いままでの言葉: 2013年
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- 12月の言葉:「『ティル・オイレンシュピーゲル』の話のなかに、名前はでてこないけれども、明らかにブレーメンだと思われる町の話があるんです。オイレンシュピーゲルはそこにやってきて、十数日間泊まって、この町の人間のことは全部わかった。いろんなことがわかって、うんざりしちゃって、小石をいっぱい拾ってきて、道路にまいて歩いた。」 by 阿部謹也
- from 網野善彦, 阿部謹也『対談 中世の再発見: 市・贈与・宴会』(Kindle版)(平凡社, 2012.1)
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- 先月、クリップしたものもEvernote (プレミアム一ヶ月特典付き登録)サービスが終わったら云々とか書いてたわけですが、Kindleのハイライトって便利〜(<ぉぃ)。まだローカライズされてないんで、文字が化けたりするけど、他の人の公開ハイライトも見えるし面白い。Kindle本自体に公開ハイライト表示させると超うざいですけどね。
なんか、iPad mini にしようか、iPod touch もそろそろ買い替え時だし、とうだうだ迷っていたらKindle Paperwhite (2013モデル)ポチっていたという謎行動(ポイントがついている間に、という心理も)。すでにiPod Touchの青空文庫リーダー「豊平文庫F」で何冊か読んでいるので別に電子だからどうということもなく、どっちかっていうと有料のくせにこの版面は何?!みたいなことあって、平凡社さんにアットマークツイートして「頑張り、ます」というお返事をいただくという厚かましさ。
- そういうずうずうしさも齢を重ねるよいところなんでしょうね。逆にティルみたいに「いろんなことがかわって、うんざりしちゃって」ということもあるけど、それだって「わかった」つもり、かもしれないしね。
- ちなみに、Kindle版とePub版で値段が違います。Chromeに電書サーチ機能拡張をインストール済み(除法の取得にタイムラグがあるようなので要注意)。この辺もケチ臭い(^^;
- 11月の言葉:「じゃあぼくたちは、先祖が本を燃やした理由を誤解していたわけだ」 by ヤム・ハーディ
- from マイクル・コーニイ ; 山岸真訳.『パラークシの記憶』(河出書房新社, 2013.10)
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- この惑星の知的生命であるスティルク(ほぼ人間)たちは記憶葉という器官を脳に持っていて、男性なら父方の、女性なら母方の記憶を受け継いでいて、何代記憶を遡れるかで優劣がきまるような社会に生きています。で、産業革命以前の生活をしているわけですが、書物というものを存在は知っているけれど持っていません。それは、絶対記憶を得たので必要なくなったから、という神話で説明されていたのですが、実は暖をとるためだったという。まあ、突っ込みどころではあります。
- デジタル化がどんどんすすめば紙の本はいらなくなっちゃうかもしれない。私もガジェット好きとしてEvernote (プレミアム一ヶ月特典付き登録)にせっせとWebクリップなど溜め込んでいますが、さて、サービスが終わったら?あるは、スティルクの世界みたいに電子機器が使えなくなったら?まあ、和紙は千年持つとは言っても、それなりの(冷泉家の蔵とか!正倉院とか!)場所と管理が必要なわけですが。もちろん、燃やしちゃダメ。
- 10月の言葉:「どうにかしてこのしょっぱい仕事から僕を逃しなさいよ!」 by フォスフォフィライト
- from 市川春子『宝石の国』1(講談社, 2013.7)
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- 漫画は基本的に単行本最新刊を読みます。次の巻が出るまで手に入らなくなっちゃうから(^^;
- 特異体質でどじっ子の主人公が、金剛先生に与えられた博物誌作りの仕事が嫌だ嫌だといいながらふらふらしています。フォスフォフィライトってググってもWikipediaがトップに出てこないって意味でも珍しい<ぉぃ。
この漫画、独特の作風なんで、手放しで面白いとかお薦めとは到底、言えないんだけど、amazonのレビュー欄が毀誉褒貶で実に面白いです。
- フォスは仕事始める前から嫌がってますが、若い人たちのやりがい探しも似たようなもんじゃないかなと。ずいぶん長く働いてるし、仕事は面白い(こともある)けど、やりがいってなんだろうなーって。感謝されれば嬉しいけどさ、それを追求しちゃいかんでしょ。
- 9月の言葉:「もちろん事実じゃない。神話だ。ぼくがこしらえたんだ。」 by ウォルター・カムストンの遺言に記されたチェスター・カムストンの言葉
- from クリストファー・プリースト ; 古沢嘉通訳「ピケイ(2) たどられた道」『夢幻諸島から』(早川書房, 2013.8)
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- たまには最新刊も読みます(^^;
- 『ドリームマシン』『奇術師』『逆転世界』『魔法』『限りなき夏』と結構読んでる割に、読み終わると中身を忘れてしまう、夢みたいなプリーストの最新翻訳から。かろうじて、『奇術師』に二人のマジシャンとテスラがでてくることは覚えてる、というね。
- 小説家チェスターは信用できない語り手の一人で、自分の設定に囚われて恋する人を追っていくことができない。ところが、この物語自体、ガイドブックという存在が時間をのっぺりさせてしまうことを利用(悪用)していて信じられないという。たぶん、ドリーム・アーキペラーゴはイギリス諸島なんだろうけど、この世界でもあるんだろうなと思いました。
- 8月の言葉:「むしろ、こうした当たり前のコミュニケーションこそ「非日常」であり、最上のフィクションになっている可能性がある。」 by 岡本健
- from 『n次創作観光 : アニメ聖地巡礼/コンテンツツーリズム/観光社会学の可能性』(NPO法人北海道冒険芸術出版, 2013.2)
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- 氷川竜介さんがこいこんでおっしゃってたけど「教室に机がずらっと並んでる絵」は上手くいって当たり前、失敗すると悲惨なことになるんだそうです。
- 数年前、機関リポジトリ界隈で話題となったらき☆すた論文著者、満を持して?の単著です。人文社会系は単著だしてなんぼだそうなんで、例え版元が北海道のNPO法人でも(そういう偏見はよろしくないと、日経で社会学業界の人が書いてたけど、書いてたってことはあるんだろうね)、すごいことです。
- で、まず年表と地図を!いや、そういう資料本じゃないのはわかってるんだけどさ(^^; なんか隔靴掻痒感。
ざっくりいうと、観光っていいものですねってことが熱く(暑苦しく)述べられてるのですが(<雑破すぎる)、博士論文を大幅に修正したと書いてあるけど、「聖地巡礼本だ〜」って飛びついた学術論文読み慣れてない層には歯ごたえありだし、観光社会学の人には「おた芸????」だろうし、誰向けかよくわかんないなーと。学術論文は自炊担当だっただけで、ろくに読んだこと無いんから偉そうなこと言えないんだけどね。
形式的なことでは、細かいことでは「ブーアスティン」だったり「ブーアスティン氏」するのはなぜ?、引用文のポイント落とし過ぎとか。あずまん、うのつねが参照されてるよってそれだけでにやにやしちゃうけど。
- まあ、私自身は日常生活アニメは好みじゃなくて、この本で巡礼対象となってるアニメは一本もまともに見たことがない(OPだけ見て止めたとか)ので、リアルを舞台にしても聖地巡礼が{成立する|しない}{成功する|しない}あたりに突っ込んでほしかったなという感想です。
- 7月の言葉:「いまでは、ユーザーの音楽の趣味から、音楽以外の好みも予測できるようになってきました。」 by ジム・ルケーシー(The Echo Nest CEO)
- from WIRED VOL.8 「Music of Our Times」
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- 「こういう音楽趣味の人は、政治的にはこのカテゴリーで、映画だったらこのジャンル、ゲームだったらこれが好き、と行った具合」なんだそうです。あいかわらずのWIRED記事なんで、この会社がデータをどう集めて、APIをどう売って稼いでるのかいまいち、よくわかんないんだけど(^^;
- No Music, No Life、なにそれ?ってくらい音楽に関心がない人ですが、これは逆にそうかもと思いましたね。つまり、軽く音楽を{買う|聴く}人、つまり世間の大部分のほうが色々リンクしちゃうだろうなと。iTunes に入ってるのはアニメ、80年代洋楽、アイルランドに偏ったトラッドてなぐあいで、全部、リンクしてる。ま、自分を普遍化しちゃあかんのですが。
- ところで、紙の雑誌を買った人は無料でダウンロードできるデジタル版という名のただのPDF、見開きの片方が全面広告だとグレイバックのロゴだけ頁になってて著しく読書意欲を削ぐし、目次から記事に飛べないし(iBook がいけないのかと思ってKindleにも送っちゃいましたよ)、IDEAS+INNOVATIONなWIRED的にはOKなんですかね。
- 6月の言葉:「貴殿がわが正体を一般読者にお洩らし被成し一事は甚だ迷惑に存居る次第に御座候、蓋し苟くも記録管理人たる拙者の職務に種々面白からぬ支障を招くのみか、委員会にて五月蝿き物議を醸し、火蛇は如何なる程度の法律的義務ありや、従って官吏として如何なる程度の誓約をなし得るものなりや、…」 by 王室記録管理人実は火蛇のリンドホルスト
- from E.T.A.ホフマン ; 石川道夫訳「黄金宝壷」(東雅夫編『世界幻想文学大全 幻想小説神髄』(筑摩書房, 2012.12)
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- 幻想小説ファンからネ申!と評されている東編集長の『世界幻想文学大全』、ようやく小説篇2冊を読了。幻想さんというより怪奇くんだった自分を再発見しています(^^;
- で、これを今読んで面白いかは別にして、リンドホルスト氏の苦言はネットの時代には身につまされるものがありますな。
- 問題は新訳を2009年5月に読んでいるのに全然、覚えてない!スラップスティック、というメモは残してるんだけど。でも、たぶん、この文体は忘れない。解説で引用されている川村二郎先生のおっしゃる「厳密性に関しては相当に疑点のあることも諒解」した上で、「訳文を愛する」というのはありだと思う。古典新訳文庫にお世話になっていますが、平明さは時に記憶に残らないことに繋がるのかも(単にボケてるだけとも)。
- 5月の言葉:—なぜ風味やアロマについて語る人がこれほど多いのでしょうか?「アロマや風味について語ることのほうが、詩的だと思っているからさ」by ジム・クラーク
- from Jeff Potter著 ; 水原文訳『Cooking for Geeks : 料理の科学と実践レシピ』(オライリー・ジャパン, 2011.9.)
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- こんな実も蓋もないワインの選び方は初めて読みました。「風味はボーナスのようなものだ。アロマは、取り合わせに関しては他の要素ほど重要ではない」そうですよ!言われてみりゃ、酸度や渋みの方が食べ物と合わせる時には気になっていたよ!
これは、と思ったの一般ピーポーに説明する時は、業界筋の「事前の了解」を前提にできない、というところ。あたりまえなんだけどね。
- 日本語版発売当時から読みたいと思っていた一冊で、生協で15%引きになっていたので購入。レシピ集として役に立つかと言うと、?マークがつきますが(この説明じゃ初心者は作れない)、技術者的アプローチというか、日本的に言えば実験くんにクスッと笑えました。ちょっとだけ、ホイップクリームメーカーが欲しくなったし(^^;
- 4月の言葉:「ちくと待てい 俺が頭か/聞いておらん」「え だって こないだ 真ん中 座ったじゃない」by おとよ&よいちー
- from 平野耕太『ドリフターズ』2 第12幕 アクティブ・ハート (少年画報社, 2012.10.)
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- こういう梯子の外され方ってあるよな、と思いつつ、豊久のように我が道を行くのもありか、とか、この季節だけに思ったりして。もちろん、のぶのぶに「お前は本当に残念な子じゃのう」と言われても、めげない心は必要ね。
- 第1巻が出た時から評判だった、平野ヘルシング耕太の『ドリフターズ』。3巻が出てわーっと平積みになってたのでまとめ買い。このくらいで買わないと、まず読まないからね。
感想。面白い。みんないい人に見えるけど(え?)、この人たち、オルミーヌにいたるまで同じ職場にいたら迷惑、ちょー迷惑と思いました。あとは戦さ馬鹿だよ!全員集合でドリフなのかなーとか、サブタイトル、アニソンばっかじゃん、この人は…とか(^^)
- 3月の言葉:「彼は最初のうちは驚きながら、それからだんだんと憤りを感じながら、自分の行為を平凡で市民的で日常的なものにまた戻してしまう熱心な試みを聞いたのである。」
- from デュレンマット ; 増本浩子訳「故障 : まだ可能な物語」『失脚/巫女の死 : デュレンマット傑作選』(光文社, 2012.7.)
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- 本の帯(腰巻)を信用することはまず、ありません。が、あちこちで絶賛されていたので購入。「トンネル」は筒井康隆(初期)なら抱腹絶倒だったろうな、「失脚」旧ソ連か、ふーん、それで。ところが、「故障」では予想外(ふだん読んでいる怪奇小説だとこのオチにはならない)、梯子外され外した方は外したと思ってない凄い凄い、オイディプスの悲劇の謎解き「巫女の死」はほーっと。うん、やはり、途中で投げちゃもったいない。
- あきらめること、途中で投げ出すことは倫理的に非難されるけど、ほんとは功利的に批判されるべきことだと思いました。ま、時間の無駄はあるけどね。
- 2月の言葉:「このとき同寺に伝来した他を圧する膨大な文書も消失したと思われ、後の中世史家は残念だ残念だといいながら、勉強する量が減ったことに内心ほっとしているとも言う。」
- from 本郷和人『人物を読む日本中世史 : 頼朝から信長へ』(講談社, 2006.5.)
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- とても面白かったのに視聴率がふるわなかったNHK大河ドラマ『平清盛』歴史考証担当のお一人、本郷先生の著書から、信長の叡山焼き討ちの下り。ふざけた文体ながら大御所の学説に反論していたり、お茶目な外見に似合わず、なかなか硬派な先生です。
- いまの勤務先は尋常ならざる物持ちの良さで明治時代の事務文書が残ってたりするわけですが、まあ、普通は信長ほど乱暴はなくても記録というのは消えていくもんです。さもなきゃ、人類、記録に埋まって死んじゃうよ…というのが電子媒体の長足の進歩って奴で心配なくなったわけですが、はてさて、どうなんでしょうね。もし、ツイッターやらのくだらないつぶやきが1000年先にまるっと残ってしまったら、歴史研究はどうなるんだろう…。もう人物研究なんてどこで切るかで論争になるレベルじゃないかと。消えることにも価値があるよねって。
- 1月の言葉:「ただ腰掛けるのみにて、座敷にも上がらず、今時分、夜の長き時は、かえって伽の者となる故、好都合じゃ」
by 泉屋銀七の母・妙心
- from 「小面の怪」『江戸奇談怪談集』 / 須永朝彦編訳. (筑摩書房, 2012.11)
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- 母親の隠居所の留守番に泊まった銀七、幽霊みたような女が現れて生きた心地もせず、家へ帰って母に話すと、このとおり。『御伽厚化粧』の著者・筆天斎も女なのに剛胆というべきか、年寄りは鈍感なのか、とにかく「怪しみをみて怪しまざるゆえ、災いに与ることもなくて」とまとめていますが、後期高齢者と同居してると後者だろうなと(笑)
- ま、毎年書いていますが、それでも鬼面人を驚かしてくれる、すばらし物語に出会えますように。
- 今年の年賀状:蛇にまつわる縁起のよいお話も思い浮かばず。蛇→アダムとイブという連想でりんごにしました。聖書史学では違うらしいんですが。
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