- 「図書館と七人の司書」 / エレン・クレイギス ; 井上知訳.
- 「SFマガジン」2009年12月号 ; "In the House of the Seven Librarians"
- ディンシー「また戻ってこられるよね?また物語が読みたくなったら」
オリーヴ「好きなだけね。いつでも大丈夫よ」
- 町のカーネギー図書館が移転新装オープンした日,七人の司書は生活必需品をまとめて古い図書館に入り、内側から鍵をかけた。「なんといっても司書だから」ひっそりと。静かな日々を送る彼女たちは,ある日,返却箱の中に延滞図書と延滞金代わりの女の赤ん坊を見つけた。
- 全編,古い公共図書館の中で物語は進む。成長していく少女・ディンシーを暖かく見守る,愛すべき司書たちと不思議な図書館。 (2009-12-24)
- 「シェークスピア奇譚」 / グレアム・マスタートン ; 夏来健次訳.
- R.E.ワインバーグ&M.H.グリーンバーグ編『ラブクラフトの遺産』 東京創元社, 2000. (創元推理文庫) 4-488-52311-0
- 「問題の手紙を見つけたとき、外は暗み、図書館のなかでは蛍光灯がつくころになっていた。」
- ロンドン、グローブ座跡の発掘現場から1600年代初頭のものと思われる死体が発見される。考古学者ダンは不吉な夢にうなされ、ケンジントン図書館から借りてきたシェイクスピア研究所を読む。その後、ストラトフォード・アポン・エイヴォンのシェークスピア記念劇場横の図書館で、シェークスピアの役者仲間ジョン・ヘミングズの書いたものを読み、ヨグ・ソトースの存在を確信する。
- 『ヴォイス 西のはての年代記2』 / アーシュラ・K.ル・グウィン ; 谷垣暁美訳.
- 河出書房新社, 2011.3 (河出文庫) 978-4-309-46353-7
- 「本はとてもたくさんあったので、積み上げられた本で、運河が詰まってしまいそうになりました」
- オルド軍に占領された都市アンサルの道の長の館、ガルヴァマンドの秘密の図書室が登場する。オルド軍は宗教的理由から文字を持たないため、アンサルの大学と図書館は廃墟と化している。人びとは密かにかつて大学と図書館だったガルヴァマンドの奥深くの秘密の部屋に図書を持ち寄って隠していた。主人公メマーは幼い頃から秘密の部屋に入る方法を体得しており、それを知った道の長から教育を受ける。
廊下の正しい位置で空中に文字を書くと壁面に扉が現れ、部屋に入ることができる。部屋の天井は高く、奥行きは深い。両側の壁にそって本棚が並んでおり、読書用のテーブルがある。入り口の方は明かり採りの窓から光が注いでいるが、奥に向かって天井が低くなり、暗闇の中に泉が湧いている。(2011-07-17)
- 『空の都の神々は』 / N.K.ジェミシン ; 佐田千織訳.
- 早川書房, 2011.10. (ハヤカワ文庫FT ; 537) 978-4-15-020537-9
- 「もし注意深く読めば、腐った知識の中にさえ真実はあるものよ」
「そもそもその知識が腐っていることを、知っていればね」
- 世界を支配するアラメリ家の空中都市スカイの宮殿の図書室が登場する。天井の高さは男の背丈の三倍、巨大な円柱と天井までの本箱(本棚?)の迷路で、アラメリの統治下にある各国の言語で書かれた書物が収集されている。神々の戦いに関する書物は、一段の幅が1.5メートル、高さは6メートルはあろうかというダークウッド製の6面の書架におかれており、秘密が隠されている。またアームン族の小柄な女性老司書が登場し、主人公につっけんどんに対応するが、実は知者クルエの仮の姿だった。(2012-03-07)
- 『失われた都』 ; 上 / ケン・スコールズ ; 金子司訳.
- 早川書房, 2011.9 (ハヤカワ文庫FT ; 535 . イサークの図書館) 978-4-15-020535-5
- 「わたしは失われていた文書の目録をつくり、翻訳して、複写しました。三日三晩をついやして作業にあたり、計算し、再計算しました。最後にチャルズ修道士のもとに戻り、作業の記憶をすっかり消去したのです。」
- 物語はアンドロフランキン教団の「大いなる図書館」が「七つの不協和音による死の呪文」によってウィンドウィアの都もろとも消滅する場面から始まる。そのため、図書館は登場人物たちの回想として描かれる。
図書館では「笑い狂いの時代」と呼ばれる世界の破滅から残った人類の知を集め、教団が管理し、密かに研究を進めていた。その知識は現在、わずか14体の目録作りと翻訳担当の鋼人(メタルマン)の記憶に残されるのみとなった。また、各地には「本の館」と呼ばれる教団によって管理され、武装兵に警備されている図書館があるらしい。(2012-03-07)
- 最新情報!
- 『アレクシア女史、欧羅巴で騎士団と遭う : 英国パラソル奇譚』 / ゲイル・キャリガー ; 川野靖子訳.
- 早川書房, 2011.7 (ハヤカワ文庫 ; FT540) 978-4-15-020540-9
- 「あたしは昔からカードルームより図書室が好きだ。」
- アレクシアが囚われたテンプル騎士団フィレンツェ管区の館の図書室が、実験の舞台やアレクシアの逃げ場となる。また、図書室の蔵書にはローマ時代の巻紙や鉛板もあるらしい。(2012-03-09)
- 「物語の結末」 / クラーク・アシュトン・スミス ; 大瀧啓裕訳.
- 『アヴェロワーニュ妖魅浪漫譚』 東京創元社, 2011.12. (創元推理文庫) 978-4-488-54104-0
- 「もしかして興味がおありでしたら、わしらの蔵書の中には、珍しい学術書、貴重な写本、異教徒やキリスト教徒のすぐれた著作、さらにはアレクサンドレイアの火災に寄る大惨害を切り抜けたものさえありますよ」
- アヴェロワーニュ年代記の第一作にして最も新しい時代を舞台とする物語。ペリゴンのベネディクト派修道院の図書室が登場する。部屋は天井が高く、書架にぎっしり本が並んでいるばかりか、テーブルの上や墨にも多量の書物が積み上げられている。パピルスや羊皮紙の巻物から揺籃期本まで所蔵し、イレール大修道院長は次々と主人公に貴重書をみせる。秘密の引き出しにはペリクレスからアパシアに宛てた書簡などの至宝とともに、黒皮の表紙の帙に挟まれた古フランス語の忌まわしい文書が保管されていた。(2012-03-09)
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「妖しい本」の最新情報
- 『砂の本』ボルヘス
- 集英社 , 1987 4-08-773089-1
- 『魔法の書』アンデルソン=インベル
-
- 国書刊行会 , 1994(文学の冒険)4-336-03597-0
- 妖しい本だけで良ければ
・ボルヘス「砂の本」
・アンデルソン=インベル「魔法の書」
もあります。登場する本がどう妖しいかは、読んでのお楽しみ:-)
(た)さま
- 『聖なる夜』 / ターハル・ベン=ジェルーン著
- 紀伊國屋書店 , 1996 4-31400750-8
- 先日、なんの気なしに読んだ小説ですが、後半の方に、主人公が出会う「人間図書館」という挿話があります。本物の図書館ではないのですが、リアルに描かれているのでとても面白いです。作品自体も秀逸です。
でも、この情報提供の主旨に合わないかもしれません。 須永和之さま
- 「死者の百科事典」 / ダニロ・キシュ ; 山崎佳代子訳
- 東京創元社 , 1999 (海外文学セレクション) 4-488-01625-1
- 短編集の表題作。
- スウェーデン王立図書館に案内されるとそこは建物全体が無名の死者の生涯を記録する「死者の百科事典」だった。
どの部屋もおなじ作りで、各部屋は事典のひとつひとつの文字あてられている。本は中世の図書館のように太い鎖で書棚の鉄の輪につながれている。ケルベロスのような守衛だけがいる。
- 『ダイヤモンド・エイジ』 / ニール・スティーヴンスン ; 日暮雅通訳
- 早川書房, 2001.12 4-15-208385-9
- ネオ・ヴクトリアの株主貴族フィンクル=マグロウ卿が孫娘の教育のために開発させた、ナノテクの結晶のような書物、『若き淑女のための絵入り初等読本』"A young lady's illustrated primer"をめぐる物語。この本は最初に本を開いた子どもにしか読めず、読み手の境遇や思考を取り込んで物語を成長させ、かつ読者を教育するインタラクティブ・ソフトであり、一種のネット端末でもあるが、外見はふつうの書物そっくりである。また、主人公ネルの本には、プリンセス・ネルが冒険で手に入れた本を集めた図書室と、この本の作り方を書いた『本の本』と、世界創造の書『種の本』がでてくる。(2002/1/20)
- 『薔薇の妙薬』 / 森福都
- 講談社, 1996.5(X文庫ホワイトハート) 4-06-255241-8
- ヨヒア公国の大公家には『未来の書』と呼ばれる預言書が建国以来伝わっている。この予言通りのことを行えば国の安泰が約束される、という。この書物は百年先のことまでは読めるが、それ以降については判読不能な文字で書かれている。しかし時の推移にあわせていつの間にか読める文字に変わる。なお、読むことができるのは大公、黒婆(大公家の未婚の女によって引き継がれる妖術師)宰相、十五歳になった大公家直系の公子だけと定められている。 宮島史江@二松学舎さま
- 「トトカミじゃ」/ 古橋秀之
- 『ある日、爆弾がおちてきて』メディアワークス, 2005.10 (電撃文庫) 4-8402-3182-6
- この短編集所収の「トトカミじゃ」(p.113-151)は、中学校の図書館(< 作中の表記のまま)の奥にある神棚本棚に祀られている、BLなライトノベルを備えられる少女のような姿の神様・トトカミと図書委員会の役職の一つ・禰宜に据えられた少年の、(中学校の中では)ほんの数ヶ月の物語です。そして図書館の主のような司書教諭の死と共に図書館が改築されて、蔵書の一部が放出された後、少年と別の図書委員の少女はある場所に出てくるお化けの情報を聞いてその場所に向かうのですが、そのお化けは小さな女の子と老人の二人連れだというのです。 糸野泰輔さま
- 最新情報!
- 『黄衣の王』 / ロバート・W.チェイムバーズ ; 大瀧啓裕訳.
- 東京創元社, 2010. 978-4-488055302-9
- 「第一幕を読みおえたあと、読むのをやめたほうがいいような気がしたことをおぼえている。」
- フランス政府が押収し、各国で発禁になり、教会から新聞から排撃された戯曲「黄衣の王」。
「評判を回復する者」「仮面」「黄の印」の登場人物たちは好奇心から、あるいは愛する者のため破滅をもたらす戯曲を読んでしまう。 (2011-05-16)
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