いままでの言葉: 2011年
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- 12月の言葉:
「ミァハはネットの全書籍図書館(ボルヘス)から読みたいテキストのデータをダウンロードして、わざわざ製本業者に書籍化してもらっている。」by 霧慧トァン
- from 伊藤計劃『ハーモニー』(早川書房, 2010.12)
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- うーん、やっぱり伊藤計劃は向いてないみたい。つまんないことに引っかかって(なんでアイルランドの治癒神なの?ミァハは涼宮ハルヒのなの?)物語に入り込めない。歳とともに丸くなってるから(笑)、これ凄いという子どもたちのことは生温く見守れるけど(もうムキになってあれは、これはとは言わん)、まだSF小説では思考停止して楽しむ域まで達せないや。
- この時代、といってもシェパード大尉がやらかした30年後くらいで、あの大国がぐじゃってそんな簡単に世界は復興できるのかよ、という突っ込みはおいとくと、紙の本は趣味人が細々と残っている業者に自分用に作ってもらうものになっているらしい。なんでこの時代の若い娘が本の形にこだわるかは、まあ彼女の設定を補強するものなんでしょう。とはいえ、そういう形でも紙の本は消えないだろう、という推測には大賛成で。とはいえ、老眼には電子書籍の方がラクなんだよねー。やれやれ。
- 11月の言葉:
「「芸術は欺瞞するところが多ければ」、とツッカーリは重ねていう、「それだけいっそう完全なものとなる」。」
- from グスタフ・ルネ・ホッケ ; 種村季弘、矢川澄子訳『迷宮としての世界 : マニエリスム芸術』(岩波書店, 2010.12)
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- 20年前には読み終わってなきゃいけなかった本を、1年近くたらたらと読んでいるわけです。これが退屈で。下巻までいくと、おなじみアルチンボルトなんかが出てきて面白くなるらしいんで、がんばってるところ。60年代の人たち良く読んだよね。翻訳がどうこうじゃなくって、これはドイツ人の文章がまだるっこしいんだと思う。
- やっぱり、マニエリスムってくねくねしてるだけあってキャラが弱いのかな。芸術論はほとんど読まない、というか読んだことある方を数えた方が早いんだけど、『魔術の帝国』はほぼ同じ時代を扱っているけど、超個性的キャラぞろいだったし、『象徴派芸術』はカッコ付け過ぎで高校生はもうめろめろ(笑)だった。
- 10月の言葉:
「文字はフジワラという名前のトウフ・ショップが使っていた車であることを物語っている。」by クラヴィス・シェパード大尉
- from 伊藤計劃『虐殺器官』(早川書房, 2010.2)
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- ご安心ください、東欧の戦場で50口径をとりつけられているのはハチロクではありません!
- 去年あたりから流行っているビブリオバトルで、学生さんたちがあんまり『ハーモニー』連呼するものだから、『虐殺器官』をまず読んだ天の邪鬼です。残念ながら、びんとこず。リーダビリティは高いと思うし、こういうくすぐりも目配せしてるって印象も無く、上手い人だなと思う。なんというか他人がゲームで淡々とステージをクリアしているのをみるような感じ。それもまた、文体も含めて作者の企みだとわかってしまうところがねぇ。第三世界(って今は言わないか)の悲惨は先に『EDEN』で見てるわけだし。途中で『幻詩狩り』じゃん、と思ったのも敗因かな。そもそも、ときメモをやってないのがいけないのかも(笑)まあ、SFマガジンのバックナンバーひっくり返して2短編は読んだし、『ハーモニー』も買いましたけどね。
- これがあんなに評価されるのは、やはり壮大さが空虚に感じられる時代故なのかなぁ。ま、この程度の感想はamazonの110個の感想の中に絶対あると思うのさ。
- 9月の言葉:
「おまえ…カタカナ使えば頭いいと思ってんだろっ」by 如月弦太朗
- from 『仮面ライダーフォーゼ』第2話「宇・宙・上・等」(2011/9/11)
- 節電の夏で、早く帰る…はずが残業必死の時間に打ち合わせが入ったり、なんだかんだで夏休みの宿題が終わらなくて8月49日をやっちまったり、ほんと、システム開発って嫌ですね。いや、この「すべてOJTですっ、体系的知識?なにそれおいしいの?」な人に仕様書書かせざるを得ない状況がね…。ええ、ほんとげんたろーくんの言う通り、カタカナでごまかしちゃいけません。
- というか、労働時間削減を言うなら、思いつきで組織をいじらず、はなから3月90日を認めてりゃいいんだよ…ぶつぶつ
- 8月の言葉:
「きわめて限定された機能――会社を規則通り運転する能力――しか持ち合わせてない人の形をした自律作業体。」
by 菜摘夏海
- from 北野勇作『かめ探偵K』(アスキーメディアワークス, 2011.5.)
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- 節電の夏ですので定時退庁が完全励行が叫ばれております。ほんと変な日本語だよ、“完全励行”って。
で、明るいうちに帰る(と言っても7時近いんだけど)と、妙な罪悪感を覚えるのは何故。オレも立派な社畜、いや官畜、は嫌だな、館畜になっちゃってるってこと?
- かめ探偵はレプリカメではないのか、それとも信頼できない語り手がぼかしているのか、そんなことはどうでもよくなる、終末後の世界のお昼寝ストーリー。北野勇作、最高!
- 7月の言葉:
「The future is already here. 未来はすでにここにある」
by Chris Anderson (1961- )
- from 長崎義紹「クリス・アンダーソン、WIREDの神髄を語る」WIRED Vol.1 (コンデナスト・ジャパン, 2011.7)
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- 年寄りなので、この前のWIREDの創刊号を買っている上に、その中にはブルース・ブラザーズばりにカッコ付けたエヴァ前夜のGAINAXの皆さんが載っていたことを覚えている上に、なんかかつてギブスンやらスターリング目当てに買った"OMNI the Science"を彷彿とさせるし、同じように読みにくいねぇと思ったことまで思い出しちゃいましたよ、相変わらず読みにくい紙面だし。目次と記事のタイトルが一致しないのも図書館や泣かせ。目次にはクリス・アンダーソン「未来はすでにここにある」とあるけど、指し示されたp.111には「変わり続けろ Change is gool. Chris Anderson on Wired クリス・アンダーソン、WIREDの神髄を語る Text by YOSHITSUGU NAGASAKI」だって。どう著作権法に定める「正当な」引用をしろと。いいのか、西海岸メディアはcopyleftか(大笑)
- つまり未来は既に存在して今は過去を生きているんだ、なんてことではなく。人間に記憶があり、メディアがそこにある以上、天が下に新しきもの無し、ということを容易に引き出せるようになるって、つまり蘊蓄屋になるくらいが齢を重ねるってことなのだろうね。
- 6月の言葉:
「残念ながら流し読みや速読では、読んだつもりになっているだけで、文体はまったく賞味できない」
by 大瀧啓裕 (1952- )
- from 「斬新多彩な神話群 : Clark Ashton's Myth」クラーク・アシュトン・スミス『ヒュペルボレオス極北神怪譚』(東京創元社, 2011.5)
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- 蒸し蒸し湿っぽく暑くなる季節に、どんどん寒くなって凍って滅ぶ世界の短編集はいかがでしょうか。
クラーク・アシュトン・スミス、ラブクラフティアンならクラカシュ・トンを最初に読んだのは国書刊行会から出た『呪われし地』。同じころに『イルーニュの巨人』も出て、同じ短編でも翻訳によってずいぶん感じが変わるものだと、大学生になって知ったという(^^;
- で、翻訳者の方のお言葉です。大瀧さんの訳業は『ゾティーク幻妖怪異譚』はもとより、『黄衣の王』『悪魔の花嫁』と他の人は訳さないよ、というのをがんがん出してくださって感謝しても感謝し足りないんですが、解説が…ねぇ。もうちょっとものは言い様というか。
で、日夏耿之介や平井呈一はOKなのに、どうして鼻白むのだろうとつらつら考えるに、どこかこう、日夏の「一笑」みたいな余裕が感じられないからかなと。いやいや、自分は大瀧さんに比ぶべくもない浅学非才なんだから、偉そうなことを書かないように気をつけなくては。
- 5月の言葉:
「静物画のモチーフは驚くほど限定的であり、長い因習による呪縛には根強いものがあるのだ。」
by 宮下規久朗 (1963- )
- from 『食べる西洋美術史 : 「最後の晩餐」から読む』(光文社, 2007.1)
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- 多少、西洋美術史を齧っていればフランドルにの静物画が寓意画だというのは常識ですが、その背景のキリスト教が食事に対しても「最後の晩餐」を頂点にきちきちと善悪を規定せずにはいられなかった、ま、考えてみれば旧約聖書の偏執的なあれ食うなこれ食うなが源流の宗教でした。不惑を越えたばかりで、すでに痛風と膵臓を患ったという身体を張った?宮下先生の講義、堪能しました。
- 引用はアンディ・ウォーホールのキャンベル缶の章から。いま、この国は変わる、脱原発だ、エコだとかますびしいのだけれど、変化というのはそんなに一気にはこないし、揺り返しだってあるよねと、暑くなるだろう夏を前に思うわけです。
- 4月の言葉:
「『最悪というのはよくない言葉じゃな。』と、わしはじいさんにいった。」
by ガンダルフ
- from 『指輪物語 : 旅の仲間』(評論社, 1992.7)
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- エルロンドの御前会議、ガンダルフがどうして到着が遅れたかを延々と説明する中で、フロドの引っ越しについて「最悪の変わり方」と嘆くギャムジーのとっつぁんをたしなめる言葉です。
- 98で死んだばぁさまが女学生の頃、関東大震災にあった時、大地震は60年周期といわれてまぁ、その頃はあたしおばあさんね、と思ったといっておりましたが、それから20年以上たって違うところが震源でやってきました。いやいや自分が現役のうちに書架の本が8割方落ちるような地震がやってくるとは思っても見ませんでしたよ。まぁ、天井が落ちるとか機械室に滝ができるとかいきなり何時間も停電するとか、普通の図書館では考えられない事態にこの3年くらいで遭遇しまくっているわけですが。個人的にはmixi日記に書いた通り、たいした被害はありませんでした。しかし、この後の生活は原子力発電所のことも含めて五里霧中という感じで、それは関東以北青森以南の人間に共通のもやもやとした不安なんじゃないかと。
- この会話の時、とっつぁんの知らない世界でどんな大事が起こっていたか、そして、渦中にいる我々はとっつぁんと似たような立場だってことは肝に銘じて暮らしていくしかありませんね。
- 3月の言葉:
「一体成功といふことばかり目がけて用をする人間が殖えると,彼等は成功さへすればいゝんだから,為さざるところなしといふことになつて,自然反撥作用を生ずる。」
by 三田村鳶魚 (1870-1952)
- from 「侠客の話」(柴田宵曲編『侠客と角力』筑摩書房, 2010.10所収)
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- 「ぼくと契約して魔法少女になってよ」のキュゥべえはまさに,って違います。
- 元祖小説ご意見番(読み物にまじ突っ込み)の鳶魚先生です(フルネームで一発変換,林檎印もやるな)。誇りたかき侠客が卑しいものになっていった,それを「これは漢の末に已にさうであつたので,必ずしも今の世の話ばかりぢやない,昔からあつたことなのです」と司馬遷に遡って解説。その「今」だって『江戸ばなし』(大東出版社, 1942)より以前な訳で,てことは人の世はどんどん悪くなってきたってことになるわけだが。「この恥を知る,知らぬといふ境に,人間と畜生との区別があるので」(こちらは「捌き物の話」から)なんてのは我が意を得たりと大喜びする年寄りもいそうだけど,あんたたちだってね,ってことで。
- 2月の言葉:
「いいものじゃないわよ,魔法少女なんて」
by 巴マミ
- from 『魔法少女まどか☆マギカ』第3話「もう何も恐くない」(2011-01-22)
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- こういうことを言う先輩には,みなさんご存知の通りフラグが立ちます。
- 本日時点で4話め。好きな絵柄と言うわけでもないし,少女の心の揺れ?げろげろ(<失礼)なのに,魔法や科学出てくるとOKになるのは何故なんだ,オレ(『プリンセス・チュチュ』とか)ですが,はい,おもしろいです。たぶん,普通のハッピーエンドでは終わらない。
- で,フラグを立ててた人は,そういいつつもがんばらなくちゃ,と進んでいくのですよ。こっちも少なからぬ学生さんが憧れてはいないと思うが,なりたいとは思っているらしい職業についているのだから,前向きにね。
- 1月の言葉:
「人間がほんとうに求めているのは<いま生きているという経験>だと私は思います。」
by ジョーゼフ・キャンベル (1904-1987)
- from ジョーゼフ・キャンベル&ビル・モイヤーズ ; 飛田茂雄訳.『神話の力』(早川書房, 2010.6)
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- 人間が探しているのは「生きることの意味」なんかじゃないよ,というキャンベル先生のありがたいお言葉。正月なんで前向きにね。この本自体は(ようやく読んだのだけれど)対談なので薄いです。
- 経験と体験は違うとかいうけど,考えてるより動いた方がいいことだってあるよね。12月毎週末遊び歩いていて実感した。休んでも動いても翌週は一緒だ(笑)
ということで今年は色々,手を出してみようと思います(^^)v
- 今年の年賀状(兎尽くし)の引用元です
- 『世界大博物図鑑』第5巻 哺乳類★ゲスナー「怪物誌」★童謡「ウサギとカメ」★「不思議の国のアリス」★因幡の白ウサギ★ササ・ジャータカ◆安倍晴明<違★ピーター・ラビット★ことわざ◆ホビットの冒険★指輪物語◆昔話★アメフラシ★シートン動物記★イースターウサギと三月ウサギ★プー横丁にたった家★ビロードうさぎ★英語のことわざ
どうしても食べる方向に走りがち(^^;
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